第10話 〜"学校のカイダン"編⑦〜

 「心理カウンセラーってのも面倒なもんだね。うちのクラスだけで女子は11名、男子は4名。合計15名が記名してた。」吉野は廊下の1番奥にある、相談室に来ていた。

 「今のところだけでも、同じような人数が5クラスもあるんすよ。地獄のニ週間になりそうっす」と絵石が言った。彼は心理カウンセラーとして潜入している。「ところで、誰かに聞かれてませんかね?」

 「教室までの道程にいくつかゴキブリのおもちゃを置いてきたから大丈夫だろう。それよりET、何か掴めたか?」

 「そのETってあだ名やめて下さいって、何度も言ったっすよね。ちなみに、まだ何も分からないっすよ」

 「俺の周りには素敵なあだ名をつけたくなる名前の輩がいっぱいいると思わないか」

 「思うわけないっすよ!すーたんとか、メカブとか、TTとか、可哀想っすよ」

 「そうかなぁ…。あっ、あの件はどうなった?あのー、都知事の」 

 「男の暗殺ですか。あれなら、福田先輩がちゃちゃっと済まされたようですけど」

 都知事は、神田の知り合いで、また、政治家の中で一番最初にUNTO に依頼をした人だった。今ではお得意様となっており、暗殺やスパイなど、裏の仕事が主となったきっかけを作ったのも彼だ。本当に信頼できる"おえらいさん"にだけこの会社のことを教え、UNTOは次第に力を大きくしていった。

 ちなみに福田は、暗殺部の部長、暗殺のプロだ。絵石は福田に憧れてUNTOに入社した。


 「自分を好きにさせて女子を弄ぶことが趣味。それが、三芳の正体。自分に見惚れてる女子、嫉妬する女子、そして病む女子が面白いらしい」放課後、他に誰もいなくなった教室で、丹波と茜は向かい合って座っていた。

 「ふーん、最低なやつね」

 「あー、言っちゃったよ…何やってんだろう、俺。そもそも、脅しなんて良くないんじゃないの?」茜は、丹波が三芳に万引きをさせられていることをバラすと、丹波に脅しをかけたのだ。

 「そういえば、まだ言ってなかったことが1つあった。私、三芳くんの悪い顔見えてたし、全然好きじゃないよ」

 「俺はどんな顔して三芳に会えばいいんだよー!」  

 「平然としていればいいじゃない。どうして他の人の顔色を伺っていなきゃいけないの?自己中心的な人がこの世で一番幸せだよね」

 「特にこの学校はね、そうしなきゃ生きていけないんだよ」

 「三芳くんや、山沢さんは自己中心的で、一番の幸せ者だよね」

 「仕方ないよ。口がうまくて先輩に気に入られたんだから」

 「あと、親のコネでしょ」茜は椅子にかけておいたコートを取り、リュックを背負った。「じゃあね」そして教室を出た。

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