第28話


僕が想いを寄せるあの子は、ちょっとおかしい。


幼なじみであるその子は今、

桶を持って夜空の下に立っている。


「何をしているの?」


「あっ、見て見て、お星様の涙だよ」


「は?」


桶の中を見るとほんのちょっと水が貯まっていた。

確かに夜空には沢山の星が見えているけど・・・・。


「何でそれがお星様の涙なの?」


「だって、お星様が居る空から降ってきているんだもの。きっとお星様が降らせているんだよ」


「多分薄い雲があるんだと思うし、水がある惑星も存在するけど地球には届かないと思う」


「いいやお星様が降らせているに違いないよ。きっと泣いているんだよ」




この子はかなりおかしい。




「じゃあ仮にそうだとして何故泣いているのさ」


「わからない」


「そう・・・・」


「だから聞きに行こうと思う」


「は??」


「うん。決めた、私宇宙に行ってお星様に何故泣いているか聞いてみるね」


いやいやいやいや。


「何年かけて聞きに行くつもりだよ」


「何年かかってでもちゃんと聞いて来るから」



この子は物凄くおかしいことを言っている。



「だから待っていてね。今度はあなたが待つ番」


「ん?」


今度は。とは?


おかしなことを言いながらその子は夜空を指差す。


その指先の向こうに光るのはお月様だ。

今日も綺麗だな。



「・・・・月が綺麗、ですね」


「・・・・。」



あ゛っ。


つい口にしてしまったこれ、確かI love youを意味する言葉だとか言ってなかったか。


その子は何も返事しない。

が、少しうつむき加減になってもじもじしている。

何か様子がおかしい。多分この言葉の意味はわかっているだろう。


ええい、ままよ!!




「あなたを愛しています」


僕はその子に近付いてそう言った。



「・・・・そう。」


あれ、おかしいな。反応が薄い?

と、思った所でその子は顔を上げ、



「ずっと、待っていたんだからね」


目にいっぱいの涙を溜めてそう言った。



「嬉しい。やっと言ってくれた」


「僕が告白するのずっと待ってたの?ごめんね何か」


「だから次はあなたが待っていてね」



その子の足元に置かれた桶にはまたお星様の涙が落ちた。

僕にとっての一番星が落とした涙が。


「いや、僕を置いて宇宙に行くのはやめてほしいんだけど・・・・」


「いいえ。宇宙には絶対行く」


「えぇ・・・・」


やっぱりこの子はちょっとおかしい。

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即興速筆物語風味 @AlSKTm

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