第2話 大金

 冒険者ギルドに辿り着き、受付嬢のところに向かう。

「こんにちは。レインです」

「あれ?レインさん生きてたんですか。」

「生きてましたけど、やはりオーウェン達が俺のことを死んだことに?」

「そのこともありますし、報告があってから日付も経っていますから受理されてしまいました。だから、今ギルドにはレインさんの籍がない状態です」

「じゃあまた冒険者になるとしたらどうなりますかね」

「そうですね。また最初からのスタートとなりますので、Gランクからのスタートとなりますね」

「経験済みなのでFランクからとかにできませんか?」

「システム上、例外は作れないので出来ませんね」

「そうですか。わかりました。じゃあ、冒険者登録をお願いします」


 Gランクからのスタートか。Gランクの活動は基本的に雑用だ。誰もやりたがらないようなドブ掃除や、薬草採取などの地味な活動がメインとなる。また、Gランクは1ヶ月間はランクアップできない。なぜなら、冒険者としての経験を積むため、これらの雑用は誰かがする必要があるため、この二つの理由が主である。

 だから、Gランクからのスタートは少し嫌だったのに。仕方ない。

 とりあえず、湖で拾ってきたもの含めてここで買い取ってもらうか。

 新しいネームタグを受け取り、ギルドに備え付けてある買取場に向かう。

「すみません。買い取ってもらいたいのがたくさんあるんですけど良いですか?」

「はいよ。それじゃこっちにおいで」

 俺は手招きされて、カウンター横の扉から入って奥に向かう。

「それじゃあここに出しておくれ」

 言われた通りに出していく。湖のそこに沈んでいた装備品や、魔物の残骸などを出していく。

「あ、あとこれも買い取りってできますかね?」

 そう言いつつ、マッピングした地図を見せる。

「これは、受付のところに持っていけ。ここではそういうのは買い取ってないからな。あと、これをもっとけ。2時間ぐらいかかるから、その後来てこれを見せてくれたら金を渡すぜ」

 彼はそう言いながら、番号札を渡してくる。

「わかりました。また後ほどきます」

 俺はそう言って買取場を後にする。そしてまた受付のところに向かう。

「レインさんどうされたんですか?」

「いや、こういうのはここで買い取ってくれるって聞いたから」

 俺はそう言って、地図を渡す。

「これは何ですか?」

「これは36層目の地図です」

「ほんとですか?どうして持ってるんですか!」

 受付嬢が軽い前のめりになりながら質問してきたため、少し後退りしながら答える。

「い、いや、崖から落ちた先がここで、帰り道を探しながらマッピングをしてたんだよ」

「なるほどですね。わかりました一旦これは預からせてもらいます。金額はギルドマスターと相談して決めます。受け渡しは買取の時と合わせておきますので待っておいてください」

