第12話 金曜・百々瀬花奈のヒーロー


 先週はライブがあったからやらなかったけど、金曜のお昼ぐらいになると、みっちゃんは歌を歌う。商店街の真ん中にある、植え込みを囲むベンチのところで、大きな声で歌うのだ。

 店頭でハルくんがギターを弾き始めると、みっちゃんは歌いながら店から出てくる。ふたりは商店街の中央まで歌いながら歩く。そのことをハルくんは、「ギターで道行を誘き出す」と称している。  

 いつもならそろそろ、ハルくんのギターが聞こえて来る頃……ああほら、始まった。


 店の上階にあるマンションの窓を開け、ベランダから駅の方向を見下ろす。左手からはハルくんのギター、そして右手から……来た! みっちゃんの声!




 ☆☆☆☆☆




 みっちゃんは、私のヒーローだ。ううん、王子様かな。


 もう、2年以上も前になるだろうか。あの、薄暗い穴倉みたいなところから、手を引いて連れ出してくれた、あの時から。

 自分でも気づかないうちに病みきっていたあたしを、救ってくれた。赤ちゃんにするみたいに飲ませてくれた、ひと匙のコンソメスープは、身体中に沁み渡るくらい美味しかった。あったかくて優しくて、涙が止まらなくなるくらい、美味しかった。


「今日はいっぱい走ったからね。少しぐらい食べ過ぎたって、平気だよ」


 そう笑って、テーブルいっぱいに並んだ料理を少しずつ少しずつ、うんと長い時間をかけて、泣き笑いしながら食べた。小さい頃のことも、いっぱい話した。地元の友達のこと、あたしが地元を離れてた間に起きたこと。あたしのことは何も聞かず、楽しいことばかり話してあたしを笑わせてくれた。

 話の合間に、並んでいる料理について「これは油分が少なくて食物繊維が豊富」「代謝を促す食材だから」「栄養価が高くてカロリーは低い」「体を温める効果がある」と、ひとつひとつ説明して、食べること自体が怖くなっていたあたしを安心させてくれた。「カラオケ屋のメニューだって、ちゃんと選んで食べる順番に気をつければ、大丈夫なんだよ」って。

 みっちゃんに見守られながらひと口飲み込む度に、身体に力が戻ってくるのがわかった。「食べても大丈夫」って思いながら、目をつむって飲み込む。目を開けると、みっちゃんが励ますように微笑んでくれた。「美味しい」って言うと、嬉しそうに笑ってくれた。それでまた、胸の中があったかくなった。

 時々、あの人の顔がよぎりかけたけど、思い出したくなかった。今はまだ。あとでちゃんと考えるから、今は………そう思って、食事に集中した。お料理と、みっちゃんの顔だけをじっと見ていた。


 お腹がいっぱいになると(みっちゃんもたくさん食べたけど、さすがに全部は食べきれなかった)、みっちゃんは歌を歌ってくれた。あたしの好きな歌、初めて聞く昔の歌、子供の頃によく歌ったアニメの歌。アイドルの歌の時は、完璧な振り付けで踊ってくれた。すごく楽しくて、またたくさん笑った。久しぶりに、誰の目も気にせず、心の底から大笑いした。

 うんと食べて笑って、疲れて眠くなったあたしに、みっちゃんはマイクを切って小さな声で子守唄を歌ってくれた。カラオケ屋さんのソファーで眠ったのはほんの20分ほどだったけれど、目が覚めると気力と体力が、喜びが、身体中に満ちている気がしたんだ。


 カラオケ屋さんを出て、みっちゃんの車まで歩いて戻った。「車で来てたこと忘れてた。ごめん」って、みっちゃんは謝ってたけど、とんでもない。車を忘れるくらい、私のために一生懸命になってくれて、すごく嬉しかったんだ。それに、車までの夜のお散歩はとっても気持ちが良かった。ふたり並んで晴れた夜空を見上げながら、大通りを避けてゆっくり歩いた。

