第1話 出会い

『相真君、起きて下さい』

「うーん、・・・・・・あと5分」


窓から差し込む眩しいくらいの光が部屋を照らす。

覚醒しきっていない意識の中、ルナの声が聞こえる来る。


『ダメです。入学式に遅れちゃいますよ』

「・・・・・・分かった」


ルナの助けを受けて睡魔になんとか打ち勝ち、ようやくベッドから出る。

ロッカーに入っていた制服を着てあらかじめ準備されていたバッグを持って、朝食を食べににリビングに向かう。




「おっす!相真、遅かったな」

「おう圭一、準備に少し戸惑ってな」

「そうか、俺は先行ってるぞ」


リビングに行くと先に起きていた圭一が今にも出発しようとしていた。

「いやーあいつ起きるの早いなぁ」

『相真君が遅すぎるんですよ、相真君も急がないと遅刻しますよ』


学校から支給されているコンビニおにぎりをルナに急かされながら食べて終えると、バッグを持って玄関に向かう。




マンションから出て数分、校舎を目指して山の中を歩いているのだが地味に遠いな、道は整備されており歩きずらかは無いが歩くにしては中々に距離がある。


『それにしても景色がずっと一緒だな』

『そりゃあ山の中ですからね・・・・・・』

『どうかしたかルナ?』

『いえ、右の方に少し変わった光景が見えましてね』

『右の方?・・・・・・ああ、なるほどね』


ルナの言葉に右を向くととある光景が目に映る。

俺の視線の先には、体格の良い男2人と小柄の女の子。

見た感じはナンパだろうそれも達の悪いタイプのやつだ。


『なんというか、テンプレ的な状況って感じがするんだが』

『そうですね。ああいうのは女の敵です、女の子を助けましょう』


妙にやる気なルナがそう言ってくる。


『いやでも、多分あの2人は上級生だろ。俺じゃあ喧嘩勝てないぞ』

『大丈夫ですよ、相真君には能力があるじゃないですか。能力使えばあんな奴らに負けませんよ。さああの子を助けに行きましょう』

『何かお前、すげぇ嬉々としてるな』




「ねぇ、君って新入生だよね」

「俺達2年なんだけど、連絡先とか教えてくれない」

「・・・・・・えっと」


分かってはいたが、なんとも面倒くさそうな状況だな。


「あのー、早く学校行かないと遅刻しますよー」

「あぁん?俺達はこの子と遊んでんだよ黙ってろ」


俺が男達から少し離れた位置から話しかけると、男のうちの1人が少しキレ気味で答える。


「えー、でもその子あんまり楽しそうじゃ無いですよ」

「てめぇ何が言いたいんだぁ?」


俺の挑発気味の発言をすると2人が睨みながらこちらに向かってくる。

全く乗り気はしないが、あの時のような不安や恐怖はほとんど無い。


「謝るなら今の内だぞ新入生君よぉ」

「こんだけ言っといて、今更謝るわけ無いじゃないですか先輩方w」

「言ってくれんじゃねぇかよぉ!」


俺の度重なる挑発に2人は完全に怒り浸透ようで、凄い形相で歩み寄ってくる。


 《魔王継承ファントムフォース


「くらいやがれ!!」


男が拳を全力で振りかぶって右ストレートを放つ、

しかし俺は能力によって強化された動体視力を使って強引に拳撃を回避する。


「うおっと!」

「何っ!?・・・・・・ぐふっ!!」


男もまさか新入生である俺に避けられるとは思っていなかったようで驚きの表情を浮かべる、俺は男が驚愕して生じたその隙を逃さずボディーブローを放つ、男は俺の拳撃の威力に顔を歪めてその場に膝をつく。


「何だとッ!?」

「あんたもくらっとけ!!」

「がはっ!!」


仲間がワンパンされたことに驚愕しているもう1人にダッシュで距離を詰め、顔面に右ストレートを叩き込む。

俺との身体能力差に男はガードも出来ずに倒れる。


(これで終わりか。《能力解除》・・・・・・くうっ)


「これは・・・・・・能力の身体への負荷か・・・・・・ハァハァ、しんどいな」


男達が倒れたことを確認して能力を解除すると、一気に身体が重くなりまるで100メートル走でもしたかな様に息が上がる。


『10%なのですぐに治りますよ。それよりとっとと学校に向かっちゃいましょう』

『そうだな、これ以上面倒くさい事になっても嫌だしな』


近くにあった木に寄り掛かりながら息を整える。

ルナの言う通り身体の重さは直ぐに無くなり、どうにか歩けるくらいには回復する。


「あ、あの助けてくれて・・・・・・ありがとう」

「・・・・・・ああ、どういたしまして。あんたもまたこういう人達に絡まれない内に、とっとと学校に行った方が良いぞ」


俺がこの場所を離れようとすると、助けた女の子が話しかけて来る。

チラッとしか見ていなかったので気付かなかったがかなりの美少女だ。150センチくらいの身長で華奢な体型(胸も含めて)、少しピンクがかった白い髪でショートカットの髪型がよく似合っている。


美少女耐性は割とある俺ですら見惚れてしまったぜ、全く。


「うん、そうだね」


少女は先程まで見せることの無かった、可憐な笑みを浮かべた。

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