番外編 悪役令嬢と退屈な学園生活
番外編 悪役令嬢と退屈な学園生活
「ケレス様、ごきげんよう」
「ごきげんよう」
つまらない……
学園に入学して、もうそろそろひと月ぐらいになると思うんだけど、毎日が退屈でしかたがない。
そして何よりもイリスに会えないのがいやだ。
イリスのいない日常が、こんなに退屈で苦痛なものだとは思わなかった。
学園やめたいって言ったら怒られるかな?
「おはよう、ケレス嬢」
ああ、王子が来た。
いつからだろう王子のことを、こいつのことをうっとうしく思うようになったのは。
「おはようございます」
こいつは私の婚約者だ。
婚約は私が生まれる前から決まってたので、関係性でいえばイリスよりも昔からあった。
それに昔は王子のことを好きだったはずだ。
当時の私は王子以外同年代の男の子とあったことなんてなかったし、婚約者だといい聞かされていたからきっと結婚するんだろうなって思ってたし。
幼い子供同士だったけど、何でもできる王子にあこがれかっこいいと思った。
思えば幼いころの私は、すべての物事に対しどこか現実感がなくて夢見ごちで他人事だったような気がする。
王子に対しても周りがすごいというからすごいんだろう、きっと結婚するんだろう。
そして自分のことも王子には及ばないまでも、天才で選ばれた人間なんだろうと。
そんな中同い年の、しかも同性の女の子に手も足も出なかったときの衝撃は計り知れなかった。
私はその衝撃で夢から強制的にたたき起こされた。
今も王子のことはすごいと思うし、自分のことを天才だと思ってはいる。
でもそれは周りから言われたからじゃなくて、自分で見て考えたうえでそう思っている。
あのままだったら何かあったとはわからない。
ただ、今の方が人生を楽しめてはいると思う。
だからこそ、学園がつまらない。
……思考が一周してしまった。
この学園に通う子供は夢の中に生きている。
それは王子も例外じゃない。
そんな中夢から覚めた私は……
イリスはどうしているんだろうか。
私と同じように退屈してるんだろうか?
それとも、私のことをたたき起こしたように、周りの子をたたき起こして楽しんでいるだろうか?
イリスに退屈してほしくはないけど、私以外の子と仲良くされたらちょっと嫌だな。
ああ、イリスが男の子だったらよかったのに。
あんなのとじゃなくて、イリスと結婚して……
イリス・アルベード……
悪くない響きじゃないかしら?
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