第3話 肝試し

~ 悠愼 side ~



「なあ、肝試し、マジする気か?」


俺は尋ねた。



「勿論!」と、功太。


「今更、怖じ気付いたか?悠愼」と、正矢。


「いや」と、俺。


「だったら良いじゃん!」と、正矢。


「…あそこ…マジヤベーんだぜ?お前らは良いけど……」


「お前来なきゃ意味ねーし」と、正矢。


「だったら!俺の言う事を必ず聞けっ!でなきゃ、俺は行かねーぞ!」


「分かった、分かった!」と、正矢。


「守るよ」



≪こいつら……マジ大丈夫か?≫

≪質の悪い悪霊いたらどうすんだよ……つーか……いてもおかしくねーんだけど……≫

≪自殺の名所。廃校……≫

≪どれだけの霊がウロついてんだか……≫





そして、肝試し当日 ――――




「同じ数字でペア組んで……」


と、功太君はみんなに説明する。



結果 ―――



友夏と正矢君。


伊都霞ちゃんと功太君。


悠愼君と私。



そのペアで行く事になった。




「えー、俺ってクジ運悪いかもー」


功太君が言った。



そして、一組ずつペアで入れ替わりで廃校に入って行く。



「うわー…半端じゃねーよ!」と、正矢君。


「もうマジ最悪だよ…」と、友夏。


「じゃあ、次、俺達」と、功太君。


「功太ーー、俺の女をしっかり守ってくれよーー。大事な彼女なんだらなっ!」


正矢君。


「大丈夫!」と、功太君。




そして、伊都霞ちゃんと功太君は入って行く。




「うわー…マジヤバー」

「ねえ、大丈夫?功太君。一人で逃げないでよ!」


「OKー!ていうか置いて戻ったりしたら正矢にキレられるし!」

「とか言って逃げそう……」

「俺、そんなに頼りない?」

「ないっ!」

「うわー…マジショックなんだけど…」





そんな中、外で待機している私達。



「ん?何?悠愼、何か言った?」


と、正矢君が言い出した。



「何も言ってねーよ!」と、悠愼。


「マジで?本当に?」と、正矢君。


「言ってねーから!つーか……声が聞こえたとか霊と波長が合った瞬間だから!」



「ちょ、ちょっと、二人共そういう会話辞めてもらえるかな?」


友夏が言った。



「………………」



「ところで悠季?さっきからずっと黙っているけど大丈夫?」


「…えっ…?……あ…うん……でも…正直…もう帰りたい気分…」

「駄目だよー。私達、恐怖を味わったんだから」

「…うん…分かってる…分かってるよ……」



私の様子を見つめる悠愼。



≪大丈夫か…?≫

≪今の所、問題ねーけど……憑かれ易いからな≫

≪俺で太刀打ち出来る程度なら良いけど……≫





そして伊都霞ちゃんと功太君の方では



「ねえ……今…何か音しなかった?」

「音?俺は聞こえなかったけど」

「気のせいだったかな?……取り合えず…急がない?」


「それは構わないけど」




二人は足早に去り、出てきた。





「もう!無理無理!途中、変な音がして」


と、伊都霞ちゃん。



「ラップ音ってやつだな?」と、悠愼君。


「えっ!?じゃあ…やっぱり…」


と、伊都霞ちゃん。



「ラップ音?」と、功太君。


「音はそれぞれだけど…つーか……俺達、今から行くのにさ辞めろよな」


「あっ!悪い」

「ごめん……」




≪ラップ音……場合によっては怒りか?≫

≪それともイタズラか…≫



「悠季ちゃん、大丈夫?俺が変わりに行こうか?」


と、功太君。



「ありがとう……でも…私だけ行かない訳にはいかないから」


「じゃあ行くぞ!」


「…うん…」



私は重い足取りで行く。




「…悠季…大丈夫かな?顔色悪く見えたの気のせいかな?」


友夏は心配した面持ちで言う。



「暗いから、そう見えたんじゃないの?」


正矢君は言った。



「そうかな…?…だと…良いけど……」





そんな私達は中に入った。



「悠季、大丈夫か?」



ドキン



「…えっ?」

「いや…お前にちゃん付けってイメージ俺にはねーから呼び捨てにしたけど。嫌なら辞めるけど」


