第17話トグゥの町

 私を抱き抱えながらしばらく歩くと池がある広場とまった。

「ユナ、落ち着いたか?」

 さっきは足に力が入らなかったが入るようになっていた。

「はい。もう歩けるの下ろしてください」

 ファンリーはゆっくりとユナを下す。

「ここでユアンを待つ」

「ユアン?」

「ああ、さっき俺に声をかけたやつだ。俺の部下でここで調べてもらいたい事があって調べてもらっている」

「そうなんですね」

 調べたい事なんだろ。聞いてもわからないし、聞いてはダメなんだろうな~。

 いっぱい人が通るなんて初めてみた。山と農村しか外にでたことないからこんなに人がいる。きょろきょろみてしまう。

 そんなユナの姿をみてファンリーは笑顔になる。

「ここはトグゥと町なんだ」

「トグゥ?」

 ユナは自分が連れてこられた町さえ知らなかった。

「ヤカモズ帝国の中でヨウ国の国境沿いにあるまちなんだ。ヨウ国とヤカモズ帝国の物がいりまじったかんじかな」

「ユナ、あそこにいる女性みてみな」

 少し離れたところにいる女性をファンリーは指をさした。

「服装はヤカモズ式だが、生地はヨウ国のものだな。絹生地に花の刺繍はヨウ国のものなんだ」

 へぇ

「リー様、ヤカモズの布生地は?」

 そうだな~とあたりをみる。

「あぁ、あの男性かな三角のが重なった刺繍に少し厚手の綿生地はヤカモズかな」

「じゃぁ、あれはヨウ国の布生地?」


 しばらくユアンがくるまで二人はそんな会話をし続けた。


「タイチョー!」

 馬にのった疲れたユアンが現れる。

「ユアン、助かった。ありがとう」

 ユアンは馬からおりファンリーに馬の手綱をわたす。

「隊長、人使い荒いですよ。給料あげてくださいよ」

「兄上にいってくれ」

「ファン将軍ですか、ファン文官ですか?ファン将軍は口だけだし、ファン文官なんて経理の鬼だから無理じゃないですか!」

「あはは、酒ぐらいおごるよ」

 ユアンはなっとくがいかないとぶちぶちと呟く。

 そのやりとりをユナがじっとみているとユアンと目が合った。


 ユアンはユナをじっくりとみはじめた。

「癖のないますっぐの黒髪、雰囲気も何となく姫ににていますね。ヨウ国でもここまで似ている雰囲気はなかなかいないですね」

「ああ。俺もそう思う」

「それにしても、まっすぐの黒髪は目立ちますね。」

 え?そういえば通りがかる人がちらっと見ていくような気がする。

「あまり目立たない方がいいんですよね。長い布あります?」

「長い布?」

 ファンリーとユアンは目を合わせる。


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