第17話 究極魔法は使える?

 グラッドと話していると教室の扉が開き、リタ先生が入ってきた。


「皆さんおはようございます。今日は午前中は魔法の座学をやって、午後からは模擬戦をやるからね」


 ちなみにアイスライト杯への出場者には俺もクレアも選ばれなかった。俺は裁判中であったし、クレアは大怪我を負っていたからしょうがない。


 一年生からは俺に破れたエーベルとクレアと準決勝で当たるはずだった相手が選ばれた。しかしエーベルは何故か出場を辞退し、結局一年生の4位と5位が選ばれることになった。本選は約1ヶ月後に行われるようで、学校をあげて応援にいくようだ。


 クレアが入院しているこの1ヶ月、俺は必死だった。学校ではリタ先生から魔法を学び、帰ってからはエミリーさんに剣を学んだ。夜は部屋で魔導書を読みあさった。その成果もあり、模擬戦では今までよりも圧倒的に相手に勝つことができるようになっていた。


 エミリーさん曰く、俺には剣の才能もあるらしい。しかし身体能力が物足りないともいわれた。筋力や体力が低いので剣士としては大成しないだろうとのことだ。


 しかし魔法では違った。有り余る魔力で魔導書に書いてある魔法やリタ先生から学んだ魔法は1つを除いてすべて使えるようになった。しかもその一つ一つは通常では有り得ない威力を発揮した。それは俺にとって自信になった。今、ボルタと戦えばきっと。


 ちなみにあの時俺が受けた魔法ファイアレイは上級魔法より上、高等魔法に分類されるものだった。今では俺も使うことができる。


 リタ先生の魔法に関する授業が始まった。正直学校でやる授業はつまらない。エミリーさんの家で必死に勉強していたので、学校で今やっているところはすでに理解しているのだ。しかし今日は違った。


「今日はオリジナル魔法について説明します」


 ん、なんだ? オリジナル魔法って言ったか。初めての聞く言葉だな。


「オリジナル魔法、ユニーク魔法とも言うわね。簡単に言うとまだ誰も使ったことがない魔法ってことよ。魔法はイメージが大切って前に説明したわよね。今まで誰も使ったこともない魔法をイメージできて、それを実現する魔力があれば、それはオリジナル魔法になるわ」


 そんな魔法があるのか……ボルタを倒して、全てがおわったら考えてみるのもいいかもな。リタは続けた。


「まぁ、オリジナル魔法って言っても、他の人に真似されたらオリジナルでは無くなるんだけどね。今ある魔法の数々も元々はオリジナル魔法なのよ。簡単に使える魔法は下級に分類されるし、逆に誰も使えなければ神級に分類されるわ」


 真剣にリタの話を聞いていると、後ろから肩を軽く叩かれた。軽く振り返るとグラッドが小さな声で話しかけてきた。


「そういうえは、レインは神級の魔法使えるのか?」


「いや、神級は無理だよ。それに究極魔法以上は威力が分からないから簡単には使えないよ。試したこともない。まぁ神級魔法なんてほんとにあるのかもわからないしな」


 実際、魔導書に載ってある高等魔法までは全て使うことができた。しかし、その上になる究極、神級魔法についてはほとんど記載がなく、究極魔法が1つ説明されていただけだった。だから使えないと言うよりは知らないのだ。


 高等魔法を使うときはエミリーさんに協力してもらい、エミリーさんの持つ広大な何もない敷地で試していたのだが、今では地形が変わってしまっている。究極魔法を使うと、どれ程の威力がでるのか分からないので試すことができなかった。


「じゃあ究極は使えるんだな。闘技場で腕輪をつけてればさすがにいけるんじゃないか」


 たしか闘技場には特別な結界が張ってあるから壊れないとか言ってたな。それに腕輪があれば、威力を十分の一に抑えることができる。


「今日試してみるか?」


 俺は少し悩んだあげく、やることに決めた。


 ん、グラッド? どうしたんだ? グラッドの顔がどんどん青ざめていく。俺も後ろから殺気を感じ前を見ると……リタ先生が鬼の形相で立っていた。


「そうかそうか、先生の話は聞きたくないか。そんな堂々と後ろを向いて話し込むなんて。今日は毎日つまらなそうにしている君の為に特別な授業をしているというのに無駄だったわけですね」


「い、いえ、そんなことは。非常に興味あるお話でした。ただグラッドが話しかけてくるから」


 俺は必死に弁明するが無駄なようだ。リタの拳が握られ、脳天に落とされる。


「いてぇぇぇぇぇー」


 頭を押さえて机にうずくまる。少しすると後ろのからも同じ断末魔が聞こえてきた。お前のせいだから仕方ないよなグラッド。




 午前の授業が終わり、俺はグラッドとトール、リリーと食堂へ向かった。最近はこの四人で昼食をとることが多い。クレアが入院してからは最初一人で食べていたのだが、トールが一緒に食べようと誘ってくれたのだ。


 トールも別のクラスメイトと食べていたのだが、俺が一緒に食べると分かると犯罪者と一緒に食えるかよと別の場所に移動した。トールは気にしないでと言ってくれた。俺のことを悪く言うやつは友でも何でもないと。トールもほんといい奴だ。


 そして、二人で食べているとグラッドが入ってきて、一人で食べていたリリーを俺が誘って四人で食べることになったのだ。


 食堂に着きメニューを選び、席に着く。並びは俺とグラッド、向かい側にトールとリリーが座っている。


 トールがリリーに話しかけている。


「リリーは今日もパスタとサラダなんだね」


「うん、これ大好きだから」


「お肉も食べないとスタミナつかないよ」


「でも、苦手だから……」


「そっか。まぁお肉食べ過ぎて美人が台無しになっても困るしね」


「もう……」


 リリーは顔を真っ赤にしてうつむいている。この二人怪しい。最初全然話すことができなかったリリーもトールとだけはよくしゃべる。グラッドとは全然話せないのに。まぁなんとなく分かるが。


 その二人を微笑ましく見ているとグラッドが話しかけてきた。


「おい、さっきの話なんだけどな」


「あぁ、究極魔法の話か? 午後からの模擬戦が始まる前に先生に頼んでみるよ」


「おう、楽しみにしてるぜ」


 その話を聞いていたのかトールも話に入ってきた。


「え、レイン究極魔法使うの? うわぁー俺、究極魔法なんて初めてのみるよ」


「い、いや。まだ使ったことがないから試すだけなんだけどね」


「大丈夫だよ。レインの魔力なら絶対いけるって、ねぇリリーもそう思うでしょう?」


「う、うん。レイン君なら使えそう」


「が、がんばるよ」


 俺達は急いで昼食をとり、四人でリタ先生にお願いに行くことになった。


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