第33話透き通る空

 人が動き始めた朝方、宿の前にファルークはいた。

「いくのか?」

「あぁ。遅いぐらいだ」

 ファンリーはあははと乾いた声で笑う。

「ユナンも元気で」

 ユナン?あれ聞き間違えか?

「ファルーク様も」

 二人は見つめ合い笑いあう。そして、ファルークはユナの手を握る。

「!」

 ほほえましい光景なのにファンリーはなぜかモヤモヤを覚える。

「ユナンはもっと食べろ。体力つけろよな。そして、りっぱな男になれよな。こんな変なヨウ国人に使われるなよな」

 ファンリーは変なヨウ国人と言われた事より、ユナが男と言った方が気になった。

「おまえな、、、」

「ヨウ国人は好きになれないがお前の事はそうでもない」

 ユナが男じゃないと言う言葉を飲み込んだ。ファルークはいい奴だ・・・。ほんとに。


 ユナの笑っている顔をみる。


 うん。ファルークの中でユナは男にしておこう。透き通る空の朝に自分の小ささに情けなくなりながらファンリーは空を見上げる。


「まぁ、別れていっても3ヶ月以内にはまたくるがな」

 ファンリーとユナは馬にのりルセの町を後にした。


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