第10話 話にならない

 ファンリーは部屋をでて階段したをおりていく。下は食堂になっていて娼婦たちは接客をして上の部屋で客をとる。酒場に近いため日が明けてすぐの朝は客はいない。こんな朝早くにでていく客はお金を払わず出ていこうとする客ぐらいである。

「これはこれは旦那様、昨夜はお楽しみいただけましたか?」

 うぉ、びっくりした。

 皺皺の濃い顔が階段をおりた所からぬっと表れた。

 女主は客から金をとり損なわないように階段のソファに腰かけている。

「ああ」

 ニマニマと手をこすり合わせてお金をうけとるポーズをとる。

 ファンリーはお金を出さずにソファに座り込む。

 お金をもらえなかったことにカッ目を見開きファンリーを睨む。

「いきなりで申し訳ないが身請けをしたい」

「はぁ。頭がおかしな事をいいでないよ。なにいってんだい」

 いきなりの事に女主はファンリーが客である事を忘れてしまう。

「あの子が気にいった。頼む」

 駆け引きと言う言葉も思いつかないファンリーは真っ向から女主に頼んだ。

 芸妓も仕込んでないのに初心さ加減にほれこんでしまったのかね~。うーん。毛色が珍しくて痣がとれたらその手が好きな客には受けるしな~。女主はじろじろとファンリーを見定める。

「ここで働いている子はみんな娘みたいなものだとおもってるんだよ」

 よよと泣きまねをする。泣き真似をしながら目だけファンリーをみる。さてどれくらい出せるかね。

 片手を出し手を広げ5を作る。

「金貨5枚でいいのか?」

 それなら今の手持ちでなんとかなる。でも金貨5枚かぁ。3か月分の給料だよ。

 女主はファンリーの返事を聞き金貨5枚なら簡単にだせるって顔だね。最近のヨウ国は羽振りがいいね。しくったね~。

「話にならないね。50枚だよ」

 え!とファンリーが青ざめた。

 すっかり泣きまねをやめて女主は商売人の顔になっていた。

「すまん。ない」

 くっそ、娼館の見受け金額なんてしるか!どうしよう、せっかくいい子を見つけたのに、もうかなり時間をかけているこれ以上姫の変わりを探す時間はない。無理だ。考えろファンリー。

「ないだとー!なんの話をしにきたんだい」

 そうだろう、そうだろう。そんな金はお大臣様でなければ簡単にだせないだろう。もとより売る気はないんだよ。とっとと今日の分の金を払って帰りなぼっちゃん。


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