大晦日

姫始めしよっか

 12月31日深夜。


「そろそろ日付が変わるね」


「そうね。色々あったわね」


「色々あったね。ねぇ百合香、日付が変わったらさ「おやすみなさい」ちょっ、寝るの早いって!」


 彼女は先にベッドに入り、私に背を向けてしまう。隣に並ぶと彼女は「どうせ『姫始めしよっか』とか言うんでしょ」と呟いた。


「そうだよ」


「どうせ毎年するんでしょ。このやりとり」


「ふふ」


 ゴーン、ゴーンと、除夜の鐘が鳴り響く中、彼女の耳にキスをして、指を絡める。「煩悩まみれね」と彼女は呆れるように呟いてこちらを向き、唇を重ね、私を転がして上に乗った。触れようと伸ばした手は絡め取られて、ベッドに縫い付けられてしまう。


「煩悩まみれなのはどっちだよ」


「あなたが誘ったんじゃない」


「私、されるよりする方が好きなんだけど〜」


「私だってそうよ」


「うっそだぁ〜」


 黙って。と、彼女は私の唇を塞ぐ。

 なんど鐘をついたって払えない煩悩に支配されて、私達は今年も、イチャイチャと絡み合いながら新年を迎えるのだった。

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