第39話 7人


 7月10日の午前9時


 瞬と凛、それと陸海警備の隊長とメンバーが5名本社の会議室に集まった。


 瞬と凛は最上隊長以外とは初対面だったので、それぞれに自己紹介をした。

 

 落合社長は台湾にいるということで今回は立ち会わなかった。


 瞬と凛は黒を基調にして蛍光のラインが入ったペアルックのジャージを着ていた。


 陸海警備のメンバーは都市迷彩柄の上下を着ているが、全員空手の有段者というだけあって引き締まった体をしている。


 体にぴったりとした服装ということもあってか加賀副隊長と亜香里は胸が強調して見える。特に加賀は巨乳の部類に入るのだろう目のやり場に困る。


 「ここからはフォーメーション通りに動いて頂きます、近藤、真島、加賀、神木様、木島様、私、最後が近藤です、フォーメーションが崩れないよう、ご協力をお願いいたします」最上隊長が瞬と凛に説明する。


 そこから、地下3階の駐車場までその順番は忠実に守られた。エレベーターに乗る時もその順番だ。


 

 地下3階の広大な駐車場に近藤を先頭に7名が用意されているワンボックスまでたどり着く。


 携行品などはワンボックスにすでに積まれていた。


 運転をするのはどうやら山田の役目らしい。


 特撮モノの地下基地を思わせる駐車場から車が地上に出ていく。


 

 芝公園から首都高に乗り日野市を目指す。


 車は3列シートで運転席に山田、助手席に最上隊長、2列目右に加賀副隊長、中央に近藤、左に亜香里、依頼者クライアントの2人は3列目に2人で座っている。


 「林さんには報告したの?」社内の沈黙を破るように凛が瞬に確認する。


 「あ、ああ」瞬はどこかよそよそしい。


 「瞬?」


 「あ、うん林さんには朝、家を出る前に連絡しているよ、大丈夫」


 「林さんって林三佐のことでしょうか?」前列に座っている加賀が聞いてくる。


 「あ、はい、そのとおりです」瞬は緊張しているのか、ようやく話したがそれでもつっかえている。


 近藤が口笛を吹く。


 「お2人にはどう映っているのか分かりませんが、林三佐は防衛省の中でも重要な人物でして日本の情報防衛の最前線で戦っているような方なのですよ」


 「え、そ、そうなんですか?」瞬は加賀の言っていることの内容をどこまで聞いているのか分からないが、目線がつい胸元に行ってしまうのを理性で抑えようとしていた。


 隣にいた凛がスタンガンを押し付ける勢いで瞬の方をにらんでいる。


 それに気付いた瞬がそっと凛の手を握る。


 バカ、と思いながらも瞬の手のぬくもりを感じていた。


 1時間ほど走ると日野市に入り魔女の館付近までたどり着く。


 瞬の手を握っている凛の手が小刻みに震える。


 大丈夫だよと、反対側の手で凛の手を包むように握る。


 車は魔女の館の前をゆっくりと通り過ぎ、付近にあるコインパーキングに駐車する。


 ここから魔女の館は歩いて300メートルくらいだろうか。


 近藤を先頭にフォーメーションを組んで魔女の館を目指す。


 最上の指示が出て、全員無線機の電源をオンにしてイヤホンマイクを装着する。


 無線機の通信テストも行い問題なさそうだ。


 事前に打合せしていたように館の裏の方に回り込み次々と塀を乗り越えていく。


 凛は前回と同じように乗り越えるときに瞬が手助けしてくれた。


 建造物侵入になるのだろうか?看守者がいないので厳密にはならないのだろうか?


 最上隊長はそんなことが頭をよぎる。


 山田は食料や水が入っている10キロのバックパックを背負っている。


 そのバックパックは近藤が上から持ち上げて敷地内に搬入した。

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