第36話 チクタクとゆっくり針は進む
雪さんには散々お世話になった身だからそれなりに解決をしたいと思っている。
そんなこんなを考えているとそのまま水曜日の休日に突入した。
俺は実家にてリビングに集合しているみんなの目の前を見る。
雪さんそして何故か知らないが千佳と夜空までこの話し合いに参加して.....この恋の解決会議が始まろうとしていた。
俺は顎を撫でる。
そんな中、雪さんは少しだけモジモジしながら居心地悪そうに恥じらっている。
その姿を見ながら首を傾げる俺。
すると俺の視線を感じ取ったのかビクッとしてから雪さんは頬を掻いた。
それから俺に、えへへ、と向いてくる。
やっぱりいー先生の家に行くのは恥ずかしいですね、と、だ。
「でももういー先生は千佳さんと結ばれているから。だからこんな気持ちは持っちゃダメなんですけどね。アハハ.....」
「.....雪さん.....」
「.....うんうん。.....でもでも雪ちゃん。いー君はみんなのいー君だよ。だから頼るのは構わないんだよ?取られるのは嫌だけどね。アハハ」
「.....!.....有難う御座います。千佳さん。そう言ってもらえると励みになります」
千佳は笑顔で雪さんを見る。
雪さんは千佳に柔かに接する。
その姿に俺は少しだけ柔和に笑みを浮かべた。
すると夜空がいきなり天井を見上げて呟く。
それから苦笑い。
どうしたのだろうか。
まるで男がする様な行動をする。
「それにしても.....春香が恋をねぇ。.....そんな年齢になったのね」
「あ、そうだね。夜空ちゃん」
「あんなにちっこい女の子だったのにね」
「早いよね。時間経つの。フフフ」
「だねぇ。アハハ」
いや.....それって結構な大人の会話なんだがお2人さん。
と思いつつ見つめる。
すると千佳が、いー君、と話を掛けてくる。
俺は、どうしたんだ、と聞く。
それから耳打ちの様に、春香ちゃんは照魔君が好きなんだよね?じゃあ雪さんはどう思っているのかな、と聞いてくる。
俺は目を丸くする。
そう言えばそうだな、と思う。
「雪さん」
「.....はい?何ですか。千佳さん」
「.....私は貴方の思いも聞きたいな。どう思っているの?照魔君を」
「.....私は春香に譲りますよ。だって照魔君を好いているんですから」
「違うよ。雪さん。貴方の気持ちを聞きたいと思っているの」
私の気持ちですか?、と雪さんは驚く。
俺と千佳と夜空は頷いた。
それから見つめる。
すると雪さんは、正直一生懸命な人は嫌いじゃ無いです。でも春香が好いているんですから、と苦笑いを浮かべる。
俺は、うーん、と顎に手を添える。
それから唇を噛む。
何だか複雑だな、って思う。
「でも本当に良いんです。春香と照魔君が結ばれてほしいです」
「重すぎるよ。雪」
「.....でもそうじゃない?普通は」
「まあそうだけど.....でもそれで良いの?アンタは」
「それで良いとかじゃ無いかもしれないけど.....でも私はやっぱりいー先生が好きだから。だからそれで良いの」
夜空にその様に言う雪さん。
雪さんはそうしてから俺を見つめてくる。
柔和な感じを見せた。
俺はその姿に口角を少しだけ上げる。
良い子だな、って思う。
「じゃあ良いんだね?雪さん」
「はい。構いません。話を進めましょう」
「分かった。じゃあ.....春香ちゃんと照魔君がどう結ばれるか.....考えようか」
「あ、いー先生」
「.....何だ?」
どうやったら更に千佳さんと仲を深められるか、ですね。
と雪さんは夜空を見る。
それから、雪.....、と言う夜空。
そうしてから笑みを浮かべて夜空は頷いた。
そして俺を見てくる。
俺は首を傾げる。
それからニヤッとする夜空。
俺は冷や汗を流す。
「お兄ちゃん。覚悟してよね」
「な、何をだ」
「もっとイチャイチャさせるから。恥ずかしくさせるから。覚悟してね。私達の恋の分もあるんだから。簡単に言ったら本当に恥ずかしくさせるのが目的だから」
「や、止めてくれ。困るぞオイ」
「困るもクソも無いけどね。アハハハハ」
ニヤニヤとしてニヤニヤする雪ちゃんと夜空。
それから俺と千佳は赤くなっていく。
困ったもんだなオイ.....。
思いつつ俺は、と。取り敢えず話を変えましょう、と話を次に進めようとする。
のだが、アッハッハ逃げちゃダメだよ。お兄ちゃん?、とニコニコした。
俺は苦笑いを浮かべるしかない。
「.....勘弁してくれ」
「だよぉ.....夜空ちゃん」
「ウフフだね。夜空ちゃん」
「だねぇ。雪。アッハッハ」
「.....アハハ.....」
俺達は顔を見合わせてからそのまま赤くなる。
それから夜空と雪さんは、まあ取り敢えず話を変えて、と言ったので俺達はホッとしながら胸に手を添える。
ニヤニヤしていたが、だ。
春香ちゃんと照魔君だね、と雪さんと夜空は顎に手を添える。
「じゃあどうしようか」
「そうだね。確かに」
「.....良い案は無い?お兄ちゃん」
「無いよ。何で俺に聞くんだよ」
「だってお兄ちゃんだから」
だってお兄ちゃんだから、って何?
何を言っているんだ。
思いつつ俺は顔を引き攣らせる。
それから首を傾げた。
うーんそうだな.....。
「取り敢えずは引き合わせる」
「.....ありきたりすぎるよお兄ちゃん」
「.....じゃあどうしろってんだよ」
「.....そうだね.....先ずはお互いに聞いてみようよ。色々。個別で」
「それで好きになるのか?互いが?幾ら何でも無理だろお前」
無理じゃないよ?
これってお互いを知るのが大切だよ?
そう思わないみんな?、と話す夜空に。
するとみんなが、だね。うんうん、と会話を推し進める様に賛同する。
え、ちょっと待て。
そんなもんなのか.....?
よく分からない.....。
まるで俺だけ孤独な部屋に置いてかれる気分だな。
思いつつ俺は顔を引き攣らせた。
するとジト目を向けられる。
「.....何だかそれで良いのって思っているね。お兄ちゃん」
「.....そ、そうだな」
「それじゃ駄目ですよ?いー先生」
「は、はい」
「もー。いー君の馬鹿」
「え?!お前まで!?」
女性陣にそう言われる俺。
何で俺こんなに言われているんだ!?
考えながら俺はしおしおと花が枯れる様に萎縮する。
何と言うか小さくなっていく。
小人の様に、だ。
本気で付いていけないです。
うーん。全く。
役立つで申し訳ない.....。
女性の恋心も分からず、だ。
そんな穏やかな日常が流れる中。
俺達の全てはまた.....とんでも無い方向にねじ曲がっていく事になる。
それは.....俺を好きだという.....謎の女性と。
そして俺達の幸せを否定する存在。
俺と千佳はただただ困惑するしか無かった。
だけど仲間達はこれを更にねじ曲げていく。
絆が深まった気がする事件だった。
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