1章-幕間3

side. とある男


俺はどこにでもいる街のゴロツキだ。

昔はハンターを目指したが才能がなかった。

努力という名の才能が。


小さい頃から何をやっても中途半端。

やり遂げた事なんて、母ちゃんに言われたおつかいくらいなもんだ。

俺には父親がいない。

だから母ちゃんがたったひとりの家族だ。

俺が守ってやるんだ。


ある日母ちゃんが病気になった。

日に日に弱っていく母ちゃんになんとか元気になって欲しくて、一杯働いた。

でもなんの取り柄もない俺が働いたところで貰える給金なんてたかが知れてる。

もっといいポーションを買ってやりたい。

毎日そればっかり考えた。

魔法ポーションなんて手がでるわけがない。

警備も厳重だから盗むこともできない。


そんなときクズ友達から割のいい仕事を紹介してもらえた。

地上げをするらしい。

給金は今までの3倍もらえるという。

俺はすぐに飛びついた。

がむしゃらになって働いた。

抵抗するやつは殴りもした。

若旦那からも目を掛けられて、出世もした。

そして一番難しいヤマに行ってこいと厳しい目で命令された。


そこは一軒のポーション屋だった。

ここは知っている、安いのに割といいポーションを売ってくれることで少し有名だ。

娘さんも器量よしときている。

若旦那はそっちが目当てなような気もするが、詮索してもしょうがない。

それからしつこくこの店に足を運ぶことになった。


何やら例の店のポーションの効果が上がっていると街で噂になり始めた。

なかなかいい手が思い浮かばないが、取りあえず店に行って圧力をかけることだけは続けているので、その日も店に向かった。

そこには爺さんがいて、娘に手を出そうとしたら噛みついてきやがった!

あまりに痛くて思わず振り払ったら呆気なく床に倒れ込んだ。


しまった、やりすぎた!

動揺した俺はすぐさまその場を逃げ出した。

ヤバい。

母ちゃんが悲しむ。

母ちゃんは年寄りを大事にしろっていつも言ってる。

母一人で俺を育ててるとき、近所の年寄り連中に何度も助けてもらったそうだ。

それなのに俺は年寄りにひどいことをして怪我をさせてしまったかもしれない。

なんてことをしてしまったんだ…母ちゃんに合わせる顔がねぇ…


それから何度か店には行くが、大したこともできずに帰る。

爺さんがいると気を遣うんだよ!

引っ込んでてくれよ!


ついに若旦那が動いた。

いつまでたっても話が進まないので痺れをきらしたらしい。

役に立てず申し訳なくて顔が上げられない。

連れ立って例のポーション屋に出向く。

てっきり力ずくで娘を連れて行くんだと思ったら、まさかの爺さんを連れて行くだと?

しかし命令に逆らえない。

怪我をさせないように優しく手を引いて連れて行こうとする。

少し抵抗したが若旦那の一言で大人しくなった。

そのまま大人しくしていてくれよと思った矢先、ドアが開いていきなり顔面を殴りつけられた。


そこで記憶が飛んでいる。

次は若旦那に蹴り起こされた。

俺はまた失敗したらしい。

もういよいよ潮時だ。

拾ってもらった若旦那には申し訳ないがもう辞めよう。

これまでの稼ぎがあればいいポーションが手にはいるかもしれない。


出来ることなら例のポーション屋で買わせて欲しいが、俺に売ってくれるだろうか…

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