第7話 近藤くんが宣言した
とりあえず、朝の一件からわかることを整理しようと思う。
―――僕は、恐らく小野寺さんに利用されているだけかも知れない。
近藤くんの告白現場に居合わせてしまった僕は、男子というものはなんと妥協を許されない生き物なのかと改めて考えさせられていた。
男女間に平等なんて存在しない。それが真理であり、学校生活における全てだと思う。
とまあゆっくり考え事をしたいけど、今は近藤くんと会話中だった。
「誰だって、そうじゃないか?俺は黒歴史は作らない主義だ」
そうきっぱりと話す近藤くんはどこかズレている気がする。結局友達になってくれたので、彼と話す休み時間は退屈しなくていいんだけど、朝の件でちょっと思うことがある。
え、近藤くんって小野寺さんが好きだから告白したんじゃないの?
「自分から告白した癖に黒歴史にしたくない、とは?」
「自分の立ち位置をわかっておきたかったんだ。ちゃんとわかったぜ。俺にはまだ女性経験が足りないってな」
「そんな気持ちで告白したのかー。なんとまあ自分勝手な・・・」
恋愛は自分勝手の暴走と言っても過言ではないと思う。それでも恋愛したいと僕が思うのは、僕自身も自分勝手であることに他ならない。恋愛を経験してみたいというスタンスの僕からしても、近藤くんの気持ちは少しだけわかった。だけど、告白以外でもっと他にやりようがあったと思う。
「女性経験あるやつには俺の気持ちなんてわかんねーよ。ま、俺が幼稚な考えしてるってのもわかる。だけどな、手探りだったんだ。誰にも相談せずに、今日実行した」
「いい勉強にはなった?」
「全てのおまえのセリフが癪に障るぞ」
そんなつもりでは無かったんだけど、近藤くんの機嫌は僕が話すにつれて悪くなる一方だ。僕も君と同じで、何も女性のことがわからないはずなのに。だから、嘘でも女性経験あると思われてしまうことは恐ろしいんだ。
嘘のアドバンテージを身に纏って、何になるんだろう?僕のこれからに役立つんだろうか。
「僕みたいなタイプが、女性から遊ばれやすいのかな」
「付き合ってた時に遊ばれたのか?」
「女心はわかんないね、って話だよ」
「意味深に聞こえるのもすっげーうざいけど、北村ってあれだよな。雰囲気は無害そうなタイプだ。だから小野寺に遊ばれていたとしても驚かねーよ」
近藤くんから、なんだ北村は小野寺に振られたのか、っていうある種の赦しのオーラみたいなのが出始める。
というか、あんまり近藤くんは僕と小野寺さんと付き合っていたことに触れようとしない。本当にもう小野寺さんのことを忘れたがっているみたいに。
こっちとしては根掘り葉掘り聞かれるよりも都合がいいからいいけどね。それでも、話題だけは小野寺さんのことから念のために遠ざけておく必要がある。
「近藤くんの次の目標は何?」
「良くぞ聞いてくれましたっ!」
近藤くんから告白の時以来の大きい声が聞こえる。いきなり声のボリューム上げたりして、なんだよ。僕も話題を変えるにしてはおかしかったけどさ。
近藤は息を大きく吸い込み、自信たっぷりの表情でこう宣言した。
「恋のキューピット部を作るぜ!!」
え・・・・・・?
なんだろう、面倒くさそうな匂いがぷんぷんするよ?
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