第八章:僕は幼女とセッ――する編

第40話 セッ――大作戦!

「おぎゃあアアアアアアアアアアアッ!」


 レインは叫んだ。

 ただし、現実ではない。

 レインの脳内世界でだ。


「ちょっと、声、大きい」


「何してるんですか! 何してるんですか!」


 レインの脳内には架空の公園ができており、そこで、幼女レインと17歳の大人レインが居る。

 幼女レインは砂場で山を造っている。その傍らを右往左往しながら大人レインが幼児退行したかのように叫ぶという奇妙な光景が広がっていた。


「なんで先輩にキスしちゃったんですか! 私だってまだなのに!」


「私は私よ、何を言っているの?」


 幼女レインは砂場に座り込んでパンツまるだしになるのを気にしないくらい幼女なのに、随分と落ちついた口調で話す。

 胸元にあるヒマワリの形をした名札には「りすぐみ ゆみ れいん」と書いてある。


「で、でも、私がしたくてしたわけじゃないし!」


「したくないの?」


「したいけど、時と場合とムードがあるし、それに、先輩の方からキスしてきてほしいし!」


「強引にキスされたかったなんて、知らなかったわ」


「強引になんて言ってないよォ?!」


 レインはかしこさが150になった時点で、脳内にもう一人の自分を造りだして会話することが可能なほどの知性を手に入れていた。


 しかも、現実世界の方では真幼女レインが「えへへ~。トッシュ、好きー」などと笑いながら抱きついて頬をスリスリしているのだ。


 トッシュのかしこさが20だということを考えれば、150もあるレインが人格を3人分同時に動かすことくらい、わけないだろう。


 脳内幼女が砂場の山に穴を掘り、向こう側へと貫通した。


「穴が貫通した……」


「あ、はい」


「トッシュとセックスしましょう」


「いきなりなに言ってるの、かしこさ150幼女の私ぃ!」


 幼女レインは別に記憶まで幼女時代になっているわけではなく、性知識は大人レインとも共有している。だから、どうやって大人の男女が愛を語り合い、赤ちゃんが生まれるのかもしっている。

 ただし、レインが見たことのある描写が過激でエッチな漫画から得た知識が豊富なので、どの程度正しい知識なのかは不明だ。


「肉体関係が先にある愛もあるはず。朴念仁のトッシュでもセックスすれば私の気持ちに気付くはず」


「昨日までそういう素振りがなかったのに、いきなり性交渉をしたがるなんて、ただの淫乱女だと思われるよ?!」


「大丈夫。いままでの貴方の奥手っぷりを思いだして。これは純愛よ。気持ちが抑えられなくなったの」


「じゅっ……純愛ですけど、今、外でトッシュ先輩の相手をしている貴方は不純幼女です」


 幼女レインは純愛とかセックスとか平然と口にするが、大人レインはちょっと恥ずかしくて言えないようだ。


「大丈夫。トッシュの前では純粋無邪気な幼女を演じているわ」


「そういうところが不純なんですよ」


「体でトッシュを誘惑したいのだけど……。

 ねえ、どうして大きくなった私は胸が小さいままなの?」


「かしこさ150でも分からないの?! 150って、ゾンビが元の体に戻る方法を自分で気付くくらいのかしこさなのに?! 私の胸が小さい理由、そこまでの謎なの?!」


「なにはともあれ、穴を貫通してもらう作戦よ。協力して」


「あ、はい」


 大人レインは幼女レインの前に腰を下ろし、反対側から砂山の穴を掘り始める。


「では本人の合意も得られたことだし、セックス作戦開始よ」


「セッ――?! 穴を貫通って、下品な意味ぃ?! それに、貫通するのは穴じゃなく――って何を言わせるんですか?! ねえ、貴方本当にかしこさ150なの?! 代わりに羞恥心のパラメーターも下がったんじゃないの?!」


「ただのかしこさ150じゃないわ。かしこさ150の幼女よ。羞恥心のない幼女は恋愛において無敵よ。淫乱メイドにだって負けない」


 幼女レインがニヤリと笑い、脳内世界は電源を落としたかのように、ふっと消えた。


 そして、洋館の応接間。


 幼女レインは幼女のように振る舞って、脚を開いてトッシュの太ももの上に座っていた。それはイタリアのカップルがイチャつくときの姿勢というか、だいしゅきホールドのような格好であった。


「ねえ、トッシュ、セックスしよ……」


 幼女は幼女のくせに体だけは17歳なので、それなりに妖しい色気を瞳に浮かべて、舌を出して上唇をペロッと濡らした。

 ピンク色の柔らかそうな唇が、ぬらっと輝く。


 トッシュは場の雰囲気にのまれ思わず、


「お、おう……」


 合意してしまった。

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