いろいろずるい姉妹のいろいろずるいお話

 一字一句違わずタイトルの通り、お姉ちゃん大好きな妹の視点から語られる、妹大好きなお姉ちゃん(天使)の物語。
 面白いです。なんかもういろいろずるいお話。百合、と言い切ってしまうとそれはそれで誤解を招きそうではあるのですけれど(恋愛ではないので)、少なくとも女同士の関係性というか構図というか、そのパワーを目一杯浴びせられる感じの作品。語り口ににじむ個性なのか、それとも作品全体の空気感なのか、とにかく〝このふたり〟を眺めていること自体がただただ楽しい、という、面白さの説明にとても困るタイプのお話でした。そう簡単には言い換えの効かない魅力。
 パワーのある設定が好きです。天使。そもそも天使ってなんなのさ、という、そこからしてはっきりとはわかっていないものの、でも「確かに天使だわこれ」としか言いようのない存在としての天使。設定そのものの力であると同時に、書き方やアプローチの巧みさでもあるのですけれど、この天使という設定のもたらす独特の引力、いったいどこに連れて行かれるのかわからないわくわく感がもう最高でした。
 この辺、読者に先を気にさせるポイントであると同時に、主人公の抱える葛藤に食い込んだ要素でもある。にもかかわらず、究極的にはただ「そういうもの」という面があって、つまり結局設定は設定、本当に凄いのはそこじゃないんだよーというような、いや本当なにを言っているんでしょう? とても面白い設定で、それがあるからこそ成立するストーリーなのに、でも物語としての魅力はその設定に依拠していない、というような。
 なんだかよくわからないことを鼻息荒く語ってしまいましたけれど、本当にどうとも言いようがないんです。読めばわかる。そのはず。単純にこの妹と姉を眺める目的で読めばいいと思います。もう微笑ましいというかふわふわしているというか、本当に見ているだけで楽しいので。
 彼女らの造形はもとより、関係性そのものに濃厚な魅力があって、しかしそれは決して単純に説明できるものではない。細かな言い回しや語り口、なにより行間に含まれる「見えない何か」の魅力が光る、クセになる感じの作品でした。お話の帰着点というか、物語全体のストーリーが好きです。そうくるか、っていうか、だいぶすごいもの書いてる感。面白かったー!