第35話 エピローグ1
その後、駆け付けた宇宙警備隊に海賊たちが次々と捕まってゆく。捕まってたまるかと森の奥へと逃げた者もいたが陽気なエンゼル号には生命反応を感知する機能がある。どこへ逃げようとも逃がしはしない。
この星を勝手に改造し、命を弄び、彼らに散々酷いことをしたのだから極刑は免れないだろう。
そして問題は俺だ。彼女達を守るためとはいえ、明らかな過剰な武装による武器不法所持及びその使用。そして殺人罪。
テレッサは倉庫の亜人たちを助けるため、襲いかかってきた海賊どもを射殺している。またブリッジに上がってくるまでにも何人か。当然管理責任が問われのだから俺が処分を受けなくてはならない。
また俺に至っては間接的だが海賊のボスを死なせてしまっている。他にも海賊の宇宙船が墜落した際に地上いた海賊達が何人か巻き込まれてしまっていた。
――有罪確定……
「あはは……間違いなく豚箱行きだ。終わった……終わったよぉぉ俺の人生……」
さっきはカッコよくペンダントを投げ捨てたが早い話、こうなるわけだからサクラさんとはもう終わり。んでもってこの星で出会った彼女達とも終わりということになってしまう。そう終わりだ……彼女達と出会うことはもう二度とないだろう。
「クリフ、社長から直通電話です」
テレッサの手にしている端末装置から空中に通信電話の画面が映っていた。その画面の中に社長が映っている。前々から見た目からして変なオジサンって感じったが、今回の一件ですっかり怪しげなオッサンという印象になり果ててしまった。
連絡をよこしたのはジャミングが解除されたのでこの星で起きた出来事の記録が全部社長に届いたのであろう。
こんな違法なものを違法な手段で入手して俺に使わせた諸悪の根源だ。俺一人詰め腹切られてなるものか、社長と会社もろとも引導を渡してやる。せめてそのくらいしないと気が収まらん。
『おお、クリフ君。ずいぶん災難だったねぇ』
まるで他人事かのように話す社長に対し俺は怒りをこみ上げた。だれのせいでこんな事になったと思っているのか分かって無いのではないだろうか。
「ええ……とっても素敵な装備をありがとう社長。おかげで命拾いしましたよ」
思いっきり皮肉をこめて言ってやった。
『うんうん。そうかそうか、アレは役に立ったか』
まるでご近所の会話のように笑顔で返された。この人は自分が犯罪者という自覚ないのかという気がしてくる。
『ただねぇ、困るんだよねぇ……色々と……そぉ、いろいろとだよョ』
――あ、やっぱり自覚はあった。だがなんだか雰囲気怪しいぞ。社長の目付きはまるで獲物をみるかのような顔に変わっている。俺は社長を怪しいオジサンから不気味なオジサンに格上げすることにした。
『でねぇ、悪いんだけどぉ。君のこと会社の履歴から消しちゃった。ついでに君の情報からも会社の履歴消しちゃった。えへェ』
俺は社長の言っていることが理解できなかった。会社から俺の履歴を消した? 一歩譲ってそれは可能だろう。だが俺の履歴から会社情報を消したって何だよ。そんな事できるわけ無いじゃないか。
俺の個人の履歴を触るイコール国家管理局の情報を操作したということだぞ。そんな超犯罪できるわけない。大昔みたいなセキュリティガバガバ時代では無いのだから。
『でも、それじゃ君に悪いから宇宙船およびシャトル、トレーラーとアンドロイドをセットで退職金代わりにあげるね。なぁに名義変更はこちらでやっておいたから君の手を煩わせないよ。まぁついでにその備品の情報からもうちの社の履歴は消しておいたから、元気でね。チャオ』
社長から一方的に通告が終わると端末から画面が消えた。俺はあまりの内容に開いた口が塞がらない。
「何がチャオだ! トカゲのしっぽ切りじゃないか。俺に全部押し付けとか海賊よりヒデェ!!」
俺はあまりの腹立たしさに地団駄を踏む。
一体どれだけ手回しがいいんだよ。もしかして俺は初めから狙われていたのか。もう、そうだとしか思えない。そうだテレッサとドクターとのやり取りを見ても最初っから仕組まれていたに違いない!
「というわけで只今をもちまして私はあなたの所有物となりました。今後末永くご愛用お願いいたします『ご主人様』」
「なにがご主人様だよ。ちっとも嬉しくない!」
今更「ご主人様」と言われても気持ち悪いとしかいいようがない。散々愛称で呼ばれていたのだから。だがこうなるとコイツも哀れである。軍の所属のままであれば特に問題はないのだが、彼女は民間アンドロイドだ。事件の押収物としてエネルギーパックを抜かれて倉庫行となるだろう。
「えーと、クリフィクト・L・ヤグラザカさん?」
やってきたのは宇宙警備隊の二人組のお姉さんだ。電子パッドで俺の人相を確認していた。来るべきときがきた。俺は逃げ出すことも叶わず観念してハイと答える。
「あなたには兵器不法所持、およびその使用、さらに殺人罪で逮捕状が出ています」
警備隊のお姉さんはパッドに映されている罪状の一覧を俺に見せつけた。罪状にはお姉さんが述べた以外の罪状がズラーっと並んでいる。面倒なので省略したんだろうな。
そしてガチャリと俺の両腕に手錠がが掛けられた。それは俺が思っていたよりはるかに重い代物だった。いままでニュースで手錠をされた奴の映像をたくさん見たが、まさか自分が付ける側になるとは……そう思うと涙があふれ出てくる。
「あれ、クリフどこ行くの?」
トリニィとカテリアは警備隊の人に治療を受けていたが、俺が連行されようしたのをみて声をかけてきた。
痛々しく体のあちこちに包帯を巻いているカテリアとトリニィ、そしてリプルとラプルが俺の元へとやってくる。俺は思わず背を向けて彼女たちに手錠を見えないよう隠した。
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