第26話 過魔超越
「《
光瑠がそう口にすると、魔力も殺気もこれまでとは比べ物にならない程に膨れ上がる。
「《
鍵言したその瞬間には光瑠の手に握られた聖斧は聖剣へと変わっておりーー
「ーーッ!」
光瑠はその聖剣を上から下へ振り下ろす。俺は
(鍵言から行使までが早すぎだろ。つうかなんて剣速だよ!)
魔術は詠唱、鍵言をしてから魔術が行使されるまでに多少のタイムラグがある。行使する魔術のレベルにもよるが、このタイムラグが短ければ短い程、魔術師としての技術が高いという事だ。
そしてさっき光瑠がした魔術行使にはタイムラグがほぼ無かった。それはつまりーー
(魔術行使の技術が上がっている?いや、今まで力をセーブしていたのか?)
横に跳ぶ俺に右腕の動きだけで斬撃を放つ光瑠。膂力だけの斬撃だが、その剣速は圧倒的に速さ。
俺は体勢的に回避出来ない為、スイッチブレードを振るって斬撃を相殺しようとするが、その威力に負けて吹っ飛ばされる。
「クッソ!なんつう威力・・・・・・」
『あの聖剣には振るった時に剣速を上昇させる効果があるようですね』
『でもさっきまでの聖剣と同じ魔術だろ?何で急にこんな威力になったんだ?』
『込められた魔力量が多く、術式も洗礼されています、恐らくそのせいですね。だとしてもギアが上げたにしては強くなりすぎですね』
光瑠の発した鍵言とも違う言葉。魔術でもない圧倒的な魔術師としての技術の上昇。そこから導き出される答えは1つ。
『能力か・・・・・・』
『そうでしょうね』
光瑠は俺との距離を1歩まだ1歩と詰めてくる。
歩きながら近づいてくるのは余裕の現れだろうか。
「《
そんな光瑠の背後から星の様に輝く天槍が迫る。天槍の方向を見るに恐らく狙いは光瑠の右肩。心臓でも頭でとなく肩を狙ったのは場所を悟らせない為だろう。
しかしーー
「《
「嘘っ!?」
光瑠は掌サイズの聖盾を右肩に展開し、高速て迫る天槍を防いだ。
大きさを絞り強度を上げた障壁なら天槍を防ぐ事は容易いだろう。驚くべきは光瑠が1度も後ろを振り向いていない事だ。天槍を1度も視認せずに狙いの場所すら見切った事だ。
その事実に結梨は驚きの声を上げ、俺も目を見開く。
『勘、じゃねぇよな』
『恐らく魔力察知でしょう。それもかなり高いレベルの』
ついに目の前まで光瑠が歩み寄り、剣戟が再び始まる。
振るわれる光剣は1撃でも当たれば致命傷となる斬撃。幾度と無く振るわれる斬撃を俺は氣を読む事でなんとか防ぐ。
「ハァッ!」
光剣での突きを首の動きだけで躱し、下段から斬り上げる様にカウンターの斬撃を振るう。
だがーー
「《
「はっ!?」
有ろう事か光瑠は俺の斬撃を腕がで受け止めた。
「うおっと。どういう事だ?」
斬撃を受け止められた事で生まれ隙を狙い、光瑠が聖剣で俺の首へ斬撃を放つので、俺は大きく後ろに跳んで回避する。
「《
「完全武装ってか・・・・・・」
光瑠の肘から先、膝から下にかけて光の鎧の様な魔術を纏っている。
俺の斬撃もあの聖手甲によって防がれたらしい。
「いくよ、相真」
「ーーッ!」
光瑠がそう口にした刹那、3メートル程はあった俺と光瑠の距離がゼロになる。
瞬く間に振るわれる聖剣をスイッチブレードでガードするが、あまりの威力に数メートル吹っ飛ばされる。
(速すぎだろ!それになんて威力だよ。膂力が上がってやがる!)
