目的の場所につけば、そこは何かの工場のような場所だった。

 ベルトコンベアーに流されていくのは、何かの機械や、人体の部位のようなものが所狭しに延々と連なっている。

 気味の悪い場所だが、ここが目的なのは間違いない。

 今からここを破壊しつくす。


「シィ、俺だ。目的地に着いた」


 シィに刻まれた左手の紋章を耳に当てながら、通信を行う。

 原理はわからないが、そういう魔術だといわれて、俺は納得した。

 こういうのは理屈だのどうだの文句を言えばおしまいだ。これはこういうものだと理解すれば、それで済む話を掘り下げる必要はない。

 ただ、どうにも返事がない。

 使い方を間違えたのか、そう思っていた矢先。


『…ン!…信が…害さ………!いま……にげ……』

「シィ?」

『こんなところに、ニンゲンが何の用だ』


 通信ではない、第三者の声が、工場の中に響き渡る。

 声のほうへと顔を向ければ、そこには真新しい悪魔が立っていた。

 鳥を思わせるような顔と、2mは優にある体躯、真っ赤な肉体。

 右手には銃のようなものを、左手には杖のようなものを持ち、なによりその背には悪魔らしく翼が生えていた。

 おおよそ、邪悪と形容できる、そんな悪魔が目に前にいる。


「少し散歩がてら、この世界を壊そうと思っていてね。お邪魔しているよ」

『は、ずいぶんと面白い冗談……待て、貴様、その銃、どこで手に入れた』


 赤い鳥のような悪魔は、俺の持っているデーモンテックのピストルに興味を示したらしく、尋常ではない殺意を俺に向け始めてきた。

 どうやら相当大事なものかもしれない。シィから授かったなど銃の出所をべらべらと喋るわけにもいかない俺は、この悪魔を倒すか、退けるしかなかった。

 そして、経験と直感でわかる。

 この悪魔は、相当強い。


「雇い主から預かっていてね、使い勝手がいい。これでお仲間をぶっ殺してここまで来たよ」

『有象無象共を殺してイキがっているのは構わん、あれらは仲間というよりは下僕だ。いくら死のうと、どうでもいい。死んだ以上に勝手に産み出るからな』

「そうかい、そいつは薄情なことで……それで、どうするつもりなんだ、俺を」

『容易く殺してやろうと思ったが、気が変わった……お前は、特別な戦士だ。今ここで殺すのは惜しい、少し、遊んでやろう』

「惜しいと思うのなら見逃してもらいたいんだが」

『できるかよ。その銃を扱えるものが、ようやく今俺の目の前に立っているんだ。手を出さない理由があるまい?』

「……褒めているのか?」

『当たり前だ。ニンゲン、誇れ、お前は今、何よりも最高の男だ』

「ははっ……悪魔に褒められるなんてな……じゃあ、こいつで、望み通り相手にしてやるよ!」

『来いっ! 戦士よ!!』


 互いに銃口を向けあい、そして。


 熾烈な戦いが始まった。

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