第7話 日本国内におけるエネルギー事情とその仕組み

「それで各予算を削る方策について、ですが……」

「ふんふん」


 あれから数時間、朱莉もみやびさんも国の財政を立て直す基本方針についての熱い議論をしていた。

 朱莉は専門的な知識は無くともこれまで触れてきたアニメやゲーム、それとラノベから得た知識をフル活用して彼女の話に食らいつき、そして斬新なアイディアの数々をまるで自分の手柄のように説明していた。


 尤もそれもたぶん元ネタは何かの作品からのインスピレーションなのだろうが、それでも良いのかもしれない。


 これまでと同じようなトップの判断や基本方針では、たぶんこの国を変えることは実質的に言っても不可能だろう。だがそこに奇抜なアイディアを差し込めば、もしかすると未来への希望となる一筋の光となる可能性を秘めていたからである。


「次にソーラーパネル。いわゆる太陽光を利用したお話になりますが、これには諸外国で生産されている安価のパネル製造に関わる原材料コストと輸出とシュア率の減少による経済問題はもちろん、パネルを廃棄する際に発生する環境問題も年々増加する一途となり……」

「なるほど……なら、そんなものはやめてしまいましょう!」

「はっ? や、やめる???」


 みやびさんは即断即決の朱莉の言葉に呆気にとられていた。

 それもそのはず、製造に関するコスト問題や廃棄の際に付きものの環境問題について議論しようと話を振ったら、即座にソーラーパネル発電をやめるように言われてしまったのだ。


「で、ですが……」

「みやびさんの言いたことは分かります。でも日本はパネルに関してどの程度のシュアを持っているのですか? 確かワタシの記憶だと10%以下だと思いました。それに変換効率の技術力に関しては世界トップシェアを有しているにも関わらず、市場シュアでは大きく溝を開けられています。これはきっとコスト面は元より、そもそも市場はそんなものを求めていないのではないでしょうか? 確か次世代テレビ製造会社の時もそれで失敗していましたよね?」


 朱莉は身近な例として数年前に経営破綻して、海外の企業に買収されてしまったテレビ会社を引き合いに出して話を進めた。


 確かにパネルとテレビはそのどちらもまったく異業種ではあるものの、世界最高技術を有していたのにシェアを独占できずに破綻してしまったのだ。このままでは同じ道を辿ると朱莉は断言した。


「製造に関するコストも予測していたとおりには下がっていないようですし、何よりも年々性能が劣化していくんですよね? それにメンテナンスなどの設置工事費や本体外の費用はもちろん、家の屋根上に取り付けることにより建物全体に対して見逃せない加重になっているはずです。巨大地震が来たらどうするんですか? 最悪パネルに押しつぶされちゃいますよ。それに廃棄する際の環境汚染も見逃せませんね。電気へ変換する素材にはシリコンや有害な鉛などが使われていることがほとんどと聞きますし、それらの問題を抱える太陽モジュールはメリットよりもデメリットのほうが大きいように感じます」

「あ、朱莉さん随分お詳しいのですね。もしやそれも……」

「はいっ! この間プレイしたゲームで主人公が言ってましたっ!」


 朱莉はまさに怒涛の如くそう捲くし立て、そして堂々とゲームから得た知識だと胸を張り威張りくさっていた。


(これでいいのかよ……本当に。朱莉のヤツ、ゲームやラノベで得た知識だけでみやびさんと対等に話し合っちまってるぞ。しかもそれを隠すどころか、むしろ勝ち誇った表情していやがるしな。もう井出立ちが主人公かメインヒロインのそれだわ)


 同じ作品を共通しているはずなのに、何故か朱莉のヤツのほうが雄弁で説得力があるように思えてしまう。これも国の代表たる自信がそうさせるのだろうか?


「朱莉さんのお話はもっともなのですが、我が国おける再生エネルギーは国の柱であると同時に経済の根本。それにこれからの時代世界規模でも環境問題がキーとなり得るはずですから、これまで推進していた太陽光発電に関してそれを真っ向から否定なさるのは……」

「いえ今だからこそ、なんですよみやびさん! 世界規模で環境問題についてを課題にしているならば我が国でも乗り越えなければならない問題でしょうし、それに何より世界が注目しているならばそこに商機があるはずです! 何もワタシも再エネ自体を否定したいわけではありません。今の日本国には合っていない、そう言いたいだけなんです」


 朱莉が言いたいことは要約するとこうだった。


 ソーラーパネルは費用の問題と変換効率、そして国際競争であるシュア率などの経済問題の他に、その後必ず問題となるであろう廃棄を念頭にそもそも我が国の土地柄には合っていない。元々太陽熱発電とは外国から来た技術であり、それを輸出するため環境問題に配したと名を売って売り出されただけのこと。

 

 それにエネルギー燃料の大元である石炭・石油、そして天然ガスなどの天然資源などを含むそのほとんどを輸出で賄っている日本国では、再エネが代等することは何も漠然とした将来課題ではないのだ。だから独自技術開発することにより、むしろ諸外国へと技術その他を含めて輸出する……それが朱莉の考えだった。


「ドイツやアメリカのように広大な土地でもあれば“太陽光発電”ではなく、“太陽熱発電”を高価な太陽モジュールの代わりに使えるのですがね。それも無理ならば、別の案を考えることにしましょう」

「確かに太陽熱発電ならば、発電コストは元より設置費や環境問題もクリアできるでしょうね。ですが、それには広大な土地が必要となるだけでなく、それに見合う地下水も必要になりますから……」


 朱莉とみやびさんは太陽熱発電に関して議論をしていた。


 太陽熱発電とは、太陽光発電とは違い高価で技術力がいるソーラーパネルを用いずにパイプに廃油などのオイルを循環させ光を集めて熱し、その熱交換により水を温め蒸気としてタービンを回して発電するものである。


 そもそも電気を作るには、この他にも一般的に知られる火力発電や原子力発電、それと水力発電などがあり、それらどの発電方法も同じく水を何らかの方法で利用してタービンを回して電力を得る。ただそれだけであり、幾重にも手段はあるがその根本だけは変わらない。

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