第9話 七匹目

 叔父の農機具小屋や家庭菜園、そしてガレージをねぐらにしていた猫は何匹いたのだろう? 六匹も捨てればマシになるだろうと思うのだが、叔父の猫駆除に対する情熱はますます高まっていくようだ。


―――六匹も捕まえたのだから少しはマシになると思ったがあまり改善されない。もしかすると悪さをしていたのは今まで捕まえて捨てに行った猫ではなかったのだろうか―――


 だとすればとんだ濡れ衣である。平和に暮らしていた猫が餌につられて捕まり遠くへ捨てられる。中には餌やりおばさんに餌を貰っていた半野良も居た。半野良は実質飼い猫同然なので狩りなどできないだろう。狩りが出来ない猫の行く末と言えば……。


―――ともかく七匹目の猫を捕まえた。目が合った途端にニャーと鳴いた―――


 猫がニャーと鳴くのは当たり前と思いきや、実際の猫は滅多に鳴かないらしい。野生の環境で下手に鳴いてしまうと自らの居場所を知らせてしまうからだとか。鳴くのは子猫や飼い猫が多いと動画で見た。


―――腹が立ったので雪が落ちてくる軒先にしばらく捕獲器カゴを置いておいた。屋根から雪が落ちるたびに情けない声で鳴いていた―――


 酷い目に会わせるくらいならさっさと捨てに行けばよいのに。


――トロ箱に猫が入ったままの捕獲器カゴを置き、周りを雪で固めて塩を振りかけた。固めた雪が恐ろしく冷たくなった気がする。寒いからかニャーとも言わなくなった―――


 よほど腹が立ったのか、それともストレスを抱えていたのか。病的に猫を酷い目に会わす日記の持ち主と叔父の姿が重ならない。


―――いつものY湖まで捨てに行こうとしたが、ワカサギ釣りの客が居た。仕方が無いので湖を一周して廃ホテル前に捨ててきた。蓋を開けた途端に勢いよく駆けて行ったが、十メートルほど向こうへ行くと止まってキョロキョロしはじめた。どうやら知らない土地へ連れてこられてパニックになっているらしい―――


 平和に暮らしていたのに突然捕まって遠くへ連れてこられる。生活基盤が無くて知り合いも居ない所へ放り出された猫はどのような気持ちだったのだろう。パニックになるのもわかる。


―――どうも冬になってから農機具小屋やガレージに猫が来ている気がする。寝床らしき跡があった。今度はそこへ仕掛けようと思う―――


 この辺りから罠の仕掛ける場所を変えたらしい。冬は畑に雪が積もっている。叔父は農機具小屋や車庫を寝床にしたり、車や農機にスプレーする猫にターゲットを定めたらしい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る