数メートル吹っ飛ばされた所で足をブレーキ代わりにして強引に止まる。
俺が漸く止まり体勢を整えようとする最中、光瑠は地面を蹴り距離を詰めて来る。
「《
そんな光瑠に空中から降りそそぐ無数の魔弾。頭上から飛来する流星の如き魔弾、それを光瑠は1度も視界に入れる事なく左右に少し逸れる事で全ての魔弾を躱す。魔弾は光瑠に当たるギリギリを通り過ぎて地面に着弾。
光瑠は走りながら魔弾を全て躱したので失速していない。
だがそれでも一瞬の時間稼ぎにはなった。
俺はスイッチブレードを中段、地面に水平に構える。そしてその場で寸分のブレも無く横へと振るう。
ーー白鷺流剣術 白鷲ーー
光瑠へと高速で飛来する白き魔力を纏った刃の翼。飛翔する白色の斬撃を光瑠はジャンプで空中へ逃げる事で回避する。
(初見で白鷲を避けるのか?だけど浮かせたッ!)
俺は地面を強く蹴り空中にいる光瑠へと迫る。光瑠は魔術を3つ使っている為、障壁は出せない。空中では回避も満足に出来ない。
そう考えた俺は空中へと跳んだがーー
「残念だったね相真」
「ーーッ!」
(釣られた!?)
光瑠は空中で聖剣を投擲する。空中で満足に回避出来ないのは俺も同じ。
俺は身体を強引に捻って回避する。
どうにか聖剣を掠めただけで済んだが、強引に回避した代償は小さくない。
着地した瞬間にほぼゼロ距離の俺に光瑠は聖手甲で武装した拳で拳撃を放つ。
「《
1度は光瑠の魔術を防いでいる結梨の障壁魔術が俺と光瑠の間に展開される。しかしーー
「ぐふっ!」
光瑠の拳は容易くその障壁を破り、貫通して俺の腹部に拳撃が突き刺さる。
(障壁が無かった死んでたーー)
数メートル吹っ飛ばされるも、立ち上がろうとする俺の目の前に既に距離を詰めていた光瑠が聖脚甲で武装した光瑠が蹴りを放つ。
何とかスイッチブレードを盾にしてガードするが威力を殺し切れる筈もなく吹っ飛ばされ壁に激突する。
(ああ、クソ。何回吹っ飛ばされるんだよ)
「相真!大丈夫なの?」
「なんとかな。でも肋骨は数本逝ってるかもな」
「全然大丈夫じゃないじゃない」
近くに寄って来た結梨が俺の前に立つ。
どうやら結梨がいた所まで吹っ飛ばされたらしい。
「なぁ結梨」
「何よ。この状況をひっくり返す策でもあるわけ?」
「お前だけでも逃げろ」
「はぁ!?何言ってんのよ!」
俺の提案に結梨は激しく声を荒げる。
光瑠を見ると特に攻めて来る様子も無いので俺は話を続ける。
「アイツの攻撃を受けて分かった。勝てる見込みが薄すぎる。2人共死ぬか、俺だけが死ぬかならどっちが良いかなんて考えるまでもないだろ」
「また、アンタは自分を犠牲にするの?」
「アイツの狙いは俺だ。お前まで命を懸ける必要は無い」
「だからって・・・・・・アンタを見殺しに出来るわけないでしょ・・・・・・」
結梨は納得いかないという表情で俺の事を見つめる。だが俺はそれを無視して光瑠へと話し掛ける。
「結梨が逃げるって言ったら見逃してくれるか?」
「構わないよ。僕の狙いは相真だけだからね」
「ご親切にどうも」
光瑠は笑みを浮かべながらそう答える。
「私は逃げるなんてーー」
「俺がアイツを止める。だから頼む、お前は逃げろ」
俺は結梨の肩に手を乗せて真っ直ぐ結梨の目を見ながらそう言う。
「分かったわよ。これ役に立つかもだから渡しておくわ」
「助かるよ。皆んなに宜しく言っておいてくれ」
結梨は3枚の霊符を渡すと俺に背を向けて走り出した。
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