第21話 勘違い

 俺は寝ている間、なぜか薄らと意識があった。白い空間に俺は1人でいた。なるほど。ここはどうやら夢の中だな。

 だけどそんな夢の中でも、今頃どうなっているかな?とか、いつになれば帰ってくるのかな?なんてことをずっと考えていた。


 相変わらず、どうしようもないくらい俺は心配性らしいな。面倒臭い性格をしている。



 そんなことを考えていると俺の頭上に一筋の光がさした。とても眩しくてキラキラした星が集まってできたようにも思えるくらい輝いて見えた。


「全く、、なんなんだよ、、、」


 そう思っていたらその光がだんだんと大きくなっていって俺は目が開けられなかった。

 そうしてじっとしていたが次に目を開けると次の日の朝になっていた。


 日の光が差し込んできていたみたいだった。時間を見ると7時50分の方に時計の針が指していた。


「あと、40分も寝れたじゃん。まぁいいや。」

 そう思って一階のリビングに行くと4日前よりも2人も人数が増えていた。


「あれ?ベンさん朝から来客ですか?言ってくれれば僕、上にいましたのに、、」


そう言うと、ベンは「あぁ、来客だよ、、、ローラン君に。」と言った。その後、「僕に知り合いなんて全然いませんよ。」と言った途端に2人は俺の方を見てきた。


 その2人はアレクスとグランツェだった。


「え、、、お父さん、お母さん?」

「あぁ、そうだ。父さんと母さんだ!」


その声を聞いた途端、俺は涙を流しながらとても現実的な質問を続けた。


「本当にお父さんとお母さんなんだ、、、夢じゃないよね。というか戦争って言ってたよね。徴兵令はどうしたの?戦争は?普通そんなに早くは終わらないでしょ?なんでいるの?」


そう問いただすとアレクスとグランツェは少しだけ俺に不思議そうな表情を見せた。


「ローラン?なにを言っているんだ?戦争って普通1〜3日、長くても1週間で終わるものだろ。」


俺は言葉の意味が理解出来なかった。1日?1週間?は?ドユコト?

そんな顔をしているとグランツェが説明してくれた。


「ローラン、戦争は確かに長くなる時もあるけど、そういうのは稀よ。それに今回の件ではどうやら内乱が起こって私たちの出番なんてほとんどなかったもの。」


俺はこの世界について、全然知らなかったらしい。この世界では国間で行われるちょっとしたいざこざでも戦争に含まれるらしい。

 それにこの世界の人口を考えると確かに長期のものは無理そうだ。


 なんでここまで俺は考えが及ばなかったのかな、、、マジでアホだ。


 そんなことを考えている横でルージュが口を挟んできた。



「本当にそうよ。なのにこの子ったらなんか深刻そうな顔をしちゃって、、、グラン!この子達の面倒を見た代金として奢ってもらおうかしら?」

「えぇ!でも、そういうのは気にしなくていいって言ってたじゃない。」

「つべこべ言わず、さっさと奢れ!」

「はっ、はい、、。」


そう言ってルージュは無理矢理グランツェに言質を取らせて約束させた。



 そうして俺たち家族はとりあえず一度自分達の家に帰ることになった。

家に帰るとすぐにグランツェから言葉が飛んできた。


「ローラン君?あなたはなにをしたんですか?」


ちょ、ちょっと?言い方が怖いんですけど?


「わっ、わたくしは父殿と母殿の心配をしてござった。そのときにみんなから心配しすぎと言われたのですが、不安がなかなか消えなかったのでずっと心配していたのでござる。」


そういうと、グランツェはニコニコした表情で俺の目の前に本を積み始めた。


「ローラン。まずはあなたにこれだけの本を読んでもらおうかしら?いつも魔法の本をずっと読んでいるから多少増えたところでなんの問題もないわよね。」


そう言って積んできた本は全て政治や社会情勢、経済、軍事やその他諸々の一般常識レベルの本。だけど、、ざっと200冊。

 俺、、、今から死ぬのかな、、、


 そう考えているとグランツェからまた言葉が発せられた。


「大丈夫よー。こんなことで死なないわ。ただ、ローランには今は魔法の勉強なんて必要ないと思って私が厳選してあげたの。ありがたく読んで頂戴ね。」


 今確証を得た。コイツは悪魔だ。グランツェは皮を被った悪魔だ。間違いない

  

 だけど、今の俺にはこの状況で跳ね返すことができるだけの力がないことは確かなのでありがたく頂戴した。



 その後、俺はお昼になるまで頑張ってその本を減らした。

 ちなみに減らした数は10冊。簡単な本ということと、俺が知っているところを飛ばして読んでいたので結構すんなりと10冊読み終えた。これでも1/20。投げ出したい、、、



「アレクス、ローラン、そろそろ行くわよ。」

「おう。」

「わかったー。」

 そうして俺たちはレーネの家に向かった。


 


 そうして、みんなが集まってからルージュが初めに口を開いた。


「それじゃあ、みんなも集まったことだし王国の店までダッシュよ!」

「ちょっとルージュ、私どこの店か聞いてないんだけど?」


そうグランツェが言うと、ルージュは悪い笑みを浮かべた。


「私まだ誰にも言ってないもの。それは行ってからのお楽しみ。それよりもさっさと王国に行くわよ!」


そう言ってルージュは行き先を教えてくれなかった。

ガーベラはもちろんのこと、レーネもベンにおんぶしてもらって行ったが今回の責任は全て俺にあるとのことでアレクスは俺を抱えては行ってくれなかった。

 まぁ、この距離なら全然問題はないんだけど、、、



 そうして俺たちは各々の魔法を使ってヴァルガン王国へ向かった。

 みんな使う魔法はさまざまだった。アレクスは身体強化魔法でベンは精霊の力を使い、グランツェは風魔法を使ってぴょんぴょんと跳ねていき、ルージュは風と火で気球のように自身を浮かしながら飛んでいった。

