第34話 テントと森とダンジョンと。

俺はその後、テントを買いに行ったり食料品の調達などをする事にした。


食料品は何時も買っている商店街で色々と仕入れをする。

あの港町まではブラッドの足なら一週間も有れば行けるだろう。それも考えて品物を揃えていく。

問題はテントだな…リカルド商会で調達しても良かったのだが、然程良いテントで無くとも問題は無い。何故なら普段は馬車で寝泊まりするからである。しかし今回はジェシーと一緒の旅だし、馬車にはジェシーに寝てもらうつもりなのだ。そうなると俺がテントに寝る訳だが、今回の後でテントを使う機会は少ないと考えると、流石に良い物を買うには至らない。中古か安価な物でも問題は無い訳だ。


俺は昔良く通ってた冒険者御用達の店で中古のテントを探す事にした。

ガッツとチビは馬車で留守番、ラッキーは俺の肩の上だ。アインは姿を消したまま俺の頭の上で浮いている。


「よお!サルナスじゃねーの!久し振りだな!」


声を掛けてきたのは冒険者御用達の店『ランダール』のリックマンである。

以前ポーターをやってる頃はこの店で色々揃えていた。この店は中古専門店で冒険者が使う物なら何でも手に入る店なのだ。

金の無かった俺はココでボロボロの中古品を買って装備を揃えていた。

リックマンは年配の禿げたオヤジだが面倒見のいい男で、世話になった底辺冒険者は数多い。もちろん俺もその一人だ。


「お久し振りです。今日はテントを探しに来ました」


「何かスゲえ馬車が来たと思ったらよぉ…噂は聞いてるぜ!大活躍らしいな!」


「まあ、ボチボチです」


「プッ!照れんなよ!でも出世したなら良かったぜ。この店を卒業出来るのは出世したか、くたばるかしかねーからな!」


そうだ…リックマンの口癖は『出世して、この店を卒業しろよ。間違ってもくたばって卒業すんなよ』だったっけ…懐かしいな。


「何時ものオヤジさんのその台詞を久々に聞きましたよ」


「フハハハ!それでテントを買いに来たのか?なら、ちゃんとした良いのを買えばいいだろうが?」


「普段は馬車で寝泊まりするんで問題ないのだけど、今回連れが居るのでね、急遽テントを探しに…でも、正直今回以外は多分余り使わんから…」


「なるほど、それで中古か…フムフム…それならちょっと待ってな」


そう言うとリックマンは店の奥に引っ込んで行った。俺が待っているとアインはフラフラと店の奥に向かって行く…何してんだ?

しばらくするとアインは汚い小箱を持って来た。


「如何した?欲しいのか?」


『はい…コレは”魔眼”です。是非とも取り込みたい良質なモノです』


アインが良質というのだからかなりの掘り出し物なのだろう。俺は鑑定を使って見る。



レオガの魔眼:炎の魔眼。”サラマンダー”の加護を持つ。所有者を選び、認めた者で無いと力を与えない。スキル《黒炎》を得る。



「そうか、構わないぞ。他にも欲しい物があれば持ってこい」


『他には特にありません』


アインと話してると奥からリックマンがやって来る。


「ん?誰かと話してなかったか?」


「気のせいですよ。ところで良い物ありました?」


「ああ、コイツは中々の掘り出し物だ。張るのを自動でやってくれる魔道具で出来てる。ただ、かなり大きく何ヶ所も裂けててな…コイツなら格安で売るぞ。器用なオマエなら直せんだろ?」


「じゃあソレを。後これも欲しいのだけどいくらだい?」


「ソイツは…随分と変わった物を欲しがるな…まあ、使う奴も少ないから安くはするが…錬金術でも始めたか?」


「テイムしてるヤツに魔眼持ちが居るのでね。全部でいくらかな?」


「ほほう…なるほどな。じゃあ銀2でどうだ?」


銀2とは銀貨2枚の事である。この店では銀2だの銅20だのと値段を言うのだ。


「じゃあそれで」


俺は金貨2枚をリックマンに渡した。


「オイオイ…銀貨2枚だぞ!」


驚くリックマンにかねてから言いたかった台詞を言ってみた。


「出世払いの分も入れてる。一応出世したからさ」


「なっ…コノヤロウ!…じゃあ遠慮なく貰っとくぜ!」


「また顔を出すよ」


店を出た俺達の馬車をリックマンは見えなくなるまで見送ってくれた。


馬車で移動する最中にアインに話し掛ける。


「アイン、魔眼を取り込むって言ってたな」


『はい、箱から魔眼を取り出してもらっても良いですか?』


俺は小箱を開ける…すると干乾びた眼の様な物が入っていた。

アインはソレを触手で絡め取ると自分の魔眼の前に持って行く。するとアインの魔眼から光が出て触手の魔眼を照らすと魔眼は光の粒子に変わり、アインの魔眼に吸い込まれて行った。


