第14話 〜"学校のカイダン"編⑪〜

 席替えをした次の日の朝。

 「はぁ!?それ、どういうこと?」

 「だから、そのまんまの意味で受け取ってもらえる?"学校のカイダン"の廃止。これが一緒に映画に行く条件。出来ないなら、残念だけど映画も一緒に行けないよ」あんぐりと口を開けている三芳の目線の先で、茜が言った。

 「え…でもどうやってやればいいか分かんないよ?」

 「段なんて関係なく接すればいいんじゃないの?自分や相手が何段か何て気にしないのが普通。そうでしょ?」

 「うん、まあ…」

 「2日間で完全に廃止してね」

 「どうしてそんなに廃止したいの?茜は、こういうことになるとキャラ変するよね」 

 「そうかな?もしかして、また多重人格者って言いたいの?」そう言って茜は三芳に笑いかけた。

 三芳は「あはは」と笑うと、茜と反対方向を向き、変顔とも笑顔ともとれる顔でガッツポーズをした。


 4時間目の授業終了後、生徒たちは給食準備を始め、谷川は教室に戻って来た。

 「先生、ちょっといいですか」谷川が手を洗おうと丁度教室を出たその時、三芳が話しかけて来た。

 「おう、どうした?」

 「ちょ、ちょっと…」と言って三芳は谷川を連れて進路指導室へ入り、ドアを占めた。

 「先生は、学校のカイダンって知ってますか」

 「あの、七不思議みたいなやつ?怖い話」

 「…じゃなくて」

 「何かの作品?そう言えばそんなドラマもあったような…」 

 「違います。この学校の悪い伝統なんです。生徒の格付け・それに伴う差別。段は下から1段,2段,3段、最上段の4段は、例えば俺とか女子だと山沢とかですね」

 「知らなかった。お前らそんなことしてたのか」

 「ごめんなさい。すごく反省しているんです。だから、それを廃止したいんです」

 「廃止?他の先生たちはこのことを知ってるのか?」

 「絶対に知らないと思います。ただ、校長先生は…」

 「香取校長先生だけは、このことを知ってるのか」 

 「多分…1番この学校に長く勤務してるらしいんで。あの、先生…廃止を手伝ってもらえませんか」

 「この俺が、かわいいかわいい生徒を見放す訳ないだろ。…で、何をするべきかは考えてるか?」

 「4段の俺ができることと言えば、下の段の人に話しかけることぐらいしか思いつかなくて。でも先生、もう一度席替えをさせてもらえたら、きっと廃止は早くできます」

 「席替え…?」

 「段が高い人程席が前の方なんです。ほら、今の席だって前とあんまり変わらないじゃないですか」

 「確かに!ということは、茜は4段なのか?」

 「はい。僕が4段にしました。僕が」

 「あ、うん。何で?」

 「先生なら、察して下さい。ねっ?…ってことで、席替え、考えといて下さい」

 「おう、分かった」

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