 車に着くとみっちゃんは、当時東京の端っこに住んでいたみのりちゃんに電話して短く話した後、みのりちゃんの家まであたしを送ってくれた。みのりちゃんは何も聞かずにあたしを迎え入れて、おっきいお風呂に入らせて、一緒のベッドで眠った。子供の頃みたいにぐっすりと、安心しきって眠った。この後に酷い日々が待っているなんて、微塵も思わずに。


 当時、みのりちゃんは事務職をしていたから、あたしと同じく日曜はお休みだった。朝から一日かけて、じっくりと話を聞いてもらった。あたしの話は自分でも恥ずかしくなるくらい纏まりが無くてわかりづらかったと思う。でも、みのりちゃんは何も差し挟むこと無く、時折メモを取りながら、黙って聞いてくれた。


 結局、あたしはあの人と別れることに決めた。会うのは怖かったから、みのりちゃんに側にいてもらって電話でお別れを告げた。

 電話の向こうで、舌打ちが聞こえた気がした。イライラピリピリした何かが電話口から伝わってくるようで体が震えたけれど、彼は意外なほどあっさりとそれを了承した。


 波乱は、月曜の朝にやってきた。彼の奥さんという人が、あたしの職場に乗り込んできたのだった。



 ☆☆☆☆☆




 当時の職場はとある大きなオフィスビルの一室にある託児施設で、主にそのビルで働いている方たちのお子さんを保育していた。ということは、同じビル内に保護者の方々がうじゃうじゃいるわけだ。


 彼は、その企業に出入りする、いわゆる外注さんだった。彼の関係する会社の人たちは、もちろん彼が既婚者だと知っていたのだろう。

 でもあたしは、彼が結婚していたなんて全く知らなかった。指輪もしていなかったし、もちろん彼も自分は独身だと偽っていた。もし誰かに打ち明けていれば、彼が既婚者であるとわかったかもしれない。でも、「噂になると良くないから」と言いくるめられていたあたしは、周囲には付き合っていることを内緒にしていた。


 施設長をはじめ職場の先輩たちは、私の言い分を信じてくれた。顔面蒼白でへたり込み、尋常じゃないほど震えながら奥さんに罵倒される私を、庇ってくれさえした。でも。保護者の方々は、そうじゃなかった。こちらがいくら訴えても、白い目で見られるのは変わらなかった。挙句に、奥さんは連日保育所にやってきては大声であたしを罵った。迷惑を被っているオフィスの方々の視線も、日増しに厳しくなっていった。

 そのうち、庇ってくれる先輩方にまで風当たりがキツくなってきたので、あたしは職場を辞めることにした。迷惑をかけたくなかったのだ。


 あたしは地元に逃げ帰った。でも、それだけでは終わらなかった。



 母が、倒れた。実家に「内容証明」なるものが送られてきたのだ。そこには事実とは異なる内容と、慰謝料を請求する旨が記されていた。父は激昂し、「他人さまの家庭に、なんてことを」と膝をついて涙を流した。

 もちろんあたしは、何も知らなかったのだと説明した。でも、動揺した両親には、なかなか届かなかった。あたしはもう、疲れきってしまった。知らなかったとはいえ、あたしが先方の家庭を壊したの事実だ。それで気が済むなら言われた通りにしようと思い始めた矢先、みっちゃんが助けに来てくれた。両親と何度も話して落ち着かせ、職場にも確認を取り、あたしには非が無い、むしろ被害者なのだと言い切ってくれた。立ち上がって戦おうと、言ってくれた。


 

 結局、両親はあまり役に立たなかった。相手に対する怒りのあまり感情的になってしまい、一向に話が進まない。そこで騒ぎが大きくなることを懸念したみのりちゃん達が表に出て、助けてくれたのだった。

 

 向こうのご夫妻と対面したファミレスで、みのりちゃんはあたしの隣で話し合いの矢面に立ってくれた。透くんは無関係の客を装いつつ状況を録画、少し離れた席にはみっちゃんと、彼が暴走しないよう見張り役&予備の録画係のハルくん。

