1章-幕間2

side. ユレーナ


私の親は街でポーション屋をやっている。

ひいじいさんの代からやってるから結構老舗の方だ。

私には双子の姉イレーナがいる。

小さい頃からどこに行くのも何をするのも一緒だった。

でもある頃から私は絵本で読んだ冒険譚に憧れるようになった。


いつか私も絵本に出てくるヨークラム様のように大賢者になる!

それが私の目標なったときから、猛勉強を始めた。

だがすぐに挫折した。

魔法は世界規模で禁止されていたからだ。

一説にはヨークラム様の大魔法のせいでマナが枯渇し世界樹枯らせたから、とも言われている。

ふざけるな!

しかし魔法が禁止されている現状は受け入れるしかなく、勉強はあっさり止めた。


そのかわりトレーニングをするようになった。

なにかに没頭しないとおかしくなりそうだったからだ。

朝は街中をとにかく走った。

昼はハンターギルドに入り浸り、剣を振らせてもらった。

夜にはクタクタだったが、また街中を走った。

毎日欠かさず3年が経った頃、じいちゃんと母さんが流行病で立て続けに死んでしまった。

ウチはポーション屋なのに、そのポーションは役に立たなかった。


魔法さえあれば。

ヨークラム様のような魔法使いがいれば。


その頃からだ、たまに視界に光を捉える事があることに気付いたのは。

最初は目の病気かと思って父さんに相談もしたが気のせいだろうと言われた。

イレーナに相談しても答えは同じ。

出入りしていたハンターギルドの人に聞いて、初めて違う答えを聞けた。

「それマナが見えてるんじゃないか?」

私は強めに光っているハンターが持つ魔法ポーションを見据え、納得した。


そう思っても自分に魔法は使えない。

もう無駄な勉強は嫌だ。

じゃあどうするか。

強くなってハンターで名を上げる。

そうすればいろんな人に出会える。

もしかしたらその中に魔法を使うハンターや、本当の魔法使いに出会えるかもしれない。

その人とともに戦う自分の姿を夢想した時、私に新たな目標ができた。


それから成人し、正式にハンターギルドの一員になった。

幼少からのトレーニングは無駄ではなく、実戦経験を積むごとに私は強くなった。

合同の魔物討伐に参加した時も倒した魔物の数は私が一番。

魔石は全部ギルドに買い叩かれるので収入は良くないが、強くなれるから不満はない。


そして討伐から戻って実家の前に立つと、言い争う声が聞こえてきた。

聞き耳を立てて状況を探るが、いまいちピンとこない。

いよいよかというところで助けに入ったが、知らない爺さんが悪そうな奴らに捕まっていた。

父さんが家族と言ったんだ、助けないわけにいかない。


一発で男を伸したあと爺さんを観察すると、体の輪郭に沿って淡く光っている。

ドクンッと心臓が高鳴った。

こんな人は今までひとりとしていなかった。

なんだ、この人は!

もしかして…

動揺が収まらない間に、場所を移して話をする事になった。


そこでどうしても確認したかった事を切り出す。


「爺さん、魔法使えるだろ」


空気が凍ったが、そんなのは関係ない。

魔法使いに出会えたかもしれないのだ。

しかし、事は予想外の方向に向かってしまう。

爺さんが飛び出して行ってしまったのだ。

え?なんで?なんで逃げるの!?

しばらく三人して呆然としていたがイレーナが一番最初に復活した。


「バカッ!ユレーナ!いますぐ追いかけて!必ず連れ戻して!このままヨウさんとサヨナラなんてダメなんだから!」


そう言って尻を蹴り上げられ店を追い出される。

なんとなく街の外へ行ってみるとたまたまあの爺さんがいた。

やっぱりちょっと光ってる。


突っ込んだ話をしたら全部の魔法を使えるとか言い出した。

絶対呆けてるなこの爺さん。

でもちょっと目を離した隙にまた逃げられた。

ん?爺さん、さっきより光が強くなってるぞ?

おいおい、マジか?マジなのか!?

逃がすかよ!!


結果。

マジだった。

生まれて初めてこんなに興奮した!

やっぱり魔法使いはいた!

っていうか話聞いたらあのヨークラム様だっていうし!

だめ、鼻血でそう…


それから色々話してヨウ様の弟子になれた!

夢に描いた魔法使いとともに戦う私誕生!

ヨウ様は今はお爺さんだから、私がしっかりお守りしないといけない、


任せてください、お姉様!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る