第6話 四匹目

 叔父の日記によると、三匹目を捕まえた翌週に四匹目の猫が捕まったらしい。年末の慌ただしい時期に何をやっているのだろうって気がするのだが、趣味とはそういう物なのだろう。


――四匹目は子猫だった。茶色の縞模様だ。三毛・灰色の縞・灰色の縞と続いて茶色の縞と来た。今回は短毛だった。よく考えれば毛が短い方が夏でも涼しいだろう。私の若い頃の野良猫は短毛が多かったが、餌やりで栄養状態が良いからか、それとも猫の種類が増えたのか長い毛の野良猫を多く見かける。それだけ○○さんが餌やりをしているって事だ、今回フックに引っ掛けた餌は刺身の残りだった。――


 イメージ的に野良猫は短毛種が多いと思う。見るからに長毛種は夏の暑さに弱そうだ。冬の寒さには強くても、温暖化で毎年の最高気温が更新される昨今では厳しいだろう。叔父が猫捨てをしていた時期はそれほど暑くなかったのだろうかと思ったが、良く考えれば平成初期は三十年前の話だ。


――今回は子猫なので比較的近場に捨てた。子猫ならば市内でよいだろう、KのU区に捨てた――


 市内でもK地域と言えば山奥もよい所、しかもU区といえばその中でも最も山奥にある人口一桁な過疎地域だ。K地域中心から車で二時間近くかかる携帯の電波が届かない秘境だ。道が整備されたと言われる今でもそうなのだから三十年前なら更に酷かったことだろう。おそらく人目をはばかるとかそんな理由で選んだのだろう。


――子猫が居るなら親猫も居るはず。油断せずに罠を仕掛けておこうと思う――


 猫は山奥なら生きていけるのだろうか? 人間よりクマやシカが多いと言われるK地域のU区、もしも生き残って他の猫と繁殖していればU区にも猫による被害が有りそうなものだがそんな話は聞かない。天寿を全うしたのか、それともほかの野生動物の捕食されたか、子猫の行く末は誰も知らない。

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