四発目 少女の才能

第十六匹 少女の長所

 俺はヘカテリーナの狩りのセンスを見極めていた。


彼女は目や耳が良く、それに鼻も良い。実際、そう思われる場面にたびたび遭遇することがあった。



 「アキトさん、あの鳩って食べれる鳩ですか? なんだか、鷹みたい茶色の模様なんですが・・・」


そう言って、遥か向こうの小さな鳥らしきものを指差す。


「あ、えぇ・・・、俺には見えないわ。ちょっと、見てくるよ」


そう言って、俺はその鳩がキジバトと認識するのに、かなり歩いたほどであった。


「ヘカテリーナは目が良いなぁ・・・。」


 次にこんなことが事例が起きた。


別の日、いつも騒がしいヘカテリーナがその日に限ってソワソワして、落ち着きがなかった。


不思議に思った俺は、彼女にそのわけを聞くと、


「あ、あのアキトさん。少しだけ気になるんですけど、さっきから時々、遠くの方で女の人の叫び声が聞こえて、ちょっとだけ怖いです。」


俺は、すぐにそれがシカの鳴き声だと理解したと同時に、ヘカテリーナが俺には聞こえない声を感じ取っていることに大変驚いた。


 それから、彼女は古屋敷に来たときから頻回に鼻をピクピクさせていることがあった。


その理由を聞くと、


「このお屋敷にもしかするとなんですけど、地下室から酸っぱいブドウの匂いがします。」


と、言うので詳しく地下を調べていたら、隠し扉を発見する。その部屋の中にはワインの貯蔵樽が数十個もあった。


俺やドワーフ達の全員がまったく気付かない匂いに彼女は気付いていたのだ。ならば、その類い稀能力を狩猟に利用できないかと俺は検討する。ヘカテリーナはその才能にまだ気付いておらず、活かしきれていない。俺は狩人として、その才能をどうにか開花させてやりたいと考え、訓練の必要性を感じる。


その日からヘカテリーナを狩りへ連れていくために、彼女との散歩に誘うようになったり、彼女の驚きやすい性格を克服させるため、ちょくちょく気付かれない様に近寄って声をかけるようにもなった。


「キャーーー!! もうアキトさん、びっくりしました」


初めの頃は、俺が忍び寄っている音になかなか気付かないで、盛大にビックリしていたが、段々とそれにも慣れてきたのか、


「フフフフ、アキトさんが来ることはお見通しです」


と、言うほどに俺の気配や音を感じとるほどに成長する。


時期が来たと思い、俺はヘカテリーナに提案する。


「ヘカテリーナ、今度一緒に狩りに行くぞ 」


彼女は、その意味を理解するのにしばらく時間を要したが、意味がわかるとアワアワした様子で


「え・・・えええええ、アキトさんの狩りにまたご一緒してもよろしいのですか? 」


「ああ、もちろんだ。ヘカテリーナもそろそろ俺と一緒に狩りに出かけてもいい頃合いだと思ってな。、次の狩りで一緒に獲物を狩ろう」


その言葉に彼女は


「やったぁー。アキトさんと一緒に狩りができるんですね」


尻尾をヒョコヒョコと振りながら大いに喜ぶ。


そうして、次の日。俺はヘカテリーナと初めて協力して狩りに出かけるのであった。

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