六話 悪役令嬢に染まった少女

 六話 悪役令嬢に染まった少女

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 ……イリスは死んだ。


 そう……死んでしまった。


 きっと本物ではないと、私ではないとばれてしまったのでしょう。

 アルベード家に対する何らかの要求があるわけでもなく、イリスが見つかるわけでもなく、ただただ時間だけが過ぎていきました。


 なぜイリスが……


 こんなことになってしまったのは、考えなしだった私のせい。

 それはわかってる。

 でも、父様がイリスに影武者なんて……


 そもそも、イリスが影武者をやるようになった理由って。

 もちろんイリスが私にそっくりだったこともあるけど、都合よくイリスが暇になったからだと思う。

 誰にも疑われることなく、きれーにフェードアウトできるタイミングだった。


 タイミングが悪かった。

 確かにそうかもしれない。

 もし一緒に学園に行ってれば影武者なんて、仮にやるにしても私が知らないなんてことは……


 あれ?

 イリスが学園に通えなかったのって、庶民だったからで……

 ルールは仕方がない。

 学園も長い歴史のある由緒ある場所ですから。


 あの子、貴族じゃなかったわよね。


 ええ、確かに天才だったわ。

 素晴らしい才覚の持ち主で、きっと王国になくてはならない存在に成長するでしょう。

 でも、その程度で破ってもいいルールなら……


 もともとあの子は好きじゃなかった。

 初めから逆恨み。

 あの子は何も悪くない。


 でも、人間だもの。


 わがまましちゃ悪いかしら?


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 イリス、あなたはいつも先に行ってしまうのね。

 会った時からずっと。


 イリスは私を天才だなんていうけど、私はずっとからかってるのかと思っていたわ。

 だって、あなたに、同い年のあなたに教えてもらってばかりだったんですもの。

 え? メイドたちのは完全におべっかだったもの。


 でも学園に行って、確かに私は天才なんだって理解したわ。

 余計にあなたがわからなくなってしまったけれど。


 イリス、私はあなたのことが大好きよ。

 世界で一番。

 すべてとイリスを天秤にかけても、私はイリスをとるわ。


 イリス、あなたにとって私はどんな人だった?

 私はあなたの特別になれましたか?


 イリス……


 イリス、あなたはなんで……


 全部イリスの手のひらの上で、どこかから嘘だよって、

 そんなの都合の良すぎる妄想かしら?


 本当は今すぐにでも会いに行きたい。

 でもあなたが悪いのよ。

 私はあなたが死んだこと、ちょっと信用できないの。


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「おい、ケレス嬢いったい何を……」


「あら、王子様。何をそんな声を荒げているのです?」


「説明しなさい。ことと場合によっては」


「怖い怖い。ただ高貴な学園に穢れが紛れ込んでいたので、お掃除していただけですよ。あなたが後処理してくれるというなら、お任せしましょうかね」


「……」


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