「異性から呼ばれたの初めてだったから驚いただけ。大丈夫」


「じゃあ、悠季な」

「うん…」


「…ここ……マジヤベーな……すっげーいる」

「えっ?やだ……辞めてよ……」

「仕方ねーじゃん!物心ついた時から見えていたから」


「えっ?」


「みんな見えていないんだなぁ~って霊とぶつかったりして。霊って本体ねーからさ…リアルな霊とも、16年間沢山会ってきた」


「そうなんだ……」




信じない訳ではなかった。


彼は沢山の霊と遭遇している。


そんな私は憑かれ易い体質だ。


霊が見えているという事は、良くも悪くも色々な感情や波動や波長と出会しただろう?


彼は一般的にいうと霊感があるというだけで見える分、私よりは良いかもしれない。


そんな私は憑かれ易い体質で見えもしない。


一番質が悪い。


原因不明に操られて死ぬ事にもなり兼ねない。




私達は校舎を廻る。




パチン



パチン



ビクッ



私は悠愼の腕を掴む。



「悠季?」

「あっ……ごめん…」



私は離そうとした。



「離さなくて良い。そのままで良いから。しっかり掴まっておきな。何か感じたんだろう?」



私はゆっくり頷いた。




ピシッ



ピシッ





【…デ…テ…ケ…】



ゾクッ




「…悠…愼……今…声…」

「えっ…?」



「…………」



【…デ…テ…イ…ケ…】


「…出ていけ…って…」

「…聞こえたんだな…」



私は頷く。



【デテ…イケ…デテイケ…デテイケ】



声はどんどん大きくなっていく。



【デーーテーーイーーケーー】




私は耳なりと頭痛がして意識が遠退いていく。



「悠……愼……寒い……寒いよ……」

「悠季っ!おいっ!しっかりしろ!」



私は気を失う。




「悠季っ!悠季っ!冷て……悠季っ!」






一方 ―――



「あれ?悠季ちゃんが、いなくなっちゃったよ!」


と、伊都霞ちゃん。



「あーっ!アイツっ!」と、功太君。



―×―×―×―×―×―×




「おいっ!悠季っ!コイツが何したんだよ!コイツを戻せよ!俺達が遊び半分で来たのは確かに悪いよっ!でも…コイツは好きで来たんじゃねーんだよ!コイツの体を魂を返せよっ!」





【…デテイケ…オンナハ…コロス…オンナハ…ワタサナイ…カエレ…オンナヲオイテカエレ…】




「…あー、そうかよ…だったらテメーらを霊界にでも送ってやろうじゃねーかっ!それとも…地獄か?とっとと成仏しやがれーーーっ!」



ブワーーッ


ドーーン


風と振動が、辺りに拡がる。



【あ゛ーーーーっ゛】


【う゛わーーーーっ゛】



奇妙な呻(うめ)き声が響き渡る。



「うわ…な、何……この……奇妙な呻き声は……」


と、功太。



「いて……頭痛ぇ……」と、正矢。


「耳が痛い……」


伊都霞と友夏



4人は頭や耳を押え座り込む。





目を覚ます私。



「悠季…?」



ドキン


心配した面持ちで私を見つめる悠愼の姿。



「…悠……愼……」

「……平気か……」



両手で両頬に触れ、優しく包み込む悠愼。



「…私…」

「立てるか?」

「…うん…」



私は差し出された悠愼の手を握り起き上がり立ち上がる。



私達はゆっくりとみんなの元に戻る。




「悠愼っ!お前…何したんだよ!」



功太君が悠愼の胸倉を掴み食って掛かった。


グイッと功太君から掴まれた胸倉を離す悠愼。



「誤解すんな!こっちは大変だったんだからな!とにかく、みんなは俺の所に来て貰うからな」




私達は廃校を後に帰る。


お互いの状況を話ながら ―――



そして私達は悠愼君の父親から御払いをして貰う。


成仏しきれていない霊がみんなに憑いていたみたいで ――――



































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