影に潜む冒険者

坤道

第1話 落下

「レイン!こっちにきてこの穴照らしてくれ、暗くて底が見えないんだ。」

「分かった。すぐそっちへ行く」

 リーダーのオーウェンに呼びかけられ、俺は討伐した魔物のドロップ品の回収をルシャに任せてすぐにオーウェンの元へと向かう。

 手に持っていたランタンをかざして、穴の底を覗く。その直後に背中に衝撃を受ける。


 頭の中が真っ白になる。しかし、オーウェンが隣にいたことを思い出し、注意を促すために振り返ると衝撃の原因を理解する。

 それはオーウェンだった。

 さらに、横にいたユーリが水弾を飛ばして振り返った俺のランタンを破壊した。

 俺は訳もわからず、闇の底に落ちていく。


 穴の底は地底湖らしい。俺のスキルが解除されて、影の中から出た荷物がクッションとなり、意識を失うことなく水中に落ちる。

 濡れた衣服を見にまといながら陸地にあがる。


 俺のジョブ「影使い」は影を用いて、様々なことができる珍しいジョブだ。だから、光がなくなり影を失ったから、影の中に収納していたものが俺の体から溢れ出てしまった。

 ユーリがランタンを壊してくれたおかげで、なんとか一命を取り留めた。まず、あいつらが俺を落とさなければ命の危険性はなかったんだけど。

 最悪なことに、湖に落ちたせいで、保険として入れていた木や、蝋燭、マッチなどが濡れて火がつけれなくなってしまった。

 そのせいで光源を作れなくなった。俺は無力な人間になってしまった。

 服が濡れてるせいで寒い。影の中に保管していた食料も湖の底に沈んだせいで食料的心配もある。

 なぜこんな状況に陥ってるのだろうと、考えることしかできない。しかし、落とされた理由は分からないが、落とされる予兆があったことは分かってきた。

 先月、マジックバッグが手に入ってから、俺の扱いは変わっていたような気がする。


「マジックバッグ手に入ったんだから、重要なものはこっちに任せてほしい。僕がリーダーだから」

「別に今まで俺の影の中に入れてたし、問題ないんじゃないか?」

「だめだ!……そうだ、1人でしか出し入れができないというのは不安すぎる。だからマジックバッグに任せてくれ」


 よくよく思い返すとそうに違いない。その他、雑多なものを俺に任せられるようになっていた。

 俺には荷物運びとしての役割しかなかったのだろうか。後ろから影を使ってサポートしていたのだが、そこは役に立たなかったのだろうか。

 そんなことを考えていると、重い足音が聞こえてきた。

 そういえばここはダンジョンだった。モンスターが近くにいるのか。

 足音は近づいてきて、その正体が一つ目の巨人ということがわかる。

 今見つかったら死んでしまう!死にたくない!

 その場で伏せて、気配を消そうとする。


 その時、頭の中を巡るのは少し前の光景。

 どうして俺はあの時崖付近まで行ってしまったのか。オーウェンが暗くて見えないからと俺を呼んだ。

 なぜ?俺がランタンを持っているから。

 どうしてランタンを求めた?暗くて見えないから。

 つまり、明かりが有れば見えるということか。

 俺はさっき、どうして足音の正体が"一つ目の巨人"だとわかったんだっけ?それは見えたから。

 見えたということは明かりがある。


 つまり、影が存在するはず。


 巨人はすでに俺を見つけていたらしく、顔を上げると、目の前に巨人の手が迫ってきていた。なぜかスキルを使える自信が出てきて、咄嗟に影の中に潜る。

 巨人は突如消えた俺の気配を探るためにあたりを見回している。

 その間、俺は影に潜ることができた喜びと、困惑が織り混ざってなんとも言い表せない感情になっていた。

 そしてまた考える。

 どうして、影が使えたのだろうか。ここでは元々使えたのか?それはない。

 なぜなら俺のジョブを授かって約6年間の人生と、実際に影の中にしまっていた荷物が出てしまっていることが証明している。

 ではなぜか。それは俺の考えが変わったからだろうか。多分そうだ。俺は無意識的に影が使えないと思っていたから、影が使えなかったのだろう。そうじゃないと説明がつかない。

 一つ目の巨人は、湖の周りから離れて、出てきた道とは別の道に入っていった。

 影から上がって、自分の足元を見てみる。暗くて自分の影が見えないが、自分の影を動かしている感覚はある。

 他に今までできなかったものができるか試してみることにした。その結果、今まで触れている物の影の面積分しか自由に動かせないと思っていたが、そんなことはなく、自分の影を目一杯に広げるとだいたい半径2mの円ができて、目一杯に伸ばすとだいたい5m先まで伸びることがわかった。濡れたコートを広げて影の面積を増やしたつもりでも、影が伸びたり広がったりした感覚はなかった。


 とりあえず、今気になることは調べ終わったし、ダンジョンから脱出しよう。

 落ちてきた穴を登るより、階段付近にあるワープ装置を使った方が楽だよな。

 モンスターにエンカウントしないように、影に潜りながら移動するか。最初に行く方向は、一つ目の巨人が出てきた方向に行ってみるか。

 その前に、湖に落ちている荷物を拾うか。

 湖の底には、俺と同様に落ちた冒険者の荷物や武器やらが沈んでいた。

 その中に、防水加工された紙とペンがあった。おそらく穴の底の階層をマッピングしようとした冒険者がいたのだろう。

 迷わないためにもマッピングをしつつ、階段を探そうと思う。


 選んだ道がハズレだったのか、自分の運がないのかわからないが、この階層のマッピングを終えてしまうほどに歩き回ってしまった。

 ようやく階段を見つけ一安心する。ほのかに光るワープ装置に手を添えて、1層目と頭の中で選択する。

 周囲の明るさが変わり、潜ったダンジョンの1層目に戻ってきたと感じる。ダンジョンを出た後は、自分がどういう状況になっているかを知るために、まずギルドへ向かう。


*****設定*****

主人公「レイン」が使えるジョブスキル

操影そうえい・・・自分の影、又は接している物の影を自在に操ることができる。立体化させることもできる。

貯影ちょえい・・・影の中に物を出し入れすることができる。時間は停止せず、生物は入れることができない。

影纏かげまとい・・・影を物に纏わせることで色々な性能を上昇させる。また、自身に纏わせると身体能力アップ。

潜影せんえい・・・影に潜ることができる。使用中は他のスキルが制限される。


パーティーメンバー

オーウェン「勇者の卵」♂

ユーリ「水属性魔術師」♂

ルシャ「弓使い」♀


レインが見つけた真理とは、「ジョブが決めている限界よりも下に自分自身で限界を作っていて、ポテンシャルを発揮できていなかった」です


****あとがき****

読んでいただき、ありがとうございます。

私はこれが初めて書く小説です。

詰められてない設定など至らない点が数多くあると思います。

ですので指摘をどんどんお願いします。

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