二話 新規ルートが開拓されました コンプ率??/150%

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 メティスさんだったかしら。

 あなたは素晴らしい才能を持っているわ、王子様特別扱いするのもわかるわね。

 でも、まだ少し経験が足らなかったかしら。


 王子様。

 いえ、クリュセイス。

 あなたは、考えなしが過ぎるわね。

 また同じことが起きるわよ。

 あの時と、奴隷法の時と同じことが……


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「メティス、メティス」


「あ、クリュセイス様……」


 そうだ。

 昨日私は失敗して……


「大丈夫かい? うなされていたようだけど」


「少し夢を見ていました。幼いころの夢、クリュセイス様に救ってもらう前の日々の……」


 そう、あの暗い世界から連れ出してくれた。

 私に名前をくれて、明るい世界を見せてくれた。

 大事な思い出。


「そうか……」


「あと、昨日のパーティーの夢も」


「……すまない。いろいろと手伝ってもらったのに、結局」


「謝らなきゃいけないのは、私の方です。私が余計なことしたから、クリュセイス様に恥をかかせることになってしまって」


 そう、私が失敗しただけじゃない。

 彼にも恥をかかせることになってしまった。

 公爵令嬢が笑い話で流してくれたからよかったけど、やろうと思えば……

 いや、今からでも。

 それぐらいの失敗だ。


「メティスのせいじゃないさ。私は結局、過去の失敗から何も学ばなかった」


「本当にすごい方だったわ。さすが本物の、クリュセイス様の婚約者ね」


 ……本当に、さすが本物。

 私が王子様のお相手になれるなんて、そんな妄想やっぱりありえないものだった。

 悔しいとすら思えない。

 それほどまでに圧倒的だった。

 住む世界が違う。


「……そうだね」


「クリュセイス様?」


「ケレス嬢は優秀だ。いや、優秀過ぎる。国の王になる者の妃として、申し分ないだろう。ただそこにいるのが私で本当に……」


「クリュセイス様は、始まって以来の天賦の才の持ち主です。王国に、あなた以上の国王の適性がある人はいません。今は厳しい王国を立て直せるのはあなたしか……」


「そう、王国は今大変苦しい状況に置かれている。私じゃなくて、彼女がトップに立った方が……」


「クリュセイス様……それは、だめです。国王になるために、厳しい日々を耐えてこられたのでしょう? それに国民が納得しません」


「国民か、私は昔ほど国民に好かれてはいない。それに昨日のケレス嬢を見ただろう。貴族たちを、敵だったはずの彼らの心を一瞬でつかんだ。国民だってきっと……」


「……」


 ……あの人は規格外だった。

 でも、あなたの口からそんなこと聞きたくない。

 王子という立場に自信と責任をもっていた、未来の希望を明るく語っていたあなたが……


「それに私は、今回のことを冷静になって思い返してみたんだ」


「思い返した?」


「そう。私は、国よりも君を優先していた。王子失格だ。でも、そんな自分のことをそれほど悪いとは思わなかった」


「え?」


「メティス、私と一緒に生きてくれるか?」


「……はい、喜んで」


 うれしい。

 はい以外の選択肢はない。

 でも、そんな苦しそうな顔で……


「……そうか」


「ですが、条件があります」


「条件?」


「私、幼い少女を救ってくれた王子様が好きなんです。国を愛する王子様の隣で、彼が愛する国を一緒に見守っていたいんです。私の夢叶えてくれますか?」


 国か私、どちらかなんて選ばなくてもいいんです。

 私はそれより、生き生きしたあなたのことを見ていたい。

 あなたのことは、私が支えます。


「……それは」


「今のクリュセイスは、将来の私たちの子供に誇れる顔じゃありません」


「そう、だな。君の夢のためにも、未来の子供のためにも、私は父として」


「頑張ってください。お父さん」


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