『取り込み完了しました。スキル《黒炎》を取得しました』


「黒炎って、チビの使ってたヤツと似た奴か?」


『系統は同じ”魔界の炎”ですね。魔素砲に黒炎の効果が付加されます』



名前:アイン

種族︰人造ミスリルゴーレム(特殊個体)


レベル:20

HP:1230/1230

MP:1580/1580

攻撃力:510

防御力:459

回避:79

幸運:54

スキル:身交わし、認識阻害、自動修復、雷電、毒、麻痺、魔眼Lv4→5〔魔素砲Lv10→15〕〔弱点看破Lv9〕〔範囲認識Lv5〕〔魔術解析Lv3〕〔魔獣解析Lv2〕〔黒炎Lv1〕(叡智Lv5〔超高速思考〕〔分列思考〕〔予測思考〕〔司書Lv1〕)


司書:【アーカイブ】内の”禁書”情報を読み取る権限を与えられる。権限の範囲はレベル依存。


黒炎:魔界のサラマンダー系の効果を発動する。サラマンダー系の黒炎は水では消えない。強度はレベル依存。



「おい、チビ。サラマンダーの黒炎は消え難いのか?」


《チビではないわ!ガルルル…あの炎は厄介ではあるが、我の方が威力は上じゃ!》


チビは尻尾をブンブン振りながらそう答えた。

コイツが厄介と言うのならかなりの物なのだろう。


アインから聞いた司書ってのは叡智の派生スキルだけに、当然の様にヤバいスキルだった。【アーカイブ】ってだけで厄介なのに”禁書”とか…。

しかし、この間メフィストの所に行った時には特に何も言ってなかったな…鑑定をかけて無かったのか?…いや、そんな訳は無いな。まあ、今度話を聞いてみよう。


ほう…魔眼のレベルが上がり魔素砲のレベルが跳ね上がった。コレからもアインには魔眼を与えればレベルが上がるという事か。

ならコレからも魔眼をアインに与えた方が良さそうだな…そうだ、今度ジェシーに相談してみよう。


俺は定宿『アマルフィ』に戻り、昼飯を食べた後、部屋でテントの修復を行う。自動でテントを張ってくれるのは良い機能だな。しかし結構派手に切り裂かれており、中々のボロさである。

しかし、このくらいなら上手く修復出来るので問題無しだ。ポーターの頃はボロボロの服やリュックなどの装備品を壊れては直しながら使ったものだ。

先ずはテントの裂けてる部分をデススパイダーの糸で縫い合わせてゆく。綺麗に縫い合わせた次はアートフロッグの体液を縫い目に慎重に染み込ませていく。コレが防水加工となるのだ。


「コレで良しと…」


2日かけてやっとテントを直した。コレで準備も整ったな。

その間、ラッキーは俺の作業を邪魔…いやいや、見学をしててチビも宿に残っていた。

ガッツとアインは森に出掛けて魔獣狩りをしていたらしい。

魔獣とゴーレムが狩りをしているのを見たらさぞ驚くだろうと思ったが、アインが範囲認識を使い人間の居ない場所を探しながら狩りをしていたらしい。そうなると当然、森の奥の方を狩るようになるので二人ともレベルを上げて帰って来ていた。


「サルナス、テントデキタカ?」


「おう、やっと直したぞ」


「ヨカッタ。ダンジョンイケル」


どうやら二人ともダンジョンに潜りたかったらしい。しかし、流石にテイムしてるとはいえ魔獣だけをダンジョンに入れる訳にも行かない…まあ、コッソリなら何とか…イヤイヤ…。

それで森の奥ならと行かせたのだが思ってたよりレベルが低かったらしい。


「4日後には出掛けるから2日だけだぞ?」


「ワカッタ」


『魔獣武装(ビーストアームス)で下の方まで一気に降りてから分かれましょう』


「ソレデイイ」


「じゃあ、俺とラッキーとチビは安全地帯でゆっくりするか?」


《我も戦うぞ!!ガルルル…》


何かこの子犬…どういう訳かヤル気満々なんだが…。


ラッキーは俺とゆっくりしたいらしい。

ブラッドはダンジョンに潜らず留守番するようだ。


「じゃあ明日は早起きしてダンジョン潜るぞ」

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落ちこぼれテイマーの俺は、魔獣武装(ビーストアームス)で無双する。 鬼戸アキラ @yamihoppy0305

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