第12話 戦争

 第12話 戦争

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 どうも、領地持ちの貴族になり、女の子からモテモテ、着実に異世界転生のテンプレを消化しているもぐらさんです。


 最近俺はせっせと穴掘りに励んでいます。

 違いますよ、変な意味じゃないですよ。

 ……もし俺が穴掘りに励んでいなかったらきっと今頃は、いや何でもない。


 ただ、レベル上げのためにせっせと穴掘りに励んでいます。

 やっぱり、異世界といえばレベル上げ。

 レベル差で敵を圧倒する快感は、無双ゲイムに近いものがある……と思います。

 実際に経験したことがないので、何とも言えませんが。


 別に現実逃避しているとか、ロティスから逃げてるとかそんな事実はない。

 いろいろと憶測を立てるのはやめてもらいたい。

 ただ、野生動物は性欲旺盛らしい。


「キューー」


 ビクッ!


 ろ、ロティス!?


 キョロキョロ


 ……なんだ、近くにはいないか。

 それにしても、何かあったんだろうか?


 ……何となく不快感がある。

 この感覚、覚えがある。

 あれはそう、ロティスが俺の巣に侵入してきたときと同じ……


 チッ、仮にも俺の配下だ。

 手を出そうってんなら、モグラ界最強の俺が黙っちゃいないぞ。


 下の方へ下の方へと掘り進めた穴を、一気に駆け上がる。

 不快感を複数感じる。

 ロティスの時とは違い、複数匹での侵入らしい。


「ギィギ、ギィギーー!」


「クック」


「ギィギ」


「キュウ、キュウ」


 なんだこれ!?

 狭い巣穴に、モグラが何匹も詰まっている。


 感覚的に、この先にロティスとその配下がいるっぽいが……

 モグラが邪魔で、前に進めない。


 とりあえず、一番後ろのモグラに噛みつく。


「ギュウーー!!」


 そして振り返ったところを、ずっと穴を掘り続け強化した前足で張り倒す。


「ギュ!!」


 やっぱり弱い。

 スキルレベルを上げた関係もあるだろうが、それにしたってロティスの方がずっと強かった。


 で、倒したのだが前に進めない。

 結局モグラが道をふさいでいることに変わりはない。


「キューー!!」


 こ、これはロティスの!!

 ロティスが危ない!!


 同種のモグラに、それ以前に生物にこれを使うのは抵抗あるが……

 四の五の言ってる余裕はない。


 これは土だ。

 モグラの形をしてるだけ。

 ただの土に過ぎない。


 ……掘り進める!!


 前足のひとかき目で毛皮を切り裂き息の根すら止め、ふたかき目で土と同じく消えてなくなる。


「ギィギ?」


「ギュウ!?」


「クック??」


「死にたくなければ道を開けろ!!」


 モグラにコミニケションするほどの知能はなく、それゆえに俺の言葉の意味など理解できないだろう。

 しかし、目の前で仲間が殺され、その死体すら消え去った。


 その実行者が、叫んだ。


 恐怖。

 生物の、野生生物の根幹に訴えかける恐怖だ。


 モグラとは無力な生き物だ。

 土の外に出てしまえば、ひとたびそこは危険な敵地と化す。


 昔、実家で買っていた猫がモグラを捕まえ、食べるでもなく俺の目の前に放置していったのを見たことがある。

 それほどモグラは弱い生き物だ。

 普段土の中にいて、安全だからこそ恐怖に敏感だ。


 モグラたちは、我先にと自分の巣へ引き返していく。


 待ってろ、ロティス。

 今助けて……


「キューー!!」


 普段からロティスがくつろいでいる、少し広めの空間。

 そこに飛び込むと、ロティスと正面衝突した。


「いててて……」


 空間の中央、少し大きめのモグラがあおむけになって倒れている。

 どうやらロティスが倒したらしい。

 奥の方には事前に避難させていたのか、配下のモグラたちが固まっている。


「キュウ!」


 自慢げなのが少し腹立つが、まぁ無事でよかった。


 異世界にきて、初めてで唯一の仲間……

 いや、前世も含めて最高の仲間だ。


「ロティス、すごいじゃないか」


「キュ!」


 この世界に、土竜の姿で転生して……

 女神様には感謝してもしきれないな。

 そして、あの紛らわしい表記をした見知らぬ神にも。


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 ーー次話予告ーー


『第13話 チート持ち転生』

 明日更新


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