番外編 隣国の兵士

 番外編 隣国の兵士

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 この戦争は楽勝だ。

 貴族平民問わず、全員がそう確信していた。


 数年前からずっと戦況は優勢で、あとはいかに犠牲を少なく、より利益のある勝利をするか。

 みなそれしか考えていなかった。


 商人も王国との戦争の勝利は当然で、そのうえでどう販路を広げるか。

 それを考え、戦争で戦果を挙げそうな貴族に取り入ることに夢中だった。


 何か前兆があったのか?

 わからない。

 少なくとも、俺みたいな兵士にわかる前兆なんてなかった。


 ただ、しいて言えば、ありえないほど戦況が優勢だったのがそうだったのだろう。


 戦争相手の王国は、見る見る間に疲弊していった。

 こちらが何かを仕掛けるでもなく、勝手に滅亡寸前なほどに追い込まれていた。

 だが、それは罠だった。


 仮にも何代も続いてきた、つい数年前まで劣勢でありながらも戦い続けてきた国なのだ。

 それが、ひとりでにこうなるなんてありえない。


 もちろん、誰も警戒しなかったわけではないはずだ。

 警戒し、それでも問題ないと。

 罠ではないとして、王国にそんな余裕はないとして、攻め込んだ。


 そして、後ろから刺された。


 我が国、総司令官ベスタ伯爵の裏切りだ。


 裏切るといっても、もう瀕死の王国についたわけじゃない。

 我が国には、楽勝ムードが流れていた。

 商人も貴族も戦後の利益にありつこうと、その結果伯爵は急速に力をつけていた。

 新しい国を、自分の国を作ろうと思えるぐらい。


『イリス』


 前王と血縁関係にあるとして、傀儡として用意された少女は確かに王族にしか装備できない我が国の王冠をその頭にのせていた。

 ……そう、王冠を。


 俺が知ったとき、すべては終わった後だった。


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 ーー○○新聞ーー


 この戦争は初期とは大きく形を変えた。


 王国と隣国の戦争は、王国が自滅し隣国の圧勝に終わるかと思われた。


 しかし、そうはならなかった。


 隣国は、ベスタ伯爵の裏切りにより、国家そのものが乗っ取られる。

 もちろん、そうすんなりとはいかない。

 集まっていた力を使って、血縁があるというだけの少女を使ってのごり押しだ。

 当然のように反発も出た、がそれすら力で抑え込んだ。


 隣国は、大きく力を落とすことになるだろう。


 そして、王国は新たに設立された『新王国』に国力のほとんどを吸い上げられた。

 国そのものが乗っ取られたわけではない。

 だが、国民、貴族すべてから愛想をつかされた王家の元には、王国には何も残らない。

 トップに立つはアルベード家、王国で実質的にトップ2の権力を持っていた公爵家。


 新王国は、士気を大きく上げもしかすると。

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