バイカーコン2(ミーティング)

 ゆず季ちゃんに頼まれてバイク乗り同士の合コンに参加する事になった私たち。やや早めの時間に集合し、喫茶店でミーティング中。

 孝子には30分早い時刻を合コン自体の集合時間だと伝えていたらしく、流石に幼馴染だと感心した。


「ユキ、ちょっと細くなった?」

 細くなったと言うよりはやつれたと言う方が合っている。

 元々就職活動のストレスで5キロほど痩せたところに加えて、合コンの連絡を受けてから毎日豆腐一丁という鬼のようなダイエットを敢行したとか。トータル10キロ落ちているそうだが、これ絶対リバウンドくるやつ。


「で、みんな大型乗ってるってのは伏せる方向で」とゆず季ちゃん。

「なんでよ?」と孝子が突っかかる。30分早く来させられ、まだ若干不機嫌。

「バイク何乗ってますかー? みたいな出だしでいきなりマウント取っちゃダメでしょ!」と、ゆず季ちゃん。

 ゆず季ちゃんはCBR250R、孝子はアプリリアRS250、ユキはSV400S、私はニンジャ二五〇と言う設定。元々乗っていた車種だったり、排気量が違うモデルだったりで、これならボロは出ないだろう。本当はゆず季ちゃんはCBR250RRの古い方に乗っていたのだが、流石に濃すぎるからとトマトの乗ってるヤツに設定変更した。


「上手く行って、一緒にツーリングとかなったらバレちゃわない?」とユキ。

「男なんて、どーせ2回目のデートはヤることしか頭に無いんだから。二人でお酒飲みましょとかになるから大丈夫よ」とは孝子の談。


「私緊張してきたかも」とユキ。

「だーい丈夫だって。私とキョウは接客業、いわば話術のプロじゃん? 最初適当に盛り上げてくから。あとは男を喜ばせる基本の話術教えとていてあげるよ」

「あー、私も聞いたことあるよ孝姉! あれでしょ? 〝あいうえお〟ってヤツ!」ゆず季ちゃんが相槌を打つ。

「ゆず季ちゃん惜しい。そこは〝さしすせそ〟だ」

「キョウちゃんも知ってるの?」

「あれだよ。男の話に入れる合いの手みたいなもんよ。

 最初が『すがですね!』で……」と孝子の方を見る。

ねばいいのに」と孝子が続ける。

ごーい!」と私。

ンスねーなー」とゆず季ちゃん。

ういう所だぞ」孝子がたたみかける。

「だーっ! なってないって! ゆず季ちゃんはまぁしょうがないとしても孝子アタシと同じで接客業でしょ? どうしてそうなるのよ?」

「バカ、冗談だって」


 こんな感じでミーティングが終わり、いざ集合場所に向かいながら、最後尾からみんなを眺める。

 もう三年以上も水商売の世界にいる孝子はこの中では群を抜いて美人。今日はスカート姿で頑張ってはいるのだが、タイトめなスカートに黒ストッキング、高めのハイヒール等、どうしてもS女感が隠し切れていない。

 可愛い目な私服のゆず季ちゃん。世で言う量産型ってやつだ。考えてみるとこの子が革ツナギ以外を着ているのを初めて見た。孝子とは違ってかわいい系の顔立ちなので、性格は孝子似だけど、上手く猫を被っていれば一番人気かも知れない。

 そして見た目にわかるくらい細っそりしたがやつれ気味で俗に言う病み系ポジションをゲットした意外な伏兵ユキ。正直合コンにくるのにバイクウェアロッソスタイルラボは無いだろうと思うけど、私が学生の頃のユキはゴアテックスゴールドウィンのジャケットだったので随分マシだ。ユキが変わったのかバイク用のウェアがお洒落になってきたのか。案外バイク乗り男子には受けが良いかも知れない。

 さて、散々人の事を分析けなしてきたが。最近新調したショットの革製トラックジャケット(しかもメンズ)に一応スカートを合わせたが、靴は他に無かったのでエンジニアブーツ。

 これ、私が一番不利だ……。

 

 

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