2月21日 花言葉は

以前日本で働いていた時、何故か会社の敷地内にある畑の管理をさせられていたんですよ。私はスーツが汚れるのが嫌で土いじりにはあまり参加しませんでしたが、一緒に働いていた外国人たちは喜んでいました。よく花や野菜の苗を買ってきて植えていましたね。

でも土があれば虫が寄って来るし、野菜を植えればカラスも来る。カラスだけではありません。ある時なんかは一生懸命植えた茄子の花が全部落とされていて、周りにタバコの吸い殻が大量に捨てられていたこともありました。上司が『監視カメラ作動中』と書いた立て看板を設置してからは人間による害は少なくなりましたが。


ある時、某国出身の社員が「これを植えたらいいですよ」と言って何かの種を持ってきました。

「臭いが強いので害虫がいなくなります」とのことでした。外国から種を持って来て日本の土壌に蒔くのは禁止されていますが、私有地なので問題ないだろうという上司の判断で畑に蒔くことにしました。


ところが数ヵ月経っても何も生えてきませんでした。花どころか小さな芽すら。きっと日本の気候ではうまく育たなかったのでしょう。そのうち畑には新しく野菜が植えられ、種を持って来た社員も帰国し、虫除けの花のことは皆が忘れてしまいました。


そして、夏のある日。トマトの苗の横に見たことのない花が咲きました。握りこぶしより少し大きめの、モコモコしたオレンジ色の花でした。突然湧いて出たように咲いたので驚きました。もしかしたら虫除けの花かもしれないと思いましたが、臭いはありません。

得体の知れない花でしたが特に害はなさそうだったのでそのままにしておくことにしました。


次の日、トマトが枯れました。

その次は畑の隅に植わっていた柿の木が枯れました。

畑には虫の死骸が増えました。

カラスも時々畑で死んでいました。

それから、畑の前でバイクの転倒事故が起こりました。


花の種を蒔いた時、彼は花言葉を教えてくれたんですが何だったか思い出せないのです。

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