☆2R》タツキおおいに悩む

 ここは、かつてビルドバーストと言われていた場所。


 タツキは、大岩の上にいる男を見上げながら、問いかけられた事に対し、どう答えたらいいか考えていた。


 するとその男は、他の岩へと飛び移り下まで降りていき、タツキの方へと歩き出した。



 この男はダークエルフで、一見すると冒険者のようだが、身につけている物は高級な素材ばかりで、どう見ても身分の高い者だ。



「……おい!なぜ答えない。まさか喋る事ができないのか?」


「そういうわけじゃない。だが……」


 どうしたらいいかとタツキは悩んでいた。


「何を悩んでいる?まさかお前、ここで密猟していたんじゃないだろうな!」


「み、密猟!?いや違う。だが、それはどういう事なんだ?」


 そう言われタツキは否定した。


 そしてタツキは、ダークエルフの男が言った事が気になり聞いてみた。


 ダークエルフの男は、この事を話しても問題ないだろうと判断し、説明しはじめた。



 各国をはさみ北側と南側の辺境の地には、強い魔獣や怪鳥、あらゆる珍しい動物、虫、草花などが生息している為、それらを密猟する者があとをたたない。



「……というわけだ。だが、お前が密猟者じゃないというのは本当のようだな」


 ダークエルフの男はそう言い一呼吸おくと、


「しかしもう一つ、気になっている事がある。お前は間違いなく、ただ者ではない!違うか?」


「なるほど。だがお前こそ何者で、ここで何をしている?」


「何か、はぐらかされた気もするが。まあいいだろう。俺の名はテリオス。それとここで何をしていたか、か。フッ!ただの家出だ!!」


 テリオスはドヤ顔でそう言い放った。


 それを聞きタツキは一瞬「……」となり呆れた表情のまま固まってしまった。


「うむ。急に黙ってどうした?」


 そう言われタツキは我に返りテリオスをみた。


「いや俺は大丈夫だ。だが家出ってどういう事なんだ?」


「何でお前に、そこまで話す必要がある?」


 テリオスは不思議に思い首を傾げた。


「言われてみれば、確かにそうだな」


「ああ、そういう事だ!だが、どうも気になる。本当にお前、何者なんだ?」


「何者か……さぁな。ただ言える事は、タツキ・ドラゴナイトという名前だけだ!」


 そう言うとテリオスは、何故か不機嫌な顔になり、タツキを睨みつけた。


「おい!その名前は、本当の名なのか?俺は嘘を見抜く能力を持っている。微妙だが、お前がその名前を言ったとき身体に電気がはしった!」


「……嘘を見抜くって、ちょっと待て!間違いなく俺はタツキだ!」


 タツキは、どうしたらいいか分からなくなり頭を抱え、心の中で自問自答しはじめた。


(どうしたらいい?確かに本来の俺の名前は……。だが、この身体では間違いなくタツキ・ドラゴナイトだ。ただ、それをどうコイツに説明したらいい?)

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