第4話 友達が確かめに来た


「ねぇ、北村くん、ちょっといい?」


放課後、帰ろうとしたら、クラスメイトの女子に話しかけられた。


この人の名前、なんだっけ?まだ4月だから、覚えられてない。


「えっと、ごめん。僕、君の名前、知らないんだけど・・・」


「兵藤恋絵(こえ)だよ?覚えてね?」


兵藤さんか。どうしたんだろう?このクラスで女子に声をかけられるの、初かもしれない。


兵藤さんは金髪ポニーテール。小野寺さんに負けず劣らず、可愛い。胸はそこそこ。もし、普通の恋愛するとしたら、僕が好きになってもおかしくないくらい、タイプの子だった。


「兵藤さん、僕に用事?」


「うん。澪のことで」


うわぁ。まさかの小野寺さんの友達?きっついな。僕が話せることなんて、何もないのに。


「さっき、お昼に聞こえたよ?澪が元カノなんだって?」


「ああ、うん。そうだよ。昔、付き合ってたんだ」


「嘘だよね?澪に彼氏なんていなかったよ?」


はいはい。来たね。めんどくさいやつが。こういう時、どんな顔すれば乗り切れるだろう?


苦笑い、かな?


「何よ、その顔」


「僕がモテそうにないのは自分でもわかるけど、流石に嘘つき呼ばわりは傷つくなぁ」


「ふーん。いいよ。澪に直接聞いたほうが早いし」


そう言って、兵藤さんは教室を出て行ってしまった。


ふぅ、危ない危ない。まさか、小野寺さんの友達が来るとは思わなかった。違うクラスだったから、油断してたな。


それにしても、兵藤さん、可愛かった。


小野寺さんのおかげで、兵藤さんと接点ができた。僕が自力でいくら頑張っても、きっと手に入れることが叶わないやつだ。


もし、小野寺さんがちゃんと兵藤さんに説明して、僕が嘘つきじゃないって証明できたら、兵藤さんは謝ってくれるんじゃないかな?


そうしたら、もっと兵藤さんとお近づきになれるかもしれない。そんな期待感があった。


だけどそのためには、もっと嘘をつかなきゃいけなくなる。兵藤さんのことを僕が知らなかったことが、相当怪しいだろうし、下手に自分から墓穴を掘りに行くことはしないほうがいい。


やっぱり、小野寺さんと連絡先交換して良かったと思う。今のままじゃダメだ。もう二言くらい兵藤さんと会話しただけで、全部バレそうだ。


でも、これでいいのか?いつ、この嘘は終わるんだろう?だんだん、元の自分とかけ離れていきそうな気がする。


でも、僕は諦めたくない。まだ、普通の恋愛ができるはずだ。


兵藤さんのことを考えながら、僕はできるだけ誠実でいようと心に決めた。


あれ?でも、誠実って、誠実さって、嘘ついてまで出せるものなのか?


たぶん、違うよね。小野寺さんと約束した時点で、こうなるって、予想できたのにな。


・・・小野寺さん、やっぱりキツイよ。普通がだんだん、遠くなっていきそうだよ。

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