子は何をおもう②

次の日の昼、僕たちは王と謁見することが出来ました。


「我に何用だ?忙しいので手短にな。」


僕たちは新国王の前に跪いていました。


「私の名前は、ガイルと言います。」


「ガイル?あぁ、あのガイル殿か。いつも世話になっておる。交代後、挨拶に行けず申し訳ない。」


新国王は、口ではそう言っているものの、明らかに謝罪の態度では無かった。


「フッ、全くだな。王よ、一つ聞こう。ヴィルという鍛冶師を知っているか?」


「あぁ、未だ犯人が行方不明の事件の殺された者だな。それがどうした?」


「何故殺した?」


「何?」


王の表情が変わりました。


「いや、何故殺すよう命じた。」


「何を言っているのだ。我を侮辱するなら....」


ガイルさんは話を切るように、持って来ていた父さんの剣を床に突き立て、


「この剣を知っているな?」


王がその言葉に黙っていると、横に控えていた側近が口を開きました。


「王はそのような物はご存じでは無い。謁見の時間は終わりだ。早く帰れ!」


「お前になど聞いていない!さぁ答えろ。」


「確かに知っている。知っていいるからなんだ?」


「貴様はこれを宝剣と呼んでいるらしいな?」


「そうだ」


「ならこれはなんだ?」


そう言って、本来の宝剣を見せました。


「何故、宝剣が2本ある?」


「それは....いい加減、宝剣を新しくしようとしてな。」


「残念だが、新しいこっちの剣は宝剣にはならない。」


「何?」


ガイルさんは突然、立ち上がり王城すべてに聞こえるような声で言いました。


「作り手である、ヴィル・ルッチェスに変わり!このガイルが名付ける!かの者が作ったこの剣を"聖剣クラレント"と名付ける!」


その言葉と同時に、僕らの後ろにある入り口の扉が勢いよく開かれました。


するとそこには、フードを深く被った人がいました。


そのフードの人が続けて、


「承知した。精霊王の名を持って加護を与えよう.....あとでね?。連れて来たよ、我が親友、もう一人の親友をね。」


すると、フードの人の後ろから見知った顔、前国王が入ってきました。


「さて、揃うべき人間が揃ったな。さぁ、話してもらおうか?あと、嘘はつけないぜ?そこのフードの奴はエルフだ。エルフは他人の心を読める。まぁ、証拠は前国王に既に出してある。どのみち逃げれんぞ。」


_____________________________________



その後、国王は前国王の最後の慈悲により無期限の投獄になり、その側近は即日死刑になりました。


父さんのおかげです。


あー、あと皆さんのその後ですが.....



  ――――――ルインの場合――――――


「もっと腰を入れろ!死にてぇのか!」


ルインさんは王国騎士団の第一部隊の隊長になられ、指南役としても日々勤められています。それと、父さんの剣はルインさんに託しているので安心してください。


「ルイン隊長。もう、体が動きません.....」


「泣き言を言うな!そこで素振りしろ!その後はペアを組んで模擬戦だ。お前の相手は、俺だ。他の者もそうするように!」


「「「「「ヒエェーーーー」」」」」



  ――――――ジンの場合――――――


「ありがとうございました。あとはこれと....」


  カランカラン


「いらしゃ....い.....ま.......せ......」


「ただいま。エミリー。」


「ジン。グスッ....おかえり。」


ジンさんは元友人のエミリーさんに会えたそうです。今では幸せな家庭を築いているそうで.....


僕ですか?まだ、やらなければいけない事があるので、孫の顔はもうしばらく見れないと思います。



  ――――――ガイルの場合――――――


   ガチャッ


「邪魔するぞー」


「おぉ、来たか。ガイル殿、いい酒が入ってな。一人で飲むには寂しくての...」


「こうして二人で飲むのも久しぶりだが、この部屋に入るのも久しいな。」


「本来、退位した我がこの部屋で暮らしているのもおかしいのだが、第二王子であった息子が落ち着かないからと言って譲ったのだ。」


「もう引継ぎは終わったのか?前国王殿?」


「昨日で全て終わらしたよ。やっと腰を落ち着けれる。それより、ジール君は大丈夫なのかね?審査は今日だろ?」


「あいつなら問題ない。きっと金の札は取れるさ」


「なら父親を追い越すのも時間の問題かもしれんな。そういえば、あの剣はどうしたのだ?」


「ルインに預けてある。一応、秘匿する為に名前は変えてある。確か...."ヴィル・フレイム"だったかな」


「ヴィル殿の名と、刀身の色から炎を連想した良い名だ。あれは、ガイル殿が作られた"聖剣エクスカリバー"と肩を並べる程に強力だからな。その点、ルインはその柄を握るのに相応しいと言えるな。」


「今の言葉、聞き捨てならないなぁ。」


「お前!......チッ.....呼んでねーんだけど。」


「精霊王か、久しいな。」


「やっほー、楽しそうな声が聞こえたから来ちゃった☆」


「今の言葉というのは?」


「ガイル作ったって言ったじゃん。前回も今回も加護を付けたの僕なんですけど?」


「おぉ、すまんすまん。」


「別にそれぐらい気にしなくていいだろ。」


「良くないよー、『自らの命に代え、剣に聖剣の名を付け、精霊王から加護を受けられた鍛冶師は、伝説となる』っていう伝承が出来たのは君のせいなんだから。」


「俺は死んでねぇし、その伝承を作ったのは顔も知らない奴らだ。」


「ハハハッ、賑やかになってきたの。」


ガイルさんは、ルイネスにいるらしいのですが、何をしているのか分かりません。


前国王と仲が良かったので、お二人で何かやられているのかも......。



まぁ、何だかんだ皆さん元気でおられます。


僕は、つい先日に王国指定鍛冶師の審査を終え、父さんと同じ金の札を頂きまし

た。これで僕も、本格的に鍛冶師をやっていけます。


これからも見守っていてください。




僕は、墓の前から立ち去り


「じゃあ、帰ろうか。」


パートナーと手を繋いで帰りました。






その墓からは、僕の手に染み付いた"鉄"のにおいと、同じにおいがしました。




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