第三章 予定外のイベント 5

「水尾さん!大変です!」普段あまり見ない慌てた様子で元平がレストランで待機していた水尾の所に走ってきた。


「久我山裕美が見つかったんですが、えらいことになってまして……」周りに聞こえないように耳元で言った。

 

 その報告を聞いて水尾は元平とレストランを飛び出した。

 

 水尾が到着した八一○号室には既に警察関係者が何人かいて、カメラのフラッシュで部屋の中の光景が明るく目に飛び込んできた。

 

 久我山裕美は部屋の中央の床で血の海の中に横たわっていた。

 

 その肌色は雪を欺くように白く、明らかに生きている人間のそれでは無かった。


「これは、どういうこっちゃ?」水尾は眉間に一段と深い皺を作った。


「こちらもめった撃ちですわ。とんでもない奴やな。久我山夫妻は相当憎まれとったみたいですね」元平が久我山裕美の姿をまじまじと見つめながら言った。


「いつ頃殺されとった感じや?使われた銃は同じもんか?」水尾は近くにいた鑑識官に聞いた。


「詳しくはよく調べてみないといけませんが、久我山聡が殺された時間帯と前後するくらいだと思われます。使われた銃は同口径程度に見えますね。弾は見つかっていますので同一の銃なのかは直ぐご報告できると思います」


 水尾は横たわっている久我山裕美を見て思った。調べるまでも無い。これは同じ犯人だ。殺し方が似すぎている。久我山聡の殺され方を知った人間の仕業だ。


 こいつは危ない。かなり狂気じみた奴だ。

 

 この建物内にいる人間の安全を確保しなくてはいけないが、最悪その中にそいつがいる可能性もある。


「元平、一旦建物内にいる人間を一カ所に集めるぞ。持ち物と部屋を徹底的に調べろ。それとさっさといなくなってる女記者を見つけてこい」

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