第49話

「こんにちは、奈那子先輩」


 日曜日のお昼。私は奈那子先輩の家の前に立っている。

 奈那子先輩は笑顔で手を振りながら「やっほー、小春ちゃん」と言ってくれた。

 凄く可愛い。

 

「上がって、上がって」

「お邪魔します」


 私は奈那子先輩に手招きをされ、家に上がる。


「小春ちゃんが私の家に来たの久しぶりだね」

「そうですね。中学生の頃に二回ほどお邪魔させていただきましたね」


 奈那子先輩の家にお邪魔するのは今回が初めてではない。

 一度目は、奈那子先輩に私が家で一人の事を話した時に、奈那子先輩が家に誘ってくれた。そして次の日が休みだったこともあってお泊りもさせていただいた。

 奈那子先輩のお母さんもお父さんも私に凄く優しくしてくれて、奈那子先輩が少し羨ましかった。

 夜は奈那子先輩と二人で初めて夜遅くまで起きてたっけ。

 色んなお話しをして、いつの間にか時間が経っていた。まるで悠斗くんとお話しをしている時のように。

 奈那子先輩とお話しをしていると、私にも奈那子先輩のようなお姉ちゃんが欲しいと思ってしまう。

 私は一人っ子だから、もしお姉ちゃんが居れば家には私一人じゃなくて二人で入れたのにって。

 

「一応私もネットで色々調べてみて材料とかは買ってあるから、さっそく作らない?」

「はい、作りましょ」


 私と奈那子先輩は早速キッチンへ向かい、今日の目的のフォンダンショコラ作りを始める。

 私は悠斗くんに、奈那子先輩は篠原くんにあげるバレンタインチョコレート。

 私も奈那子先輩もチョコレートを好きな人にあげるのは初めて。絶対に失敗はできない。

 悠斗くんは優しいから、失敗したとしても受け取ってくれると思うけど、でもどうせなら美味しいチョコレートを貰って食べてほしい。

 

「それじゃあまずはこれ付けて」


 そう言って奈那子先輩は私にエプロンを渡してきた。


「エプロンですか?」

「うん。え? 料理するときってエプロン付けないの?」

「あ、いえ。付けます」


 そう言って私は奈那子先輩からエプロンを受け取り身に着けた。

 普段はエプロンを付けることはないけど、今日は久しぶりに付けて料理をすることにした。

 

「それじゃあ、まずは市販のチョコレートとバターを合わせて湯せんで溶かしましょう。あ、水は絶対に入れちゃダメですよ」

「こ、これで大丈夫、かな?」

「はい、ばっちりです! 次にボウルに卵と砂糖を入れて混ぜます」


 私は奈那子先輩にフォンダンショコラの作り手順を説明しながら実践していく。

 奈那子先輩は料理も凄く上手だから直ぐに理解してしっかりとできている。


「どれくらい混ぜればいいの?」

「えーっと、ざらざらした感じがなくなるまでです」

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