18

 下腹部を抉られるような痛みで目を覚ました。ゆっくりと起き上がると、視界が真っ暗になり頭全体に鈍い痛みが走る。上半身を支えている腕にまで、その重さを感じた。女として生まれたからには、機能しなくなるその日まで毎月「コイツ」がやってくる。有給を取っておいて正解だ。


 2ヶ月前、気まぐれに入った相席屋である男に出会った。クズだ。彼は敢えて口には出さなかったが、いい大人なのにも関わらず他に沢山のカンケイを持っていた。それはもう、数え切れないほどに。


 仕事ばかりだった私はどこかきっと、寂しかったのだ。周りには「女でも1人で生きていける」と、あれほど豪語していたのに。


 いつからか、私はその男の1番で居たいと思うようになった。彼に向けられる眼差しに夢中になった。彼に押し倒された時、男の瞳に映ったのは紛れもなく女である私。


 毎月来るこの「体調不良」も大きい胸も、化粧すればだいぶマシになってしまう顔も。全部全部嫌いなはずだ。それなのに、あの男を前にした途端、簡単に女になってしまう私がしょうもなくて、そしてどこか心地よかった。


 あの男の1番になんて到底なれやしないのに。私はこんな日にでさえ、女になろうとする。

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