第59話 エンディング


 少しの間均衡が保たれた部屋。


 そこにヘリコプターの轟音ごうおんが響いた。


 サーチライトが館を照らし出す。


 林三佐が差し向けたのだろう、瞬はすぐに理解した。


 

 降下部隊が庭に降りると30名の隊員が一気に館に突入してきた。


 1階に5人、2階に5人、地下に5人配置して残りの15人が3階へ上がってくる。


 3階のベビールームにいた7人の子どもはことごとく銃殺された。



 そして瞬と凛、最上隊長のいる大部屋へなだれ込んでくる。


 隊員たちはみなマスクをしていて顔は判別できない。


 最上隊長と撃ち合っていた男は3人の隊員に囲まれ射殺された。


 20式5.56mm小銃か。


 精鋭部隊だろう。


 少女はとびっきりの笑顔をした。


 まるで天使のような笑顔。


 140センチ、13歳くらいの女の子の笑顔は男子たちをめろめろにしてしまうだろう。



 その直後20式から放たれた無数の弾丸が少女を肉片に変えていた。


 老女だけは生かして捉えろという命令が出ていたのか隊員たちは銃口を向けたまま引き金はひかない。


 5人の隊員に囲まれて老女は館から連行された。どこに連れていかれるのだろう。


 

 隊員たちの司令官と見られる男が瞬の前に現れる。


 「神木瞬様ですか?」


 「はい」


 「市ヶ谷で林三佐がお待ちです、ご同行願えますか」そういうと半ば強制的に瞬と凛を輸送用ヘリコプターに乗せた。最上隊長はとりあえず館に残るらしい。


 ヘリコプターが上昇すると館が小さくなっていく。


 あそこで、そしてたどり着くまでに多くの犠牲があった。


 瞬と凛はお互いの手を握りながら様々な思いが溢れてきた。




 林三佐と直接会ったのはいつ以来だろうか。


 林三佐からは今回の契約は本日で終了するということと、ボーナスとして7000万円を支給することが説明された。


 初めて訪れた防衛省の硬いソファーに座りながら、まだ現実感が掴めなかった。





 9月1日


 凛と瞬は正式に婚姻届けを出して、木島凛は神木凛として生きていくことになった。



 魔女の謎は結局解けないままではあったが・・・・。



 Fin

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魔女のいない世界で 海乃 果(うみの はて) @uminohate

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