第4話 洋館 ~ ありがとう ~

あの幻は何?


私の名前を


何度も何度も呼ぶあなた


あなたは……


一体……


誰……?




「なあなあ、今度、悠愼に内緒で肝試し決行しないか?」



正矢君は話を持ち掛けていた。




「えっ?アイツブチ切れたらヤバイじゃん!」



功太君が言う。




「大丈夫、大丈夫。またまた発見しちゃってさぁ~。凄いよー。洋館」


正矢君。



「へぇー、ブロンドヘアの女目的?」


と、伊都霞ちゃん。



「えっ!?うわっ!い、伊都霞ぁっ!」


と、正矢君。




「あんた達も飽きないよねー?まだ懲りないわけ?」


「だってさ、洋館だぜ?よ・う・か・ん」

「辞めた方が良いよ」

「伊都霞ちゃ~ん、そう言わないでさ~」

「ただでさえ、あの時、霊が憑いていたんだよ」


「そうだけどさ……でも大丈夫っしょ?」

「正矢っ!」




そして、再び肝試しが決行されようとしていた。




ある日の事 ――――



「ねぇ、凄い綺麗な洋館だね」と、私。


「お前ら何考えてんだ?」と、悠愼。


「ちょっと入ってみたくてさ」と、正矢君。


「入るって?不法侵入だろう?」と、悠愼。


「ちょっと付き合ってよ。昼間だから入っても大丈夫っしょ?」と、正矢君。


「俺は行かないからな!」と、悠愼。



そう言うと帰っていく悠愼。



「悠愼、帰っちゃったよ」と、功太君。

「大丈夫。俺達だけでも行こうぜ」



そう言う正矢君。


私達、5人は中に入る事にした。



「やっぱり昼間だと迫力ねーな」と、正矢君。


「確かに」と、功太君。


「夜に、また来ようぜ」と、正矢君。


「悠季、迎えに行くから準備しておいてね」


と、友夏。


「えっ?」


「だって、功太君が悠季の事、お気に入りみたいだし」



コソコソと友夏が、言ってきた。



私は正直、行く気はなかった。


だけど迎えに来るとなれば強制参加。



一先ず私達は、現地集合とし洋館を後に帰る事にした。



家に帰る途中。



「悠季」


「悠愼」


「お前行くのか?」

「……友夏が迎えに来るって……」

「……そっか……アイツら本当飽きねーな。あんな事あったっつーのに」

「……仕方ないよ……それじゃ帰るね」


「悠季、適当に理由つければ?」

「そういう訳にはいかないから」


「……だけど俺は行かせる気はない!あそこは昼間に行っても分かる位、霊が沢山存在してんたんだよ」


「下手すれば生命に……」

「そうなんだ……じゃあ……私で終わらせたら?」


「えっ!?」


「だって私、霊が憑き易いから何か起きるの目に見えてるし。あの廃校も私がいたから沢山の人が成仏出来たんだろうし……」


「悠季……」


「私は大丈夫だから」



私は走り去った。



「悠季っ!」



俺は引き止めたかった。



「……あそこは……悠季が行ったら絶対危険過ぎるんだよ……あそこに入った人間は…戻れないって……噂があんのに……」







その日の夜。


私は友夏の迎えで出掛けた。



「やっぱ昼と夜じゃ威圧感あるし迫力あるなぁ~」


正矢君が言った。



「……ねぇ……辞めよう……」と、私。


「何言ってんの?昼、下見したんだから大丈夫だよ。何もなかったじゃん!」



と、友夏。




≪みんなは私の体質知らないから≫

≪言った所で信じてくれないし≫



「でも、昼と夜は違うし。それに…嫌なの!別に特別な感情とかないけど…悠愼がいなきゃ私……廃校の肝試しも助けてもらったから、今、こうして存在してるんだよ!……きっといなかったら私は……それに…みんなにも霊が憑いていたのに…するの?」



