第40話 狼


 7人は腰を低くして小走りに館の裏口に取りつく。


 近藤がキッチンの裏口ドアに手をかけると何の抵抗もなくドアは開く。


 全員が滑るように館内に入っていく。


 近藤が地下通路があるであろう暖炉に近づく。


 確かに人が1人入れるスペースがある。


 近藤は迷いなく入っていく。


 最上から指示が出て、亜香里以下は待機となった。



 15分


 近藤からの返事はない。


 残った6名の間に共有の緊張感が走る。


 ”近藤から隊長へ聞こえますか?”全員のイヤホンに近藤の声が響き、ほっとする。


 ’こちら最上だ、内部の状況はどうだ?”


 ”かなり広いです、とりあえず最初の地点に戻っています、あと2分です”


 ”了解だ”


 2分丁度で近藤が戻ってくる。


 そこからはフォーメーション通りの順番で地下通路に入っていく。



 もう7月、外は32度くらいの暑さのはずだ。


 それなのに地下通路の中は肌寒い。半袖ではいられないくらいの体感温度だった。


 近藤が先行するが今回は凛を含めて女性が3名いるため進行速度はかなりゆっくりなものになっている。


 7本のビームライトが地下通路を照らす。


 明らかに人の手が加わっているような通路、防空壕だったのだろうか?


 一行は40分ほど何事もなく進んだ。



 最上隊長と近藤の間で頻繁に無線のやり取りがなされている。


 最上は小さなタブレットも携帯しておりそれに全員のGPS情報が反映されているようだ。


 大きな分岐もなく西へ西へと続いている地下通路。


 7名が地下通路に入ったのが午前10時50分。


 進むにつれてどんどんと気温も下がっているようだ。


 ’近藤から隊長へ”


 ”こちら最上だ、近藤どうかしたか?”


 ”前方なにかいるようです”


 ”何がいる?”


 ”野犬?じゃない・・・狼??”


 ”こちらへ戻れるか?”


 ”はい、かなりの数の狼がいます”


 ’こちら山田です、割り込みすみません”


 ”どうした?”


 ”後方からも狼の群れです、すごい数です”


 ’山田もこちらへ来れるか?”


 ”はい、合流します”



 最上隊長と依頼者クライアントの2人を中心にして7人は集まった。


 近藤が確認できただけで20匹前後、山田が確認したのも10匹以上いるようだ。


 いつの間にか完全に囲まれている。

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