2月14日 神社送りにした上司の話

バレンタインデーですね。義理にせよ本命にせよ、私の相手は外国にいるので今日は普通の日曜日です。


日曜日で思い出したことがあります。先日偶然会った元上司のことです。懺悔半分、今日はその時のことを書いてみようと思います。


寒い時期の日曜日でした。私と同僚は空港まで車を走らせていました。監理する外国人の入国があったからです。「何も日曜でなくてもね」と同僚と愚痴を垂らしながら向かっていました。

空港までは片道2時間かかります。そんなに遠くはないのですが、休日出勤ということもあり、途中のパーキングエリアで休憩していくことにしたんです。私たちは外のキッチンカーでパニーニを買って中に入りました。


そこに、上司がいました。トレイにラーメンか何かの器を乗せて歩いていました。その隣に若い女性。20代半ばといったところでしょうか。上司は当時70代。アンバランスな2人です。

私たちは上司に見つからないように遠く離れた席にこそこそ座り、2人を観察することに決めました。その時同僚が、「部長に聞いたんだけど」と言って、こんなことを教えてくれました。


上司には長年会っていない息子がいる。

奥さんとはまだ籍を入れたままだけど何人も愛人がいるので別居している。


これらの情報から、隣の若い女性は孫ではなく年の離れた愛人であるという結論を導き出しました。


鬱々とした気持ちで仕事を終え、翌日。同僚は朝一番に上司のデスクに行き


「昨日、○○のパーキングエリアでご挨拶できなくてすみませんでした!若い女性の方と一緒だったのでお邪魔かと思いまして!」


わざとらしく大きな声でそんなことを言うではありませんか。なるほど、私たちは休日出勤だったのにこの上司は愛人とデートしていたんだぞと他の社員に知らしめたいのだなと理解しました。当の上司は仏頂面で

「何?お前らも昨日あそこにいたのか?こっちは1人だったけど」

とすっとぼけました。当然です。私も何か言わなければと思い、

「同じテーブルに小柄な女の人がいたような気がしたんですけど」と加勢しました。


上司はちょっと黙ってから

「はやく仕事始めろ」

と一方的に会話を終わらせました。


ところが昼休憩の時、なんと上司が私たちが食事をしているところにわざわざ来たんです。そして

「お前らが見た女、どんなだったか教えてくれ」

と神妙な顔で言います。

だから私たちは懇切丁寧に教えてあげました。


話はこれだけなんですけどね。その後、上司は時々私のところに来て「この辺でいい神社知ってるか?」とか「占い師はお祓いもできるのか?」など、妙なことを聞いてきました。

私が怪談好きなのを知っていたので、そっち方面も詳しいと思っていたんでしょうね。


残念ながら私はお祓いや拝み屋さんについては明るくないので助けにはなれませんでした。しばらくして彼は某新興宗教の信者になり大金をつぎ込んだと聞きました。


あの女の人との間に何かあったんでしょうかね。


(元上司は『リーガル人身売買』の時の上司です。再公開したのでご興味ある方はこちらもぜひ

https://kakuyomu.jp/works/1177354054883808161)

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