2月8日 同窓会

中国ではもうすぐ春節ですね。年によって日付は変わるんですが、大体1月下旬から2月初旬くらいに春節が始まります。毎年春節に合わせて帰国していたので年末年始は日本にいませんでした。でも今回は、ちゃんと日本の年末年始を満喫しました。こんな状況ですので満喫というのも違うかもしれませんが、私にとっては久しぶりだったので楽しかったです。初詣にも初売りにも行けなかったのでずっと家でテレビを見ているだけでしたが、楽しかったですよ。


元旦の夜、テレビを見ながら友人たちとLINEやメールで年始の挨拶をしていたら家の電話がなったんです。

出ると「〇〇中学校の川田ですけど」と男性の声。


私の母校です。


聞き覚えのない声でした。川田という名前にも覚えがありません。


「今年の同窓会だけど、駅ビルの8階にある紫仙楼でします。会費は1人3600円で……」


一方的に同窓会のお知らせをされ、こちらからの質問も待たずに切れてしまいました。今のは何だったのか。


すると横でテレビを見ていた家族が


「川田くんでしょ?中学の」


と言うんです。なんと毎年元日に同窓会の電話がかかってきていたそうで。いつからか忘れたけど、もう何年もかけてきているのだそう。しかし川田君が思い出せません。同窓会の幹事をするくらいだからクラス委員か何かだったのだろうけど、記憶にないんですよ。

ちょうどその時、中学の時に同じクラスだった友人とLINEしていたので「川田君っていう人覚えてる?」と聞いてみました。


するとすぐに卒業アルバムの写真を送ってくれました。


あぁ、この人だったのか、と何となくぼんやりと思い出しました。3年生の時に同じクラスだった人です。でも、おとなしいグループにいた人で、何故彼が同窓会の幹事なんかやっているのだろうかと不思議に思いました。普通こういうのは学級委員長か、スクールカースト上位にいたイケイケグループの誰かではないんでしょうか。というか、同窓会が開催されていたことに驚きました。何故なら私たちのクラスは……何というか、学級崩壊に近い有様だったんです。

クラスの担任は早々に匙を投げていて、卒業式の日でさえホームルームは5分足らずで切り上げられてしまうほどでした。当然祝辞などはありません。


そんなクラスが同窓会をしていたなんて。友人に尋ねてみました。


「同窓会?私ずっとここに住んでるけどそんなの1回もないよ。川田だって、あの人ほら」


――行方不明になったままだよ。


完全に思い出しました。大学の頃、彼が行方不明になったのだと聞いていました。といっても大々的にニュースになったわけではありません。彼のお兄さんという人がFacebookに「弟が帰って来ません。情報求む」と写真付きで投稿していたのが回ってきただけです。


それで、今日がその、電話で告げられた同窓会の日です。駅ビルの8階、紫仙楼は高級中華料理レストランです。


確か、私が高校生の頃に閉店しました。


そこに行けば川田君に会えるのでしょうか。

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