五話 おいしい話に騙されて…… 前編

 五話 おいしい話に騙されて……


「私この子に決めました。はい、お金」


「おう、毎度あり」


 何件か奴隷商を回ってる中で、ピンっと来た子がいたので即決しました。


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 買ったのは十六歳の女の子だ。

 年頃だから結構値が張ったけど、まぁ気に入っちゃったから仕方がない。

 それに結構お金ももらってるしね。


「どうも初めまして」


「は、初めまして。えっと……私のご主人様は、いったいどちら様なのでしょうか?」


「ん? ああ、私があなたのこと買ったのよ。別に貴族様のお使いできたわけじゃないよ」


 そりゃそう思うか。

 奴隷買うのなんて、金持ちと貴族ぐらいだし。

 奴隷安いとは言っても、結局のところ人間だから維持費が結構かかるからね。


「も、申し訳ございません」


「別にいいよ。子供が奴隷買うなんて珍しいしね」


「そ、それで、私のお仕事は一体……」


「その前に、なんで奴隷になったのか聞いてもいいかな?」


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 昔の私は馬鹿だった、昔と言ってもほんのひと月前ぐらいの出来事なんだけど。

 あんな話に騙されるなんて。


 私の家は代々道具屋をやっていた。

 裕福というほどまではいかなかったけど、食べるものには困らなかったし、毎日が楽しかった。


 でも近くにうちより安い道具屋ができて、お客さんがほとんど来なくなっちゃって。

 家族で何とかしようと話し合ったんだけど、どうしようもできなかった。

 近くの道具屋は、私たちの店の仕入れ値とほぼ同じ値段で販売してたから。


 そして、その日私は偵察にその店を訪れていた。

 そしたら高級そうな服を着た、太ったおじさんに話しかけられて……


「あれ? これはこれは、隣の道具屋の娘さんじゃありませんか」


 その人はどうやらここの店を含め、いくつかの店を王都に展開しているすごい人らしかったのです。

 正直いろいろと思うところもありましたが、商売の世界は競争だしただ単に価格競争に負けてしまった以上何も言えません。


 ただ、顔に出ていたのだと思います。

 おじさんはちょっと気まずそうな顔をした後、もしかして私の店のせいで結構? と聞いてきました。


 私は半分やけになって、お客さんがいなくなってもうすぐにでもつぶれそうだと……


 おじさんはしばらく考えるような顔をした後、私についてくるように言って店の二階に上っていきました。


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