第4話 初めの一歩・ディアス

 「あなたの名前は‥‥‥ディアス。

 ディアス・ラルドラク。」

それがこの世界の俺の名前になった。


********************

 朝、目が覚める。


一応もう見慣れた天井だ。

だがなぜか心踊る。


 ただ、一つ不満がある。

ベッドに横たわっているだけというのは、ひたすら退屈なのだ。

そして、眠くもなる。

生前の世界もあれはあれで退屈だった。

だが、こうも自我がハッキリとしている状態で、一日中ベッドに横になっているのは退屈の極みでしかない。


この世界に生を受けて3日目。

夢ではないらしい。

なんてこった。

どうやら本当に文字通り転生してしまったらしい。

しかも生前の記憶は残したままでだ。

今まで無○◯生とか、転生したら○○○○○○○件みたいなラノベやアニメもたくさん読んだし観てきた。

だが、あれは娯楽として楽しむものだったから良かったのだ。

実際自分がなってみると、なんとも言えない不安がある。


そもそも、もう向こうの世界にはもう戻れないということじゃないか!

よく、平然と受け入れられたな。あれらの作中主人公は!


とはいえ、どちらにせよもう向こうの世界では死んでしまった訳だから、この世界に転生したんだろう。

泣き言を言っていても何も始まらない。

もっとも彼方の世界には何の未練もなかったのでそこまで後悔することもない。


 この世界の成長が、俺の知りうるものと同じならば、一人で動けるようになるまでざっと3年程はかかるだろうか。

しばらくは自分一人で行動できない状態が続くのだろう。


まだまだ先だなぁー


そんなことを考えながらも、一つ疑問が残る。

転生したのは事実として、ここは本当に異世界なのだろうか?

それこそ、元々暮らしていた地球のどこかで、俺を産んだ彼女は日本ではない国の人か、あるいはどこかの先住民族の可能性があるんじゃないかと。

とはいっても、今の段階では確かめようにもそうすることができないので、俺はひとまずこの家の住人の人間観察に徹することにした。


 5日程すれば、この家族の関係性は分かってきた。もっとも喋っている内容は分からないが。

まず、俺が生まれたときにベッドに横になっていたのがオカンだ。

おっとオカンなんて少しお下品ですわね。

お母様とおよびします。


 名前はヘラ・ラルドラク。

腰まである長くて美しい赤髪を持っている。

ヘラというと、どこかの神話の女神を思い出すが、とてもおっとりした優しそうな女性だ。

顔立ちも非常に整っており、左目の左下には小さい泣きボクロがついている。

これこそ女神じゃぁーと思わせるような美女だ。

一つ一つの動作がとても丁寧で、指先の動作までが美しすぎる。

口調も非常に穏やかだ。

生前お世話になった虐待女とはえれえちげえだ。

これは間違いなくモテる。

自分の母とはいえそう思う。


 続いておやじ……じゃなくてお父様だ。

俺を最初に抱き上げた男性だ。

ヘラの髪色より濃く、色で言うならエンジがかっている赤髪を持つ。

襟足が腰あたりまで伸びており、ゴムかなんかでくくっている。

顔立ちはキリッとしており、なかなかの男前だ。

性格は爽やかで結構さっぱりしており、男性の割にはヘラと同様に丁寧だ。

背中や胸などに十字の傷があったりするが、正直そこら辺はどうでもいい。

ふむ、なかなかどうして俺はこんな美男美女の元に生まれたのか。

我ながら良くやったと褒めてやりたい。

名前はサロス・ラルドラクというらしい。

因みにヘラと接している時は、イケメンが台無しになる程のメロメロぶりだ。


 そして生前の俺よりは年下であろう、2人の少女。

最初は俺の姉なのかとも思ったがどうやら違うらしい。

二人ともヘラやサロスには礼儀正しく接しており、おそらくお手伝いさんといったところか。


 1人の少女は白銀(少し淡い青系だろうか)のショートヘアで、まさかの猫耳!

これは獣人族と言うところだろうか。

年齢は12.3ぐらいだろう。

顔はまだ幼くみえるが、とにかく可愛いらしい。

尻尾が生えており、よく俺の顔の前でフニフニ動かして遊んでくれる。

猫と遊んでいる気分になる。

おむつ替えやご飯といった身の世話はヘラともう一人の少女が主にやってくれるが、なんやかんやで時間的に1番俺の相手をしてくれている気がする。

名前はシルエ・ルーフェルト。


 もう1人の少女はパッとみ特に変わったところはないように見えるが、耳が尖っている!

これはあれだ。エルフという種族なのだろう。美しいエメラルドの髪色も持ち、こちらはロングだ。

シルエと同年代なのだろうが、こちらはエルフだからか少し顔も大人びており、可愛いというより美しい。

目もキリリとしており、思わずお姉さまと呼びたくなる。

そして何より巨乳である。うん、素晴らしい。

ヘラも大きいがこの子が1番でかい。

シルエと違って、常にヘラに付き添って手伝いをしている。

少し俺を見るときの目が冷たい気もするが、まぁ気のせいだろう。

名前はフィア・ローレル。


因みにシルエの胸は、ラファやヘラほどはないが、普通にでかい。

(異世界最高♡)


 そしてあと1匹。

サンという、額に何やら紋様のある犬がいる。 

どうやらシルエと会話ができるらしく、よくシルエと部屋に遊びにくる。

サンの面倒はシルエがみているようだ。

自分で歩けるようになったら、モフモフしにいきたい。


こんな感じで1週間ほど過ごした俺は確信した。

やはり、ここは俺が期待している通りの異世界らしい。


コスプレで猫耳や尖った耳をつけているにしては、対応も行動も自然すぎる。

それに、言葉も全く聞いたことがないものだ。俺もある程度は、英語もできたし言語は分かっているつもりだ。地球の発音とはどことなく異なっていた。

強いて言うのならギリシャ語に近いだろうか。まぁ、どちらにせよこの言語を後々使いこなせるようにならなければいけないんだろう。先が大変そうだ。


それはそうと異世界最高ー!!!!


俺はありったけの声で叫んだ!


と言っても言葉は話せなかったので


「あぁぁあ、あぁぁぁあ!!」


と叫んだだけだったが。


その声を聞いて何事かと、ヘラとフィアが顔を真っ青にして部屋に駆け込んできた。




ごめんなさい。

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