第31話 学校内から見る夕立の風景って、なんとなく幻想的でこう、ワクワクするよね1

 速川との間で生じた軋轢あつれきは一道のカバーストーリーとやらで丸く収まった(あれを収まったことにしていいかは定かじゃないが、まあ良しとしよう)。


 結局、一道は恋人関係が真っ赤な噓だということを公言しなかった。何故そこまで頑ななのか、一度口にしたことは二度と引っ込められない意固地女なのか、わからない……わからないが、まぁ上手いこと回ってはいる。少なくとも誰かしらに敵意を向けられている、なんてことにはなっていない。皆、『できたてホヤホヤのカップルすってぴ~』とでも言うような穏やかな眼差しで見守ってくれている。


 真実を明かさなくても現状の状態を維持すればいいのでは? 折を見て『破局しました』とでも言っとけばいいのでは? 一道の彼氏を演じるのは面倒ではあるものの、俺はそう思い始めていた。



「――いーくんと真琴ちゃんって、ホントに付き合ってるの?」



 今の今までは。


 時をさかのぼること十分ほど前、四時限目終了のチャイムが鳴ってすぐに清香が俺と一道の元に駆け寄ってきて「お昼一緒にどうかな?」と提案してきたのだった。


 特に断る理由もなく、俺たちは承諾して学食へ移動した。


 最初こそ……最初こそワイワイガヤガヤと仲良しこよしな雰囲気でよろしくやっていた。だというのに……だというのにッ!



「ねぇ……どうなの?」



 清香は夏の夕方のように一変してしまった。

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