 先方からは色々言われたけれど、結果としてこちらが名誉毀損で訴えると告げる形で話は終わった。(みのりちゃんの、仁王立からの『はぁ? 出るとこ出るって? 出来るもんならやってみなさいよ。ハッ(嘲笑)』というものすごい威圧感と見下し感満載の啖呵で決着した)



 帰りの道中で、あたしは初めてみのりちゃんに叱られた。前に話した時のメモを見せられて、「今回の件、悪いのは完全に向こうだけど、花奈にも非がなかったわけじゃないよ」って。

 みっちゃんはその発言に抗議してくれたけど、みのりちゃんはその抗議を一蹴した。


「そのメモ、見てごらん。全部、花奈が自分で話したことだよ。あの男はね、花奈に無理させて喜んでたの。ネチネチ痛めつけて辛い思いさせて、それでもあんたが従うのを楽しんでたの。で、あんたは自分がどんな酷いことをされてるか本当はわかってたのに、見ない振りした。身体がヘルプサイン出してたのに、それも無視して自分を傷つけた」


 あたしはその時、俯くことしか出来なかった。何も言い返せない。謝りたかったけど、心がカサカサに擦り切れたみたいになって、声も出せなかった。あんなくだらない男に馬鹿みたいに騙されて、みんなに迷惑かけて……あたしが、馬鹿だったから。



「待ってよ実智ちゃん、そんな言い方酷いよ。さっき自分だって言ってたじゃん、『最初から騙すつもりで近づいてきた小狡いオッサンに、年端もいかない若い子がまんまと騙された。誰がどう見たって、悪いのはそっちだ』って。花奈は悪くない」


「ちょっと待て、道行。実智は騙されたのが悪いって言ってるんじゃない」

「あー、あれか。さっきの捨て台詞。今やっと、意味わかったわ」


 みっちゃんは怒ったままの顔で、無言でハルくんを見あげた。


「さっき店出るときに、実智が向こうの奥さんに言ったんだよ。『あんたのクズ旦那が馬鹿なのはあんたのせいじゃないけど、あんたが今不幸なのは、あんた自身の責任』って」

「そうそう、実智が言いたいのは、その……あれだ。えっとぉ」


「……あのね、花奈。あのクズ野郎はウンコまみれで首まで肥溜めに浸かってるクソ馬鹿野郎なの」



 透くんが口をつぐみ、手振りでみのりちゃんに続きを促した。


「で、あの奥さんはその馬鹿に引きずられて自分まで肥溜めに嵌ってる。力づくで馬鹿を引きずり出してじゃぶじゃぶ洗ってやることも、自分だけさっさと脱出して綺麗になることも出来るのに、それをしない。で、クズ野郎の次の獲物である花奈に、奥さんは八つ当たりかましたのよ」


「……ひでえ例えだな」ハルくんの呟きを無視して、みのりちゃんは続けた。


「あんたは、『なんか臭いな、汚いな、嫌だな』って思いながらも、徐々に徐々に、引きずられてしまった。それはね、自分の気持ちをちゃんと見ようとしなかったせいだよ」



 あたしは、立ち止まってしまった。もう、ボロボロで歩けなかった。悲しくて情けなくて、悔しくて。あたしが悪いことも、弱虫のみそっかすだってこともわかってる。そんなこと、ずっと前からわかってる。でも……


「みのりちゃんには、あたしの気持ちなんてわからないよ」


 思わず、言葉が溢れた。悔しい。なんでここまで言われなきゃならないの? 騙されて、あんなに罵倒されて傷ついて、まだ言われなきゃいけない? あの男は、あたしに一言も謝らなかった。謝るどころか、何も話さず目すら合わさなかった。あたしはどこまで貶められなきゃいけないの?