「………………」



「それでもするなら悠愼を…連れて来てよ!呼び出してよ!」


「…悠季…」と、友夏。


「悠季ちゃん…」と、伊都霞ちゃん。


「……ごめん……行こうか……我が儘言ってごめん……」




私は一人洋館内の敷地内に入って行く。


そして、後を追うように功太君が入ってくる。


私達はゆっくりと5人は奥へと入って行く。




しばらくして ――――



【デテケ……】



ゾクッ



「………………」



「何か……寒くない?」と、友夏。


「そうか?」と、正矢君。


「そうだよ。悠季ちゃん、寒い?」


と、功太君が尋ねた。



「……う……」

「えっ?何?悠季ちゃん」

「出よう……」

「えっ?いや、まだ来て間もない……」


「聞こえなかった?出てけって……」

「えっ?や、やだな……冗談……」



次の瞬間。



洋館の中が揺れた。


「きゃあっ!」

「うわっ!」



【ヒッヒッヒッ……】


【マタ……ニンゲン……】


【タマシイ……モラウ……】


【ニガサナイ……】



みんなは逃げ出した。



「きゃあっ!」


転ぶ伊都霞ちゃん。



「伊都霞っ!」と、正矢君。


「伊都霞ちゃん!」と、私。



みんな伊都霞ちゃんの元に行き立たせる。


そして、逃げようとした、その時、私は身動きが

取れなくなった。



「悠季ちゃん!?」

「悠季!?」


「かない……体が動かないの!」



私をみんなが引っ張るも、びくとも動きはしな

い。



「逃げて……私の事は良いから逃げてっ!」


「でも」


「そうだよ!」



「みんな死んじゃうかもしれないんだよ!だから逃げてっ!お願いっ!みんなを逃がしてあげてっ!」



ブワーー



突風が吹きみんなが飛ばされた。



「きゃあっ!」

「うわあっ!」



【デテケ……】


【オンナノ…イノチ…モラウ】




「辞め…」



功太君の首が締め付けられる。



「辞めてーーっ!友達を殺さないでっ!」




次の瞬間。



霊が苦しみ出した。


【ダレダ…ジャマスルヤツハ……ダレダ…】



霊が飛ばされた。



ドカーーッ



【ウッ…】




「本当…お前ら…飽きねーな…」


「悠愼っ!」


「早くここを出ろ!悠季は俺が連れ戻す」


「でも…」


「聞こえなかったのか?出ろ!っつってんだよ!マジお前らも死ぬぞ!」


「えっ!?」


「霊を甘くみんなっ!ここはな…その辺にいる霊とは違うんだよっ!分かったら出ろ!振り返らずに…俺の神社にみんな逃げろ!」



4人は逃げた。



【ニガサナイ】


【ミンナ…コロス】



「誰が行かせるかよ!」



【ダマレ…ジャマスルナ…】



「邪魔してんのはどっちだよ!」



スッと消える霊。



「野郎っ!」




【ニガサナイ…ミンナコロス…】




「友達は…死なせはしない…」


「悠季?」


「悠季ちゃん?」



「みんな逃げてっ!」



「悠季ーーっ!お前は戻れっ!」



私は気付けば魂となっていた。


本体と離れてしまったのだ。


俗に言う “幽体離脱”



霊はスッと消えた。



「悠季ーーっ!」



≪あれ…?私……お花畑……≫




【いらっしゃい】



手招きされる私。


フワフワと心地好い風に吹かれる。



【楽しい所よ。さあいらっしゃい……仲間になりましょう】



≪仲間?≫



「悠季」


「悠季ちゃん」



≪私の仲間……待って……ここは何処?≫



「悠季っ!逝くなっ!」



声がする。



「誰?」

「悠季っ!死ぬなっ!」



≪死ぬ?私が…≫



「悠季っ!」



【さあ、いらっしゃい……おいで…お…い…で…オ……イ……デ……】



私を呼んでいた人達の表情や姿が変わった。


顔が焼けただれている人。


出血している顔の人。


色々な人が私を手招きしていた。





「きゃあああっ!」



目を覚ます私。



「テメーの居場所はここじゃねぇんだよ。霊界に行って修行して来なっ!悠季は…渡す訳にはいかねーんだよ!」




ドキン



≪…悠…愼…≫



スーッと消える霊。



「…ありがとう…」



女の人の霊が微笑みながら涙を流しながら消えた気がした。


そんな私も涙が流れた。


何故か私も悲しい気持ちになったからだ。


原因は、その時は分からなかった。




「悠季……大丈夫か?」

「今の…」

「えっ?」

「女の人…」




私の手を掴みゆっくりと起こす。




スッと両頬を優しく包み込むように触れる悠愼。




ドキン



「…好きな人を…」




ドキン


何となく分かるような気がした。


私の胸の奥が小さく切なく跳ねる。




「ずーっと待っていたけど……相手は…現れなかった……」



ドキン


胸が悲しくも切なく跳ねる。




「悲しい恋が…こういう結果を招いたんだよ」




私は涙がこぼれた。



「…悠…季…?」



私はゆっくり立ち上がる。


「悠季?おい…」



私はとある場所に行く。



「どうした?……写真……」

「導かれるように…昼間……見掛けたんだ…」

「えっ?」

「私の好きな人なの…そう言われた」




――― 昼間 ―――



「悠季ー?」

「悠季ちゃーん」


「みんなが知らないうちに、足がここに向かっていたから」

「あっ!いたいた」

「悠季、何してるの?」

「ごめん」




――― 夜 ―――


「みんなは知らなかった……言いもしなかったけど……私は何となく…彼女の気持ちが分かった気がした…」


「だから、あの時…あんな事」

「私で終わらせたらって……」

「……そうかもしれない……」



私達は帰る事にした。



その後、洋館は壊され白骨化した人骨が出てきたとニュースで報道された。



だけど疑問はあった。


好きな人を待っていた


結婚の約束でもしていたのだろうか?


彼は?


病気死?


事故死?


他の女性と?


その謎だけは


私の中に残されていた。

































































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