 

 ん?俺はって思った?俺は魔法を使ったのは使ったけど一番使ったのは化学反応!やっぱこれが一番だわ。

 

 ちなみに俺は風魔法で自身の足下に薄い空気の足場を斜めに作った後、その少し後ろに水魔法で水を生成し、それを風魔法で覆った後、中の水を水素と酸素に分け、不必要な水素を取り出した後に外で覆っている風を圧縮させギリギリまで圧縮させた後に風の中に火魔法を放ち風魔法を解除。


 そう!水素爆発です。


 水素爆発で飛んでいった後、俺は風魔法で作った足場の下に火魔法を使いそのまま飛んで行きました。みんなは走って20分かかっていましたが、俺は10分でつきました。速すぎです。


 その後、俺は全員を煽ってやった。


「みんな遅すぎるよ。僕10分も待ってたんだけど?」

「なによあのとんでもない魔法は?後ろからすごい爆発音が聞こえたと思ったら、ローランがもう自分の前にいるとは思わなかったわ。」

「本当にビックリしたぞ、あんな魔法あったか?」

「あるかどうかは知らないけど、魔法の組み合わせだけでああいうこともできるんだよ。」

「すごいわねぇ。」

「本当にローランすごいよ。」

「あっ、ありがとう。」


 煽ってやったのに凄すぎて、全然効果がなかったらしい。

俺の爆発の感想を各々が言った後、ルージュが先陣を切って店の方まで歩いて行った。


 歩くこと15分、、




「ここって、、、」

「そうよ。イタリアン料理店!それじゃあ入るわよ。」

この世界にもあったんだ、、


 そうして俺たちは店の中に入っていった。


「いらっしゃいませ、7名様ですね。こちらはどうぞ。」


 そうして席に着いた後、各々がすぐにメニューを見だした。


「アレクスは何にする?」

「このピッツァが食べたいかな。」

「じゃあわたしこっち食べたいから半分こしましょう。」

「いいなそれ!」

「ガーベラも一緒に食べましょうね、、、ですローランは何にするの?」

「僕はパスタかな。」


そう言うと全員の視線が俺に向いた。

え?俺、別に変なこと言ってないよ?


「ピッツァじゃなくていいのか?」

「え?うん、いいけど、、、」


そう言うと、ルージュが俺の意見に口を挟んできた。


「ローラン君はここのピッツァを食べたことがないからそういうことを言うのね、、、絶対にピッツァの方がおいしいのに、、」


もうなんでもいいから、俺の食べたいものを食べさせてよ、、、

 そう思いながらみんなの食べたい品が決まったので店員を呼んで頼んだ。


 俺以外全員ピッツァだった。コイツらマジかよ、、、絶対パスタだろ。俺がおかしいみたいな目で見てたけど絶対パスタだからな!



 そして運ばれてくる間みんな各々が話したいことを好き好きに話して料理を待っていた。


 この待ち時間を使って今日の本の内容をお伝えするとしよう。

 この世界は全種族合わせて確認がされている分で、約15億人くらいだ。そして地球の大きさは、1/5くらいみたいだ。

 

 そしてその中の人族オンリーでほんの3.4カ国の戦争、、、そりゃ確かにすぐ終わるわ。長期のバトル始めるには物資と人的資源が必要だもんな、、

 こう冷静に見てみるとちょっとした小競り合いにしかならない気もしてくるな、、



 そんなことを考えていると、全員分の料理が届いた。それに各々が手をつけ始めた。


「ここのピッツァは最高ね。」

「本当ね。ルージュ、私にも頂戴。」

「いいわよ。はい、どうぞ。」

「ありがとう、これ美味しいわね。私のも食べてみてよ。とても美味しいから。」

「んー、本当ね。とても美味しいわ。」


あのベンですら食べ比べに参加している中、俺は1人でもくもくとパスタを食べていた。絶対こっちの方が美味いからな!


 そう思っているとレーネが「ちょっとだけ。」と言って口を開けてきた。

 なんだコイツ、、、かわいいな。


 そうして俺はレーネに一口やるとレーネがまたも口を開けてきた。


「僕の分がなくなるからおしまい。自分のピッツァを食べたら?」


そう言ったが皿を見ると、レーネはもう既にピッツァを食べ終えていた。

 胃袋にブラックホールでもあんのか?


「ローランは優しいから私にパスタをくれるって知ってる。私、ピッツァよりもパスタの方が好きかも、、」


おお!わかるか!このおいしさが。9歳にしていい舌をお持ちで。

 それに煽て上手だな。悪い気はしないからまぁ、やらんでもない、、うふふふふ。


 そう思いながら俺はパスタをレーネの口へと運んでやった。

 するとレーネはすごい手のひら返しをしてきた。


「まぁ、ピッツァの方が美味しいんだけどね。」

「……」


 お前には二度と食を与えてなどやらん。絶対だ。絶対にだ!

そう思っていたらまたも口を開けてきた。


「絶対にあげない。もう満足しただろ。」

「ごめんってローラン、謝るから後一口だけ。」

「絶対にあげない。」


そう言って俺がパスタを口に運ぼうとしたらそのパスタをレーネが横取りしてきた。


コイツ、、1週間は口聞いてやらねぇからな。


「ありがとうローラン!パスタ美味しかった。」

「……」

「ローラン?」

「……」


そうして食事を終えた後、王国の街を少し回っていたが俺は本当に一切口を聞くことなく家に帰った。


 このパスタの恨み、、、タダでは返さん!


 それから1週間、俺は本当に口を聞くことなく時間が過ぎて行った。

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