 涙も出なかった。すごく泣きたかったのに。うんと大きな声で泣き喚いて目に映るもの全部壊してやりたいのに、頭の中だけがどうしようもなく熱くなって指先は痺れるように冷たくて、動けなかった。


「みのりちゃんもハルくんも透くんも、みっちゃんだって! みんないつもキラキラしてて! 強くて、ずっと人気者で頭も良くて、友達もたくさん居て! そんな人たちに、あたしの気持ちなんてわかるわけ無い!」



 自分でも最低だってわかっていた。みんな助けてくれたのに。迷惑ばかりかけるあたしを、今回も助けてくれたのに。馬鹿な上に恩知らず。最低最悪、でも、一旦外れてしまった箍は戻らない。破れた心臓から血が噴き出してるみたいに溢れ出す感情を、止められなかった。


「誰も、あたしの気持ちなんて!」


「わかるわけないじゃない、そんなの」



 最低な八つ当たりを止めてくれたのは、平然としたみのりちゃんの口調だった。


「他人の心の中なんて、誰にもわかるわけないでしょう? だから、自分で見るんじゃないの。よーく注意して、見なきゃいけないんじゃないの。花奈の気持ちは、心の中は、花奈にしか見えないの。だから目を閉じちゃ駄目なの。怖くても辛くても、逃げちゃ駄目。ちゃんと見てあげないと」


 みのりちゃんは、あたしの髪をそっと触った。


「ボロボロじゃない。あんなに綺麗な髪だったのに、こんなにスカスカになっちゃって。肌だって……つやつやぴかぴかだったのに、こんな………可哀想に」


 みのりちゃんは、泣いてた。とても静かに、泣いてた。


「見ないふりして逃げてるとね、あとでうんと傷つくのは、自分なの。ずっとずっと、苦しむのは自分自身なんだよ。花奈」


 みのりちゃんはあたしを抱きしめて、耳元で囁いた。あたしだけに聞こえる声で。


「私もね、逃げたことあるんだ。全然、強くなんかないの。今回のことに比べたら笑っちゃうくらいショボイことなんだけど、ぜーんぶ放り出して逃げた。だからね、あんたがいますごく苦しいのは、知ってる」


 労わるようにしばらく髪を撫でてから、みのりちゃんはあたしの背中を軽く叩いた。


「私は臆病で見栄っ張りだったから、誰にも言えなかった。そのせいで、うんと長く苦しんで……でもそのおかげで、見ない振りして逃げちゃ駄目だってわかったの。花奈はね、ちゃんと声を上げて助けてって言ってくれたでしょ。だからみんな協力出来たんだよ。私より、花奈の方がずっと勇気ある」


 みのりちゃんはそう言って、私から離れた。彼女の頬は、もう濡れていなかった。


「辛いだろうけど、勇気出してちゃんと見るんだよ。花奈が必要なら、いつだって手伝うから。私たち、昔からそうしてきたでしょ?」


 みっちゃんの背中をドンと突いて、みのりちゃんは先に立って再び歩き始めた。ちょっとよろめきながら、みっちゃんが私の隣に来て手を握ってくれた。


「花奈、大丈夫? 歩ける? ちょっと休もうか?」


 あたしは頑張って大きな声で、「大丈夫。歩ける」って言った。先を歩くみのりちゃんにも聞こえるように。

 みっちゃんがこうして気遣ってくれるのを見越して、みのりちゃんは嫌われ役、言いづらいことを指摘する役を買って出てくれたんだとわかったから。

 胸の中はまだ、ガサガサざわざわしてたけれど。あたしはみっちゃんの手を握り返して、3人の背中に追いついた。



「そういや昔よくあったな。花奈が犬やら猫やら拾って看病してさ、俺らで飼い主探したり、巣から落ちたカラス助けたり」

「あったあった。弱った猫とか見つけんのって、いつも花奈だったよな」

「花奈には、私たちには聞こえない声が聞こえるのよね。助けを求める声みたいの。そのくせ自分が苦しい時はなかなか声上げないんだから、全く……道行が偶然出会わなかったらどうなってたか」