 そう言われたので、ギルドに隣接する酒場で暇を潰すことにした。

 俺の時間感覚がずれてなければ、3日ぶりに食べるまともな飯だ。突き落とされてからは、濡れた干し肉ばっかり食べてたからとても楽しみだ。

 3人分のご飯を頼んでも軽くペロリと食べ終えてしまった。時間的にはまだゆっくりしても大丈夫かな。

 ゆっくりしていたら、見知った顔がやってきた。

「レイン!お前生きてたんか!」

 俺と同じ時期に冒険者を始めた、レオに話しかけられた。

「ああ。運良く生きてたぞ。」

「オーウェン達が、モンスターの攻撃で崖に突き落とされたって言ってたけど、元気そうだな」

 なるほど、そういう設定か。この件で拗らせるより、さっぱり縁を切った方がいいから否定はしないでおこう。

「ああ、俺のジョブのおかげで助かったんだ」

「お前のジョブ珍しいもんな。何ができる全く予想つかんからそんなこともあり得るよな」

「俺も予想つかなかったけど、命の危機に瀕して新たな可能性を開いた気がするよ」

「マジか!俺もいっぺん死にかけるかな」

「それも良いかもな。よくある英雄譚とかもそうやって強敵を倒してるかもしれないしな」

「それはあり得るな」

 この他にも落ちた後の話や、ランクの話などの雑談をしていると、受付嬢が呼びにきた。

「レインさん、ギルマスが呼んでるのでこっちに来てください」

 レオにどうしたんだという顔をされて、俺は横に首を振った。そして席を立つ。

「じゃあな。お前は死にかけるなよ」

「お前こそ、2度と死にかけるなよ。今度は死ぬぜ」

 と言い合いながら別れを告げた。そして、受付嬢の後についていく。

「どうして俺は呼び出されたんですか?」

「それは直接ギルマスに聞いてください」

 ギルドマスター室前に辿り着き、受付嬢がノックする。

「レインさんを連れて参りました」

「入って良いぞ」

「失礼します」

 受付嬢に続いて、部屋の中に入る。 

「レイン君、君にはたくさん質問させてもらう」

「わかりました。それが俺を読んだ理由ですか」

「そうだ。じゃあ早速聞かせていただこう。まず君が落ちたのは19層目にある穴か?」

「俺の記憶が正しければそうです」

「では、君が持ってきたこの地図は36層目とは本当か?」

「はい。それは階段のところにあるワープ装置で確認しました」

「そうか。では、君は17層分落ちた感覚はあるか?」

「すみません、それは曖昧です。落ちてる時、頭の中真っ白だったので」

「わかった。じゃあ、その層の特徴とどんなモンスターがいたか教えてくれるか?」

「基本的に明かりが何一つない、洞窟タイプのダンジョンでした。そして、ここの少し広いところに湖があって、この上に落ちて来ました。この湖の水はこの水筒の中に入ってます。俺のジョブスキルで移動していたので、罠とかは確認できなかったですけどあるかもしれません。あと、モンスターは高さ5mぐらいの一つ目の巨人、狼とゴブリンが協力してる群れ、擬態しているタコっぽい生物、大きい蝙蝠みたいなモンスターが飛んでました。が大量に徘徊していました。あと、5の倍数じゃないのにボス部屋らしきものがあり、その部屋の扉の前にライオンの体に蝙蝠の羽、尻尾の位置に蛇の頭がついたモンスターが鎮座していました」

 俺の言葉を一言一句逃さぬように、受付嬢がメモをとっていた。ギルマスは目を瞑っており、考え事をしているようだった。

「君の移動に使ったジョブスキルを見せてくれ」

「わかりました」

 俺は返事と同時に影に潜り込み、ガラスを通ってベランダに立つ。ベランダからノックをするとギルマスは驚いた表情をして、俺を中に入れた。

「よしわかった。これが君に渡すお金だ」

 ギルマスはそう言って、引き出しの中から小袋を取り出して、投げてきた。

「ありがとうございます。って多くないですか?」

「多くない。それは情報料と下で行っていた買取料を合わせた物だからな」

「それでも多い気がするんですけど」

 俺が口答えすると、ギルマスは受付嬢にアイコンタクトを行った。

「レインさんに渡される金額の内訳は、情報料が金貨1枚、買取料が金貨1枚と銀貨5枚で、合計2500リースです。また、情報が正しいとわかった場合、追加で金貨1枚が支払われます」

「えっ!何でそんなに多いの!」

「レインさんが持ってきた情報は最前線の冒険者達に役立つ物だからです。また、持ち込んでくれた素材は高ランクモンスターのもので、性能が高いためです」

 俺はギルマスの目の前というのに、小さくガッツポーズを取った。

 ダンジョンから帰った日、俺はちょっとした金持ちになった。


**********設定**********

リースはこの世界のお金の単位。銅貨1枚が1リース。


この世界の貨幣の価値は日本的にいうとこんな感じ

銅貨・・・・・100円

鉄貨・・・・・1000円

銀貨・・・・・1万円

金貨・・・・・10万円

王国金貨・・・100万円

白金貨・・・・1000万円

王国白金貨・・1億円

王国○○は、国の紋章が彫られており、価値が保証されている。偽造不可。


ちなみにこのダンジョンの最前線は30層です。

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