「まあまあ、実智。俺はちょっと懐かしくなったよ。花奈がミッション持ち込んで、実智と透が情報分析・参謀役でさ、俺と道行が実働部隊」

「ゲームとかで例えたらあれかな、花奈は回復担当、道行は手数で稼ぐ接近戦タイプ、ハルが重装備肉弾戦? 実智は魔法使いで、俺は僧侶とか賢者とかその辺」

「花奈が回復担当は納得。でも、実智は結構肉弾戦じゃね? ガンガン攻めこむし」

「いやいやいや、実智は防御強めだろ。がっちり守りつつ怒涛の遠距離攻撃って感じ」


「ちょっとアンタ達……私はヒロインのお姫様役に決まって」

「やっぱ魔法使いだろ。それも黒魔術系の。実智の毒呪文で敵に千のダメージ」

「黒魔術! それだな。やべえ、毒呪文とか似合いすぎる、あ、道行は吟遊詩人的な選択肢も」


「いや私はお姫様だってば」

「お姫様はウンコだの肥溜めだの連呼しねーだろ」


「だって! アイツらムカつくじゃない。透の読み通り、女相手だからってなめてかかってたし。おかげで不利になること喋りまくってくれたけど。あれ多分、初めてじゃないわよ。こっちが強く出たら素早く折れるあたり、妙に手慣れてたもの。何度も浮気する馬鹿夫と、大騒ぎして慰謝料取ることで八つ当たりしてる馬鹿女房。あああムカつく。ある意味お似合いの夫婦ね。花奈はもしかしたら、クズ野郎の闇に反応しちゃったのかもしれない。でもあんな奴ら、関わることない。薄暗く穢らわしい場所で一生お互いの足引っ張りあって蠢いてればいいのよ嫌らしいクソゴミ虫が。あいつら歯磨き粉と洗顔料を間違えますように毎日両足の小指を家具の角にぶつけ続けますように開きかけのドアにぶつかってああ!ってなればいい」


「流れるような罵詈雑言、お見事です。他人に向けられた呪詛とはわかっていても、こっちの背筋が凍る思いが致します、毒舌姫」

「うむ。くるしうない」



 おちゃらけたふりをしつつあたしを気遣ってくれているのが背中越しに伝わってきて、本当に心強かったのを覚えている。ゲームの例えとかよくわからなかったけど、前を歩いている3人はあたしにとって、勇ましいヒーローたち。そして隣で手を繋いでるのは、優しくて頼りになる王子様だった。




 ☆☆☆☆☆



 王子様は、摂食障害寸前だったあたしの治療やカウンセリングに付き合ってくれた。他人が怖くなってしまったあたしを、一年近くもの間、親身になって励まし労わり、時たまフラッシュバックに襲われるたび、見守り勇気付けてくれた。おかげで、最近ようやく再就職活動を始められるまでに復活出来たのだ。

 辞職理由を正直に話すと未だに敬遠されてしまいがちで、なかなか上手くいかないけれど。でもあたしは、嘘をつきたくない。だって、あたしが悪さしたわけじゃないもの。だから、きちんと正直に話す。 

 ただでさえ噂の広まりやすい狭い業界、変に自分を誤魔化せば後から苦しむ羽目になる。それはもう、学んだ。あたしは少しだけ、あの頃より強くなった。

 今なら、ちゃんとわかる。あたしは自分を卑下しすぎてたから、ちょっとチヤホヤされて簡単に乗せられ流された挙句、縋ってしまった。最初は優しくされてたから、徐々に嫌なことされても自分が悪いのだと思ってしまった。一番あたしを見下してたのは、あたし自身だったんだ。



 みっちゃんの歌声が遠ざかる。心にすっと入ってきて包み込んでくれる綺麗な声。あたしに、自分自身を見つめる勇気をくれる。そんな声。


 ハルくんのギターでおびき出されたみっちゃんの歌声におびき出されたあたしは、今日もマンションの階段を元気に駆け下りる。


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